ついでだ、と私は三強の絵を見ようとその机に近寄ろうとしたその時。

取っ組み合いの喧嘩に発展していた赤也とブン太。
赤也に押されたブン太が仁王にぶつかりそうになった瞬間、持ち前の反射神経で仁王が自分の渾身の作品を守ろうと必死にブン太を隣へ全力で押しやる。
そのとばっちりをもらってブン太にぶつかられたジャッカルは先ほど学んだのか足元ではなく手元に置いていた水入れに悲しくもぶつかり柳生の方へと零した。
凄まじい形相で制服に水が被るのを回避しようとした柳生が椅子から転げて後ろに倒れるが、結局上から降ってくる勢いづいた水の恰好の餌食となる。
ジャッカルをバネに跳ね返ったブン太は赤也に再び掴みかかって赤也を床に倒した。
赤也が倒れたところにはちょうどびしょ濡れになった柳生がいたため、避けようとなんとか赤也が柳生の上を飛ぶ。
そのまま前転して転がった赤也は真田の座っていたイスに激突。
だるま落としされた真田が赤也の上に落ちて赤也がひしゃげたような悲鳴をあげた。
驚いた真田はあまりにも急な出来事すぎて赤也の上に落ちるのを避けられなかっただけでなく、右手に持っていた絵筆を放り投げてしまった。
絵筆は幸村の前を華麗に通り過ぎ、ちょうどよく柳の画用紙の上に落ちた。


「…………………。」


笑顔のまま固まった幸村の画用紙には、真田の絵筆から飛んだ絵の具がついていた。
その後の惨劇といったら、言葉では言い表せない。





その後、展示会で私たちの絵は展示されたっていうから見に行った。
もっとも、真田は部長命令で出せなくなったから真田のは幻の作品になってしまったけど。
けっこう上手かったんだけどな。真田の幸村の絵。
まあ幸村は気に入らなかったみたいだけど。
なにか賞を取ったのか、綺麗に修正された幸村の花の絵には赤いリボンがつけられていた。
元から人の顔を描く気はなかったのか、本人に訊けはしないけど幸村らしい絵だ。
仁王と柳生とジャッカルはほぼそのまま展示されていた。
その横に上手な真田の似顔絵がある。
美術部顔負けなくらい上手いんだけどその真田にはヒゲが生えていた。
言わずもがな描いた本人、柳の趣向だ。
飛んできた絵筆がちょうどいい所にと言っていいのか、とにかく柳はそれでやる気をなくしたのか不機嫌そうにネチネチと文句を言いながら取ってつけたようなヒゲで誤魔化していた。
「ほう。なかなか似合うな弦一郎。」と柳が画用紙に向かって話しかけていた時に真田が泣きそうになっていたのは見なかったことにする。
そんな絵の横に似たような絵が三枚。
結局あれから私とブン太と赤也はもう一度書き直すことになった。
もう二度とお前を描くものかと互いに三つ巴な状態だったため、三人は全員ジャッカルを描くことにした。
一番簡単そう。一番怒らなさそう。まぁ理由はそんなところだ。
ブン太、私、赤也の順で飾られた画用紙の下には題名が貼ってある。
左から長男、次男、三男だ。


ま、もうすぐ花見の季節だからこれも一興ってことで。




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