最近うちの学校本館にエレベーターなんてものができた。
学校に必要なんだろうかと思いながらも、生徒会役員である私にとってエレベーターは便利なものベスト1にランキングされている。
生徒会長跡部景吾様は人使いが荒い。
生徒会の重要書類を抱えて階段を延々と登っていかなければならない生徒会のためにエレベーターをつけてくれたんじゃないかと思ってみたりしたけど、このエレベーターを一番活用しているのは校長のようだった。


いかにも高級そうな鐘の音が響いて目の前の扉が開くと、私は足元に注意しながらエレベーターに乗った。
私の両腕と視界を占領しているダンボール箱の中で皆勤賞の生徒に配られる賞品がカタカタと音をたてた。


「そこのエレベーター待て!」


ダンボール箱を端にやって外を見ると跡部が来た。
私は開閉ボタンを押して跡部を待つ。


「ありがとな。」

「いーえ。」


跡部が乗り込むとエレベーターは重々しい扉をゆっくりと閉めた。


「終業式が近いと生徒会も忙しいよね。」

「…疲れてんのか?」

「ちょっとね。でも跡部は疲れたって顔してる。」


跡部は横目で私を見た。
視線がこっちを向いているのがわかると、なんとなく気まずくて私はうつむいた。


「バーカ。」


跡部は私の顔をのぞきこむとフッと笑った。
ほんの一瞬だけ唇に触れたものが、私は何なのかわからなくて。

職員室に用があったらしい跡部は、開いた扉の向こう側に消えていった。

再び空間を切り取るエレベーターに残されたのは、私とダンボール箱と微かに存在を主張する跡部の匂い。

ダンボール箱で腕が塞がっていた私は抵抗なんかできなかったし、そもそも不意打ちで避けられなかったし、じゃあ不意打ちじゃなかったら抵抗できたのかってそれはまた別問題で…。

あ、今のファーストキスだ。



声にならない叫び声が小さな密室に大きく響く。
こんな恋の始まり方なんて認めない!と悩んでみても結局は同じ。

こんなにどきどきするなんて、私思わなかった。





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