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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




2017/11/14 22:24

横断歩道で信号が青になるのを待つ少女のもとに突っ込んでくる乗用車。誰しもがダメだと思ったその時、まさに一瞬の出来事であった。

これから起こる凄惨な光景を怖れ目を閉じ耳を塞いでいた者にはわからなかったであろう。光のごとく現れた人影は少女を抱き抱え、走り去ったのだ。

少女を抱えた人物が駆け抜けたその直後、バーンと激しい音が住宅地にこだました。謎の人物が少女を助けたと知らない人々は腰を抜かしたり、あまりのショックに泣き出す者もいた。

乗用車のフロント部分はぺしゃんこに潰れ、ガラスは粉々に砕けており、運転手は頭から血を流してぐったりとしていたが、かろうじて意識はあるようだった。少女の安否を確認しようにも、瓦礫に埋まってしまっているようで、姿を確認することは出来なかった。もう助からないだろう。そんな空気が流れていた。

横断歩道の反対側で少女を待っていた彼女の友人たちも、少女が助かったことに気づいていなかった。信号が変わるや否や泣きながら事故現場に駆け寄る。大人たちは気の毒そうに子どもたちを眺めたり、声をかけたりした。
しかし、ただひとりの少年だけは、焦りの表情を浮かべながらも冷静に事故の状況を分析していた。江戸川コナンである。

「(あれだけのスピードでぶつかったのに、血が流れてない……?)」
「コラ、君!危ないから下がってなさい!」
「あ、あの子ぼくの友達なんだ!!!」
「あぁ、あの女の子だね……」

かわいそうだけど、助からないだろう。子どもに事実をつきつけるのは酷だと男は思ったが、しかし安易に助かると口にすべきでないとも思い、考えながら難しい表情を浮かべる少年を説得しようとした、その時。

「コナンくん……!元太くん、光彦くん……!」
「歩美!?」
「歩美ちゃん!!」
「歩美!!!」

事故現場の脇の通り道から、事故死したと思われていた少女が姿を表したのだ。何が起きたかわからないといった表情で、車の突っ込んだ宅地を眺めている。すると、突然わっと泣き出した。

少年たちは少女が助かったことに安堵した。しきりに泣く少女に、落ち着くまで寄り添った。

「本当に無事でよかったです」
「すげーじゃん、よく逃げられたな歩美!」
「あのね、お姉さんが、たすけてくれたの」
「お姉さん?」

少女がようやく泣き止み口を開いた頃には、助けてくれたという女性はみる影もなかった。


………そのあとの流れはお察しのとおり。
▼追記
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