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――少し、昔話をしようか。

私とギルは、齢も同じでな、ギルが近衛隊長に任命されてからは、特に親しくなった。
それこそ、秘密裏に酒を酌み交わすほどのな。

私が日頃の感謝を述べると、あやつは決まって「すまない…」と口にしておった。
その表情は苦渋に満ちておってな、私はそれに気付きながらも、冗談半分にいなしていたのだ。

あやつに何かの秘密があることは解っておった。
だがな、それにも増して、あやつは私の無二の友だったのだよ。

…そんなあやつが今日、改まって人払いをしてまでの報告をときた。
あやつは剣の腕は立つが、隠し事は下手なのだろう。
…いや、わざと下手に見せかけていたのやも知れぬな。
あやつの表情はいつになく揺れていた。
涙でも流しそうな表情だったよ。

私は…こう思う。
おそらくはあやつの手によって、この命を断たれるのではないかと――。
そしてそれは、あやつの望むところではないのではないか、とも。

…本来なら、この件は棄却すべきであっただろう。
だが私は、私の友を裏切れなんだ…。
私は、数刻後にあやつの申し入れを受けることにした。

…そして、私の予感が現実になってしまった時のため、急ぎこれを残すに至った。

フィオレンティーナ、私の愛し子よ、よく聞きなさい。
初めて見るお前には途方もない代物であろうが、これは記憶装置と呼ばれる、古代の遺産だ。
人の姿を空間に映し出し、声を伴いあたかもその人物がそこで話しているように見せる、夢のような遺産…。
古代人はこれを、「メモリアル・システム」と呼称したらしい。
「キカイ」と呼ばれる、例えばここの扉のような古代遺産群の一種だ。






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