「――教えてください。…そして、打ち込んでください…っ」
映されていた兵器の赤い光の明滅が終わり、常灯になったことに気付いたセレストは、俯いたリタの両肩を揺さぶる。
鬼気迫るその表情に、リタはぽつりと呟いた。
「消えちゃうんだよ…? 何もかも、全部。セシアの手紙も消える。…古代兵器はなくなっても、人は争う生き物でしょ? やがて技術は発展して、新たな兵器が生まれたその時、誰が止めるの? 愚かな歴史を繰り返すの…?」
「繰り返さない…、繰り返させませんっ! 貴女が映し、読んだ手紙の記憶は…僕やティナの胸に刻まれています。永遠の友情の証は、消えません…! 僕はこの手を幾度も血で染めているから…綺麗事を並べるわけではありません。人は時に、憎しみに支配されてしまう。――けれど、ほんの一握りの愛がそれを覆すこともきっとあると、どうか信じては頂けませんか?」
「……それは理想論だよね?」
「はい、その通りです。…でも未来に流れる血の心配で、今この地を犠牲にすることは、果たして善でしょうか? そもそも兵器が地下まで及んでここも破壊されたら、元も子もないのではありませんか?」
ゆったりした呟きに早口で応答したセレストの顔をまっすぐにじっと見つめたリタは、観念したかのように微笑む。
「――説得ありがとう。ごめんね、私が未練ったらしかっただけなんだ。…大丈夫、まだ余裕で間に合うよっ」
ピシリと片手を上げ、指先までピンと伸ばして額近くで敬礼したリタは、それが何のポーズかわからないらしい二人に優しい笑顔を見せた。
「これより、最後の任務に当たります!」
凛とした声で箱形のキカイに向き直ったリタは、キカイの右端にあった突出した部分を押した後、風景が消えて空のような青色になった表面を前にして、静かに凹凸の板の各所を押していく。
そうして一行だけの短い文字列が映し出された時、振り向いてにっこり笑って、最後の一押しをしながら言った。
「『セシアより、愛をこめて。』…ミュルズ・トゥ・ユラヌス、エンター」
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