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――問う?
何故姫様は自ら継承を宣言されぬのか。

…いや。
問う、とは王女殿下の決意ではなかろうか。
民を信頼し、判断を我らに託された――?

「――いかがです?」

ざわめき立つ民衆に、少女は再び問いかける。

無音の時間が流れ、そして。

「フィオレンティーナ様、あなた様を新王陛下に!」

誰かが叫んだのを皮切りに、所々で歓声が上がった。

「任じさせて下さい! フィオレンティーナ新王陛下!」
「――わしもじゃぞ! 若き新たな王に祝福を!!」
「陛下!」
「新王陛下!!」

わあっと場に熱が広がる。
民衆を見つめたまま静かに立っていた少女は、己が守るべき民に向かって、深く頭(こうべ)を垂れた。

「――感謝します。では、わたくしは今よりラッセンブルグ王位を継承いたします。これをもって戴冠式とし、わたくしの冠に込められた皆の想いに敬意と追従を表明します」

張りのある声で民衆に微笑むと、少女は左脇の騎士に目配せする。
騎士は一歩踏み出し、少女の真横に並んだ。

「…さて。今わたくしの隣に並んだ騎士こそ、セレスト・シオン。 これより新王として初めての誓約を致します。わたくしフィオレンティーナは、セレスト・シオンを伴侶とし、共にラッセンブルグの新たな幕を切ることを誓います」

瞬間、さらに沸き立った民衆の大歓声の中で、騎士は真っ直ぐな声を民衆に向け発する。

「――私、セレスト・シオンは新王フィオレンティーナ・フェリカ・ラッセンブルグと共に歩み、この守りの刃で新王の、そして皆の盾となることを誓います」

その声音は、騎士が愛する花の色のようにどこまでも蒼く、澄んでいた。





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