隣から感じる視線に目を向ければ、先輩が可愛い顔してこっちを見ていた。
「なんですか。」
普段ならそれだけで浮かれた笑顔を見せるのだが、今日はそんな気分じゃない。
「…別に?」
先輩はそう言ったものの、俺を見るのをやめてくれない。
「どうして見てるんですか。」
「別に。」
俺はバンッと勢いよく本を閉じた。
「見るのやめてもらえませんか。」
「…珍しいなって思って。長太郎が機嫌悪いの。」
俺は先輩の腕を強く掴むと、荒々しくキスをした。
目を丸くする先輩の首筋に噛みつきながら口元を歪める。
「ええ、先輩の言ったとおり。今日の俺はとっても機嫌が悪いんです。」
先輩を椅子から落として、冷たい床に組み敷いた。
少し罪悪感にかられてふと顔が曇った俺を知ってか、俺の首からぶら下がっている十字架に先輩は軽く噛みついた。
カチンと歯が金属にあたる音がして、俺はフッと笑う。
「食べてもおいしくないですよ。」と十字架を先輩の口から外してやると、求めるような先輩の瞳に吸い込まれそうになった。
代わりに深い口付けを。
言葉なく、それは情事の始まりを告げる。