「ぶへっ」

ありがとうございましたー なんてコンビニ店員の声をバックにコンビニから出ていこうとしてわたしは真っ正面に現れたグレーの何かに正面衝突してしまった。

「っ、すみません」

謝りながら慌てて離れれば「あ、山田じゃん」なんて声が頭上から聞こえた。

「……へ?」

顔をあげてみればそこにいたのはクラスメイトの丸井くんで。クラスメイトだけどあまり話したことがなくて、なにを言えばいいかわからなくてとりあえず挨拶してみる。

「こ、こんばんは」

すると丸井くんも「よっ!」と屈託のない笑顔ですんなりと返してくれた。

「山田こんなとこで何してんの?」
「眠れないから散歩ついでに寄ってみたの」

お茶とお菓子とさっき電話で弟に頼まれたジャンプが入ったビニール袋をガサリと鳴らしながら持ち上げれば丸井くんは「ふーん、」と興味無さそうに呟いた。それ、ちょっと失礼だよね、そっちから聞いてきたくせに。なんて思ったけど何されるかわからないので口には出さずに心の中で言ってみる。そんなわたしの心情を知らない丸井くんは「じゃあもう帰んの?」なんて聞いてくるからそうですよ、と肯定の意味を込めて頷いた。

「1人で?」
「まあ、1人で来たから1人で帰るよ?」

これで2人で帰るって言ったらただのわたしオカルト少女じゃないか。自慢じゃないけど怖いのは嫌いだ。
すると丸井くんはちょこっとだけ考えた素振りを見せてから「ちょっと待ってろぃ」と小走りで店内を回ってからさっさとレジを済ませてわたしの所に戻ってくる。素早い買い物だなあ…と感心していたら丸井くんはニカッと笑った。

「よし、山田!帰るぜぃ!」
「………へ、?」

状況が呑み込めなくてそう呟けば丸井くんは振り返るなりわたしの顔を見て笑い始めた。

「ぶふっ、山田ってば間抜け面してやんの!」
「なっ!」
「夜道は女子1人じゃあぶねーから送ってやるよ」

間抜け面、と言われて唖然とするわたしに丸井くんはそう言って歩き出したからわたしもその後ろを小走りで追い掛ける。

「ありがとうございましたー」

2度目のコンビニ店員の声はなんだかとてもめんどくさそうな声色だった。

みちる、夜
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