俺と原田が出会ったのは高校の時で、元々ホモだったあいつが俺にコクってきた。
 俺は興味本意でOKを出して、なんやかんや高2になった今でも関係は続いていた。
 しかし、関係は関係でも本当の恋人同士のような甘い関係なんかではなく、あくまで体が最初。そんな感じだった。
 俺はそんな関係に飽きてしまったんだと思う。
 最初は俺の出来心だった。
 今どき珍しく、机の中にラブレターが入ってて、怪しみながら向かったら本当にいた。
 名前しか知らない子だったけど、ちょっと可愛かったもんで余裕こいて用件を聞いたら、付き合ってる人がいるって分かってるけど付き合ってほしいと言われた。
 男だったら断れないよな。
 そこから、俺の二股生活はスタートした。

 生活は何ら支障はなかった。
 自宅通いの高校生だから原田と一緒に住んでるわけでもないし、遊びになんて行かないし、ちょっと発散したいときに呼んでるだけだったし。
 女の方も束縛するタイプじゃないみたいだし。
 いっそのことこの女に乗り換えよっかな。なんて思う始末。
 しかし、どうにも別れられないんだよな……
 相性がいいってのもあるのか?
 そんな感じでこの生活は順風満帆かのように思えた。

 だがあるとき事件が起きた。
 女とファミレスにいるところを原田に見られたのだ。
 原田は部活帰りらしい、ジャージにスポバを肩にかけた姿で
 ガラス張りの窓越しに席に並んで座って、ばっちりキスしているところを見られた。
 やべぇ、と思って女と慌てて離れたが、原田はクシャリと顔を歪めて早足で去っていった。

「……ねぇ、牧野くん?どうしたの?」

「あぁ?……なんでもねぇよ……」

「そう」

 その時、俺は意味もわからずとにかく心から喜んでいた。
 だから、原田に呼び出されても、どうにかなるだろう。なんて、たかくくってた。

 原田に呼び出されたのは3日後。
 例のファミレスだった。
 放課後に話しかけられてそのまま。
 ドリンクバーだけ頼んで二人で向き合って座った。
 俺は、なんか嫌な予感を感じながら、でもそんな姿を表に出さないように、わざとらしくケータイをさわって、普段はあんまりしないのに女とメールして……
 その間、原田は黙って目の前のコーヒーを見つめていた。

「なぁ、話あるって言ったの原田だよなぁ?早く話してくんね?」

 沈黙に耐えられなくて話を切り出す。
 原田も一度うなずいて話し出した。

「3日前のことだけど……牧野、女の人と……あの…」

「あぁ、キスしてるとこ見てたもんね。でも別にいっしょ?俺だって男だしさぁ、あ…お前は男しかダメだったんだっけ?ウケる」

 そうだ。俺には切り札があったんだ。
 こいつは俺にベタ惚れして、ノーマルの俺に無理言って付き合ってもらってる立場なんだ。
 俺がどうしようがこいつには何も口出しできない。
 それを思い出して、俺はさらに調子に乗った。
 あることないこと適当に言って、気がすんだところで強制終了。
 早々にファミレスを後にした。
 足はそのまま女のところへ……なんてことはなく、ただ家に帰ってだらだらと過ごし、次の日いつもと変わらず学校へ向かった。

 その日、原田は来なかった。
 なんかあったのかと思っていたら、部活の大会で東京まで行っているらしい。
 バドミントンのダブルスをやってると女が言っていた。
 まぁ、今日は会わなくてよかったと思った。

 4日後。週が開けて学校新聞は原田の優勝の話題で持ちきりだった。
 新聞部が撮った写真は、原田と白河という原田とダブルスを組んでいたやつが喜びからか抱き合って喜んでいるシーンであった。
 原田の笑顔なんて久しぶりに見た。
 しかし、なぜか俺はそれが見たくなくて、目を反らした。


 季節は巡り、秋になった。
俺は二股生活を半年も続けていることになる。
 でも、学校祭が終わり女と会うことが少なくなった。
 別に改心した訳じゃなくて、学校祭に来ていた男といい感じなんだと女のクラスメートが言っていた。
 だから、暇することが多くなって、じゃああいつ呼ぼうかな?なんて気軽に思って電話をかけた。


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