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2022/02/25 12:51

友人である蘭と園子とでかけた先で出会ったのは、二人の知り合いだという大学院生の男だった。
ほっそりとした目のその奥に隠し持つ鋭い眼光に覚えがあった。昔の、あの人。私を娶った、口数の少ないお方。
紹介を受ける前に、口からかつての夫の名前が飛び出してしまった。

「あ……秋彦さま……?」
「すみません、人違いでは。僕は沖矢昴といいます」
「沖矢さん…………ごめんなさい、人違いでした。とても似ていらしたもので」

お恥ずかしいです、と眉を下げる○に蘭と園子はお互いに顔を見合わせる。普段からクラスメイトの中でもとりわけ大人びた彼女が、頬を染めて恥じらう姿は大変貴重だ。意中の人によほど似ていたのだろう。
うら若き娘二人は色恋の予感を察知しニマッとする。彼女たちの中ではこのあとのカフェでの話題は決まったも同然であった。

「いえ、かまいませんよ。毛利さんと鈴木さんのお友達ですか」
「申し遅れまして……」

挨拶が遅れた謝罪をいれてから名前を告げる。挨拶上よろしくとはいうものの、心の整理ができるまではあまりお会いしたくない顔だなと失礼ながら思っていた。
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