34
「私は先に述べた通り、ユラヌス国防軍第7航空艦隊所属、リタ・アンバー少尉であります。つまりは、兵器を積んだ空飛ぶ乗り物の中で少人数をまとめてた兵士です。もちろんメルとの共謀で戦は防げたから兵器は使ってないよー。メルよりも少しだけ遅くに、同じく反逆者として処刑されました。――今は、悔いは無いっ!」

溢れんばかりの笑みで言い切ったリタを見て、満ち足りた表情で微笑むメル。
消えゆく二人の姿は穏やかで、セレストは先に乗っていたティナの手に手を重ね、石床にしっかりと両足を乗せた。

徐々に視界は暗闇一色になり、資料室の床に昇りきった時、床下深くから、石壁がガラガラと崩れるような音が微かに響く。
小さな振動が少しだけ続いて、辺りは静かになった。

燭台にともされた炎が幾つも揺らめく資料室で、二人はそれぞれ一本ずつ蝋燭の灯りを消していくと、開け放たれていた扉から外に出る。
リタたちが、最後にこの扉も動かして…開けておいてくれたのだろう。
…キカイが消えたためか、外側からティナが手をかざしても、扉は開いたまま、閉じることはなかった。

「――ティナ、私が憎いですか?」

歩きながら口を開いたセレストに、ティナは素直に答える。

「貴方が、ギルが、と仰ったなら…わたくしは頷いたでしょう。…わたくしは、わたくしの父上を殺めた彼を許すことはできません。…今は、まだ。…ですが貴方はギルではありません。わたくしの愛する騎士、セレスト・シオンですわ。誰が愛おしい方を憎めるでしょう?」

「…愛と憎しみは紙一重だと言いますが?」

「――意地悪ですわね。…それでも、憎めませんわ」

「…稀有なお方だ。でも…ありがとう」

語尾が小さくなり、よく聞き取れなかったティナは聞き直したが、セレストは答えをはぐらかした。
代わりに、これから大変になりますね、と呟く。

目指した謁見の間には、人だかりができていた――。



prev next

bkm back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -