お母さん同士が大親友で、誕生日が数日違うだけで産まれた病院も一緒の、家族同然の奴がいる。小学校も、中学校も、現在進行形で高校も一緒の奴は世間的には幼馴染とか腐れ縁と呼ぶらしい。

そんな奴は、見た目がモデルとかやっちゃうくらいイケメンだから付き合う女の子はみんな可愛くて。でもすぐに別れちゃうらしく、中学の時はそんな噂が後をたたなかった。高校生になった今だってそれは変わらなくて。今日も他校の美人さんと別れたって話を友達から聞いたばかりだ。

「ねー、涼太」
「なんスかー?」
「他校の美人と別れたって聞いたけど、」
「よく知ってるっスね」
「女の子の情報網をなめちゃあいけないよ」
「じゃあ、なんで別れたか知ってる?」
「そこまでは知らない」
「知りたい?」
「別に」

ぷい、と涼太から視線をずらして開きっぱなしで放置していた雑誌へと再び向き合う。ちょうど開いていたページは隣にいる幼馴染の特集ページで。楽しそうにこの時のことをお喋りしながら覗き込んでくる。

「もー、涼太近い」
「えー?」

このままじゃあ、わたしのドキドキとうるさい心臓の音が聞こえちゃうじゃないか。いままでずっと、内緒にして大切にしてきた恋心がバレてしまうじゃないか。そんなわたしの気持ちなんて知らない涼太は「ここ!ここ見てほしいんス!」とある文章のところを指差す。男の子にしては綺麗なすらりとした指を辿っていけば書いてあるのは恋愛関係のはなし。

Q.黄瀬くんの初恋はいつだった?ちなみにどんな子だった?
A.そうっスねー、スゲー小さい時かな。うーん、どんな、って言われてもな、家族と同じくらい大事な子としか言えないっスね。

Q.その初恋は実ったの?
A.それは秘密、って言いたいけど現在進行形で片想い中っス!

なんて書いてあって。これを見ながら涼太は「これが別れた原因」なんて笑っていて。

「こんなことして、社長さんに怒られちゃうよ?」
「むしろ逆に早くものにしてこいって怒られたっスよ」
「じゃあ、こんなところで油を売ってる暇ないんじゃないの?」

そう言えば涼太は眉を八の字にさせて困った様な表情をした。

「まだ、気付かないんスか?」
「えっ?」
「俺が好きなのは目の前にいる幼馴染の女の子っスよ」
「……」
「ずっと好きで振り向いてほしいのに振り向いてくれなくて。やきもちやかせたかくて彼女作ってもやきもちやいてくんないし、彼女にも「わたしを通して誰見てるの?」なんて言われてフラれるし」

早く、気付いてよ
なんて言う涼太に、あたしは何て言っていいのかわからなくなって言葉に詰まる。

「好きだ、どんな女の子よりも一番好き」

そう言われて、返事をしようとしてもなぜか出てくるのは嗚咽だけで。涙が頬を伝っていく。目の前では涼太が慌てたように、わたしの名前を呼びながらオロオロしている。

「…ずっと、」
「?」
「ずっとわたしだけが涼太のこと好きなんだと思ってた。だから、ずっと気付かれないように、してたんだよ」
「え、それって」
「わたしも、好き」

そう言えば問答無用に抱き締められる。がっちりと離れないように回された涼太の腕に習ってわたしも、腕を回す。ちょっとぎこちない動きに涼太は笑ってからわたしのおでこにキスをした。

今日からは、内緒の恋じゃないんだね

密やかな密やかな恋に専念していました
20121104//慈愛とうつつへ提出
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