「おー、さみいっ」
学校から出るなりそう言ってすっぽりと鼻から下をマフラーで隠して両手をブレザーのポケットにつっこむ。背中が丸まって、一瞬で小さくなった準太を見てつい口元が緩む。
「ふふっ、」
声を出して笑うつもりはなかったけれど聞こえてしまったのか準太はきょとん、と不思議そうな表情で振り返った。
「今どっか笑う要素ありました?」
「ないよ」
「じゃあ、なんで先輩笑ってんの」
「えー、なんか後ろ姿かわいいなあって思ったら笑っちゃった」
そう答えると準太の顔はきょとん、とした表情から拗ねたような表情に変わる。まあ、鼻から下はマフラーに隠れて見えないからあくまで予想だけれど。
「あれ、拗ねちゃった?」
「……別に拗ねてない」
「本当?」
「本当」
「じゃあ、どうしてそんな表情するの?眉間にシワ寄っちゃってるよ」
ぐりぐりと準太の眉間を指でつつけばぽそりとくぐもった声が聞こえた。
「可愛いって言われて嬉しい奴なんて男にはいないし、俺はかっこいいの方が嬉しい」
そう言ってあたしから目線を反らす準太に「知ってるよ」と答える。
「知ってるけど、かっこいいって他の子も言ってるからなんか嫌なんだもん」
だんだん言ってて恥ずかしくなってきたあたしは掌で顔を覆うように隠す。すると頭上から聞こえてきたのは準太の笑い声。
「ふはっ、それってヤキモチ?」
「えっ、ええー、違うよ」
「違うくない」
「違うもん」
そう答えると同時くらいに準太はあたしの両手を顔から退かした。
「先輩顔赤い」
「寒いからだよ」
「ふは、可愛い」
「っ、」
「あ、照れた」
可愛い そう準太はもう一度呟いてからあたしに触れるだけのキスをした。
スノウ・スロウ・メロウ