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 僕と姉さんの話が終わって、今度は最近の出来事とかをポツポツ話していった。
 姉さんは女性のネチネチした部分のところまで話すから聞いてる僕の方がなんだか恥ずかしくなったり、怖くなったりするような話題だった。

 でも、社内恋愛の話になったとき、なんだかすごく共感してしまった。
 わざとオネェ言葉と言われる口調を使ってごまかしたが、真剣に聞いてしまった。

 話が一段落して今更ながら、つけっぱなしのテレビに目がいく。

 時間はお昼時。
 興味を引くような番組ではなかったがただぼぉっと見ていた。

「そういえばさ、いやっそういえばっていったら可哀想なんだけど、父さんは?」

「父さん?父さんは今日まで出勤なんだって。って言っても、今日は定時帰りだってよ。そうしないと労働基準とかに引っ掛かるとかなんとからしいし……」

「大切なところが分かってないよ?」

「まぁ、いいのよ。そういう事だから!!ねっ!」

 その後もただ何となく、流れる映像を眺めていた。

「ねぇ、来加……ワサビってボケ防止にいいの?」

「うーん…そうなのかな?」

 さっきまで見ていた知識番組で取り上げられていた話題について寝ていた姉さんが尋ねてきたが、料理人でもそれは専門外だ。
 適当に流して僕がお茶を取りにいこうとしたら母さんの白い車が駐車場に入ってきた。

「母さん帰ってきたみたいだね………あれ?香さんと隆頼くんも一緒に帰ってきたみたいだね」

「本当?………本当だ」

「ただいまぁ」

 この声は隆頼くんかな?
 前会ったときより滑舌がいいのは成長の証なのだろう。
 もう小学生なのだから色々変わることもあるだろう。

「おかえりなさぁい……お母さんと会ったの?」

 姉さんが出迎えに行ったので、僕はお茶を飲んで、姉さんの後について行った。
 隆頼くんが玄関口でうずくまっている。
 靴でも脱いでるのか……両手がもぞもぞしてる。

「あぁ、ただいま……そうなんだ。帰って来てたら偶然会って、そのまま車に乗せてもらったんだよ」

 香さんだ。
 隆頼くんの前に座って靴を脱ぐ彼を見ている。
 手伝おうとする度、隆頼君にダメ!!と言われてシュンとなっている。

「おかえりなさい」

「あぁ、来加くん!!来てたんだ……いつから?」

「ついさっきです。香さんお久しぶりですね」

「そうだな……前会ったのは……正月か…半年だな」

「そう…ですね。隆頼くんも、こんにちは」

 ちょうど靴が脱げた隆頼くんが、こっちを向いたタイミングで声をかける。

「ほら、タカ。こんにちはって」

 隆頼くんはペコリと頭を下げてこんにちはと言うと、僕の体に抱きついてきた。
 といっても、立ってる僕の片足にだけど。

「…っおわ!!ははっ…隆頼くん大きくなったね〜」

 僕がそういうと、香さんが答えた。

「だいぶ重くなったと思うぞ」

「そうですね。ほんと、重くなった」

 僕は隆頼を、勢いをつけて持ち上げる。
 隆頼は大人しく僕に抱かれてる。
 正月にあったときはまだ身長も僕の膝のちょっと上ぐらいしかなかったけど、今はもう腰に届きそうなぐらいまで延びている。
 隆頼くん成長早いんだろうな…
 僕は大して延びなかったから、羨ましいな。

「隆頼くんクラスでも背高い方ですよね?」

「そうだね…一番後ろって言ってたかな……」

「羨ましいな。僕は一回もなったことないから」

 隆頼くんを見ていうと、きょとんとした目で僕を見ていた。

「うややまし?」

「羨ましい。隆頼くんのことをすごいって言ってるんだよ」

「うややまし!!ねぇ、ライ兄ちゃんあそぼ〜」

 羨ましいの意味がわかってなのか、僕に抱きついて暴れると言う高度な技を繰り出してきた。
 それに、まだ遊び足りないようだ。

「いいよ。何して遊ぶ?」

「タカ。手ぇ洗ってからだぞ」

「はーい」

 隆頼くんを下ろしてやると、トテトテと洗面所の方に走って行った。
 香さんもそれについて行った。
 そしたら、母さんが大荷物を持って玄関に入ってきた。

「ふぅ…ただいまぁ」

「おかえり。母さん…荷物持つよ」

「あっそう?おねがぁい」

 と言うと、一番重そうな袋を渡してきた。
 それにしても買いすぎじゃないか?
 そして、母さんと一緒に玄関からリビングの方に入った。

 母さんを手伝うために台所に入っていたら、隆頼くんがついてきて遊ぼうと誘ってきた。
 どうしようかと迷っていたら、いいタイミングで父さんが帰ってきた。
 なんだか疲れきっている父さんには悪いが、隆頼くんの遊び相手を頼む。

 だが、疲れは関係なかったらしい。
 ご飯ができても隆頼くんの遊びに付き合っていた。
 初孫の力恐るべし。

 久しぶりの楽しい食事。
 誰かと食べるご飯。

 心斗と慎次朗くんと食べたご飯も美味しかったけど、
 やっぱり家族っていいな。
 あったかい
 みんなが笑顔で、笑い声が響いてる。
 楽しかった……

 隆頼くんが何かをするたびみんなで騒いで、ひとつのことにみんなで話し合う。
 あっという間に時間は過ぎていった。

 食器も後片付けをして、お風呂にも入った(隆頼くんが飛び入りしてきた)。
 それからまた隆頼くんの相手を彼が疲れて眠るまでやった。

 パチンと部屋の電気をつける。
 家を出たときと何も変わってない自分の部屋にはいった。
 なんだか感慨深くなる。

 部屋の一隅にあるベットに横たわる。
 これからを考えるために。

 僕はどうすればいいのだろう。
 仕事は? 家は? お金は?


 ハヤテは?………

 僕はこれからどうすればいいの?
 不安に押し潰されるかと思った。
 広いはずのベットで小さく丸まって、固く目を閉じてじっとしていたら、いつの間にか僕は眠ってしまっていたようだ。

 翌日、隆頼くんに上に乗られて揺さぶられて起きた。

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