最近お気に入りのアーティストのアルバムを選んでiPodの再生ボタンを押した。耳につけたイヤホンからはノリのいいポップスの曲が流れる。それをBGMにあたしは寝不足を解消しようと机に俯せて今にもくっついてしまいそうな瞼を閉じた。






「………い、おーい」

ゆさゆさ、体を揺らす振動にあたしは目を覚ます。

「…んん、」

「起きないと風邪ひくぞー?」

そんな声が聞こえてうっすらと目を開けてみれば目の前にはクラスメイトの姿。しかも何気に顔が近い。

「…………高、橋?」

びっくりして一気に目が覚めたあたしは起こしてくれたクラスメイトの名前を呼んだ。ちょっと声が掠れているのは寝ていたせいだ、多分。

「ん?何?」

「何?って…部活は?」

教室の壁に立て掛けてある時計を見ながら聞いてみれば休憩中との事だった。なぜ教室に、そんなあたしの呟きが聞こえたのか高橋は自分の机の中を漁るのをやめて顔をあげた。

「数学のノート忘れたみたいだから取りに来たんだ」

「そっか」

耳からイヤホンを外してiPodの停止ボタンを押してみれば最近お気に入りのアーティストが韓国のガールズグループに変わっていて結構熟睡していた事がわかる。

「山田はずっと寝てたんだ?」

「え?」

いきなり話し掛けられてiPodへと向けていた視線を高橋に向けると「ほっぺにセーターの跡ついてるから」なんて言われてしまった。

「え、うそ!?」

「ほんと」

「うっわ、恥ずかしい…!」

慌ててほっぺを両手で隠せば高橋はおかしそうに笑う。それがすごく恥ずかしくて少し睨むように高橋を見れば視線に気付いたのか「ごめん」と言って笑うのをやめた。

「ごめん」

「なんで笑ったの」

「さっきの山田が可愛かったから」

さらりと言ってのけたの言葉にあたしの顔は一気に熱くなる。な、なんだ、こいつ…!

夕日のせいであたしの顔が茹でタコのようになっているのに気付いてないのか高橋は近づいてくる。

「こうやって恥ずかしそうに顔赤くなるのとかも可愛いと思うし」

「………っ、」

そっとあたしのほっぺに手を添える高橋の行動にあたしの頭は爆発寸前、思考回路もショート寸前だ。

「かっ、からかわないで、よ…」

恥ずかしすぎてうまく回らない口にいらっとしながらもそう告げれば「からかってないよ」とすぐ返ってきてあたしは何も言えなくなってしまう。

「好きだよ、山田のこと」

ただまっすぐに、そう告げた高橋にあたしはもうどうすることもできなくてただ目を閉じるしかなかった。



溶けることの意味を


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