今日はなぜか恐ろしいくらいにパチンコが当たった。いつもなら最初は調子がよくても帰り際には負けまくりで「やってられっかァァァァ!」と退散するのに今日は負けなくて。ジャランジャランと玉が出てくる、出てくる。あれ、銀さん今日結野アナのブラック星座占い一位だったっけ?……あれ、むしろ銀さん悪くなかった?朝の事を思い出して継ぎ足そうとしていたパチンコ玉を握っていた手を大人しく戻す。損する前にやめよう、そうだ、やめてパフェでも食べに行こう。そう思って立ち上がり勝ちまくったパチンコ玉の山たちをカウンターの方へと持っていく。

「おっ、坂田さん、今日は勝ったねえ」
「なに、銀さんの実力ならこれくらい朝飯前だってーの」
「はいはい。何と交換する?」
「あー、今日はしない。現金で」

そう言って換金が終わるまでぼけっとしていれば「そういえば知っているかい、坂田さん」店員に話し掛けられた。

「んあ?」
「今日は11月29日だろう」
「ああ」
「世間では良い肉の日つって良い肉を食べる日らしいぜ」
「……へぇ」
「坂田さんもあの子らに買うのかい?」

そう聞かれて浮かんでくるのは「銀ちゃん、肉食わせるアル!」「食べ放題いいですよね〜」と騒ぐガキ2人で。

「…ったく、めんどくせぇ」

頭をがしがしとかきながら換金した金を財布に入れて、パチンコ屋を後にする。
この金でパフェでも食おう、とか思ってたけどファミレスの前はそっちを見ないようにスルーして。

「ほーら、銀さんのご帰還ですよー」

ガラガラガラ と引き戸をそう言って開ければ「銀ちゃん!肉!肉食いたいアル!」「あっ!神楽ちゃんダメだよ、うちにはそんなお金ないんだよ!」なんて声がして。

「新八くん?まあ、確かにうちは貧乏ですけど?あんまりはっきり言われると銀さんグサッときちゃうよ?ガラスのハートがバッキバキよ?」

そう言いながら奥まで行けばテレビからは「今日はいい肉の日〜」なんて流れていて、画面には分厚い肉のステーキが映っている。なんとまあ、食べこたえのありそうな肉だこと。新八が一生懸命、眼鏡を振り乱しながら取り押さえている神楽はもう、あれだった。獲物を狩る野獣のような目でテレビを見ていて、テーブルの上にあるリモコンでテレビの電源を落とせば睨まれた。

「銀ちゃん何するネ!」
「何ってテレビの電源を落としただけでーす」
「早く電源つけろや、天パァァ!」
「あっ、ちょっと神楽ちゃん暴れないで!」
「肉ー!」

どったんばったんと暴れる2人に「あー、あんま騒ぐと連れていかないからな」と言えばぴたりと動きを止めた。

「どこに行くんです?」
「焼き肉」
「肉アル!」
「え、でもそんなお金どこに…」
「あるんだなァ、それが」

にやり、と笑えば2人は「早く行きましょう!」「銀ちゃんはやくするアル!」と嬉しそうに両腕を引っ張った。

いただきます・ごちそうさま
20120322//季節回遊へ提出
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