東北人にとっては、というかあたしにとっては冬の寒さなんて別に怖がるほどでもないというかなれてしまったもので。へっちゃらなのだけれどやっぱり毎年の夏の暑さは耐えられるようなものじゃなくて。

「あついー」

ぐったりと机にうなだれる。
その間も隣からはバリバリとお菓子をむさぼる音が聞こえてぐっと眉間にシワが寄るのがわかった。

「…紫原暑くないの?」
「別にこれくらい平気〜」
「おかしい」
「おかしくないでしょ」
「いんや、こいだば暑くて死んでしまうー」
「へんなのー」
「んなことねえべー」
「あるしー」

バリバリバリ 隣でお菓子をむさぼる音をききながら「あつ、」と小さく呟けばピタリと頬に何かを当てられた。

「っ、しゃっこい!」
「は?」
「おま、それしゃっこい!」
「えー、冷たいじゃなくて?」
「しゃっこい!は冷たい!の意味!」
「へー」
「で、それなに!」
「あげるー」
「………は、」
「暑いんでしょ、温くなるし飲めば」
「あ、あの紫原がサイダーをくれるなんて……あんべわりーの!?」
「はあ?なにそれ」
「え、あ、具合悪いの!?」
「別に悪くないけど。いらないならいーし」
「あー!やだ、もらう!もらうー!」

がたりと机らから起き上がって受け取ったそれはしゅわしゅわと口のなかではじけていった。

ソーダ水に溺れた午後
20120725//きみにあげるへ提出
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