「暑い…。」


雲一つない空を見上げて大きなため息をついた。
まだ6月の上旬だと言うのにこの暑さでは先が思いやられる。
外が明るすぎるせいで暗く思える靴箱で、私はぼーっとしていた。


「こんなところで何してるの?」


後ろから声が聞こえて振り返ると、私と同じく今から家へ帰るらしい不二がいた。


「出たくないなぁと思って。」


校舎の外で太陽にじりじりと焼かれる地面を指さしてそう言うと、不二はクスクスと笑った。


「それじゃ、とっておきのおまじないをかけてあげる。」


何の?とたずねる前に唇を塞がれた。
しばらくして唇が離れると何事もなかったかのように不二は去っていってしまった。


「何…今の…。」


ジリジリとせわしく鳴いている蝉の声も、もう頭には入ってこなかった。







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