ガチャリと鍵を回して扉を開く。
 俺に続いて詩舟も入ってくる。

「お邪魔します……」

「おう、」

 パチパチと家の電気を付けていく。
 時刻は7時ちょっと前。
 夏のおかげでまだ外は明るかった。

「んで、話って……」

 俺はリビングを通り、台所までいくと冷蔵庫を開けた。
 中から俺専用イチゴ牛乳を取り出す。
 そこで詩舟の方を見たら、なんだか顔が青白い。
 ……そんなに言いにくいのか?
 仕方がない。

「……はぁ、詩舟」

「な、何?」

「夕飯食ってけ」

 一人も二人もそう変わらん。
 何て言ってみた。
 詩舟が人形みたいに首を縦に振るから少し面白かった。
 実際一人も二人も食事の手間は変わらない。
 感謝するよ。母さん
 料理男子時代は必ず来ると言っては俺に料理作らせてたこと。
 今来た!!俺の料理男子時代

 パタパタと詩舟が来て俺も手伝うって言ってきた。
 詩舟と二人で台所に立つなんて考えもしなかった。
 けど、卵ぐらいはちゃんと割れよ。

 今日の献立は、チャーハンとラーメン
 ラーメンには野菜炒めまで入ってるやつ。
 ズルズル啜る音とカチャカチャスプーンと皿が当たる音と久しぶりの長い会話。
 前に戻ったみたいだ。

「ご馳走サマでした」

「お粗末様でした」

 片付けはあとでいっか、と思って使った皿をシンクに入れて水かけて放置。
 あんまりにも普通に過ぎていったから忘れそうになったけど、今日の目的は詩舟の話を聞くことだ。
 ……学校ではできない話みたいだし。
 例えこの話が、俺にとって聞きがたいものであっても、俺は聞くだろう。
 どんなことであっても、結局は好きな子の話なんだから。

「……桂」

「ん?何?」

「話したいことって言うのは……実は、オレ」

 詩舟から進んで話してくれたのはいいけど、ためらってるみたいだ。
 言葉はなかなか紡がれない。
 でも、根気よく待つ。詩舟がいってくれるまで。

 コチコチという時計の秒針の音しかしない。
 もう時刻は8時30分を過ぎた。

「オレ、桂に嘘ついた」

「嘘?」

 聞き逃しそうなほど小さい声だった。
 聞き返すと、小さくうなずく。

「この前、桂が、オレが別れたことに怒ったことあったじゃん」

「あったな」

 もう忘れたい出来事だけど……
 何?実は別れてませんでした。ってやつ?
 悲しいのか嬉しいのか分からんくなるわ。

「オレ、あの時とっさにヨウコちゃんの方に好きな子できた的なこと言ったけど、違くて、ヨウコちゃんには、」

 黙って聞いてるしかなかった。
 話していくごとに詩舟の目に涙が見えた。

「詩舟くんの本当に好きな人は、私じゃないって……」

 確かに、告白は熊坂さんからで、詩舟も可愛かったからとその告白を受けたらしいが、そんなこと言われてたのか……
 あぁ、なんか罪悪感

「よく分かんなくて、でも、桂なら、慰めて、くれると思ったのに、突き放されて、痛かった」

 もう、やめてくれ。
 そんなに罪悪感つのらせること言わないでくれ。
 もう、俺はうなずいて話を促すことしか出来なかった。

「ヨウコちゃんと別れるときより痛かった、ここが」

 詩舟が自分のワイシャツの胸のところを握りしめる。
 俺と詩舟の間にある机がもどかしかった。
 今すぐに抱き締めてやりたいけど……

「オレは何でかわからなかった。その次の日から桂がオレのこと避け始めてるのがわかった。オレ以外と話してる桂を見て、また痛くなった」

 俺は自惚れそうになる自分を抑えることができなくなってきた。
 もう諦めかけていた事が、叶いそうだと心が騒ぐ。

「気づきたくなかった。こんなこと、男の友達を、」

「詩舟!!」

 怯えさすと分かっていたけど、そこから先は先に言いたい。
 もう、期待する感情を抑えることなんてできそうにない。
 俺は立ち上がり、詩舟の横にいく。
 詩舟の座ってる椅子を横にずらして向かい合わさせると、目線を合わせる。

「俺は詩舟が好きだ」

 詩舟目が驚きで見開かれる。
 そのせいでポロリと涙がこぼれた。

「友達としてなんでしょ、どうせ」

「詩舟!!聞け。俺はお前が気づくずっと前からお前が好きだよ!!」

 肩に置いた手に力がこもる。

<< back >>


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -