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待ち合わせは11時。駅前の時計塔で……
現在時刻は13時過ぎ。暇潰しに触っていたせいかケータイの電池は残りひとつ。
これがお前の答えか……
小春日和だなんて朝の情報番組では言っていたけど、どこら辺が小春日和なのか教えてほしい。
念のためと持ってきていたマフラーに首を埋める。
ケータイをポケットにしまって、上着の両ポケットにそのまま両手を入れる。
固く握りしめてしまっているのは、ただたんに寒いからだ。
いっそのこと日向に出ていけば良いのだが、それじゃ待ち合わせ場所から離れてしまう。
どんなに寒くても、建物の影に入ってしまうとこが待ち合わせ場所だったとしても、ここに来るはずなんだ。
だって、今日誘ってきたのはあっちなんだ。時雄なんだ。
いい加減、足が痛くなってきて、これじゃトキが来ても楽しめねぇな。なんて、自虐的なことを思ってその場に座り込む。
へへっと変な笑いが漏れた。
もう白い息はでないけど、膝を抱えた手は冷えて赤くなっていた。
最悪。
何が最悪って、全然小春日和じゃねぇのが最悪。
いつまでも来ないトキが最悪。
そんなトキをずっと待ってる俺が最悪。
そんな俺を見下ろしてる時計塔の針はもう16時に届きました。
それも最悪。
それから、30分。
トキは来た。と言っても、一人ではない。
クラスメイトの男女4人と一緒だった。
何かをギャアギャア言い合いながらやって来る。
あぁ、なんだ。デートだと思ってたのは俺だけか。
トキからすればただのお出掛けってことか。
座り込んでいる俺に気づいたのか、トキが駆け寄ってくる。
「ごめん!!セツ、あいつらに捕まっちゃって……」
「ううん。実は俺もさっき来たばっかりでさ……トキ、もう帰ってるかもって思ってたところだし」
「そっか。あとさぁ、こいつらもつれてって良いか?」
思わず聞き直しそうになった。
さんざんにくるったけど、今日の予定としては、会ってから遅めの昼を食べて、最近できたゾモという複合施設でウィンドウショッピングしたりしたあと、そこのフードコートで夕飯食べて……
きっと今からでは、ゾモに行っても、少しぐるっとしてから夜ご飯食べるぐらいしか出来そうにない。
ただでさえ少しの時間しか一緒にいられないというのに。
それに、今日のデートは実に1ヶ月ぶりなのだ。
冗談じゃない。
しかし、
「うん。いいよ」
「ありがと。なぁ!!良いってよ!!早く行こうぜ」
少し離れてかたまっていたクラスメイトたちに大声で言ったあとに、座ってる俺に手を貸して立たせた。
そして、俺は集団の後ろをとぼとぼと歩く。
俺がトキの言うことを否定できないのは目に見えてた。
だって、むこうはクラスいや学年一の人気者。こっちはよくてもモブ1。
当然、交際を申し込んだのは俺で、相手に向ける好きという感情の大きさは俺の圧勝で、トキはそれに、付き合わされてるだけ。
そう。付き合わされてるだけなんだよ。
17時近くになってやっとゾモが見えてきた。
前ではトキを中心に女の子が腕を絡めて何やら楽しそうに笑っている。
その次の列には男女が二組になって歩いてた。
その後ろに俺。ちなみに一人。
これ黙って帰ってもわかんなくね?
前の集団に聞かれないように小さく小さく笑った。
ゾモの中に入って手持ちぶさたに、キョロキョロと辺りを見渡していたらふと、ある店に目がいった。
なんてことないただの服屋。
でも、店先に飾ってあったマネキンの来ていた服がすごくかっこよくて、トキが着たら似合うんじゃないかなって思った。
思わず足を止めてしまった。
その勢いで店内に入る。
適当に服を引っ張り出してしばらく眺めてから戻す、という行為を繰り返しながら店内を歩いたあと、店を出る。