この感情を――
俺、篠原君尋は今幸せか?と問い掛けられたら絶対即答する。
あぁ幸せだよ。って――
――――――――――
「君尋ー飯食おうぜ」
「………………あぁ……よしっ」
俺は4限だった古典の問題をなんとか終わらせると、邪魔なメガネをとって机の上を片付け始めた。
前のイスには弁当箱と水筒を持って準備万端の天原がもう包みを解きにかかっている。
―――――――――――
「、、んでな………宮内……クックック……ヤベェ笑えてなんも言えねぇ………あっ!!そのウインナーとこのハンバーグ変えっこしてよ」
今、話題をコロコロ変えてなにかと忙しい目の前の奴は、天原新という。
俺が中学生のころからの友達で、俺の好きな人
俺はゲイって奴ではない。
ホモでもない。
たまたま好きになったのが新だっただけなんだ。
だから……元ノンケ……?
新は見るからにノンケだから気持ちは伝えないままもう5年……かな。
なんたって、中1の時に一目惚れしてからだから……
そして絶賛片思い中
でも別に良い。
「……交換な………ほらよ」
俺は頼まれた通りにウインナーとハンバーグとを交換してやった。
「へへっ……サンキュー」
新はすぐにウインナーを口に入れるとご飯を掻き込んだ。
「おいおい…そんなに慌てんなよ……米付いてるぞ」
「ウェ?どこに?」
俺は自分の右頬を叩く。
案の定新は自分の左頬を触る。
「ちげぇよ。バカ右だよ」
新はすぐに右頬を触る。米粒に触れるとそのまま手を口に持っていく。
そしてまたご飯と向き合い始めた。
そんな新が可愛く見えるのは惚れた弱みか……
相当重傷だな………
自分の気持ちを伝える勇気はないけど、新の親友として、側に置いてくれるから、今は幸せ。
もし、伝えることになったとしても、十分に伝えることなど無理だろう。
だってこの感情を、
この感情を伝えられる言葉など、存在するのだろうか……
―――いや、しない。
END
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言葉って時には無力なんですよ。って話。