「あの…それで先輩話ってなんスか…?」
今から言われることをもうわかっているんだろう。
少し赤くなっている後輩。可愛いなんてもんじゃない。
これはいけるかもしれないと意気込んで私は息を吸い込むといざ声を出した。
「実は私…ずっと前から…!」
「それ以上近づくな。」
突然後ろから聞こえた冷たい声に私はひやりとするものを感じた。
「せ、精市…!?」
ツカツカと寄ってきて私の横に立つ精市からは「邪魔だよ。消えろ。」と言わんばかりのオーラが後輩に向けてそれはもう全開になっている。
これが水ならもうとっくに私とこの後輩は溺れているだろう。
私が今まさに愛の告白をしようと思っていた愛しい後輩は精市に恐れをなして逃げて行った。
「あぁっ!!待って!!」
「ほら、もう帰るよ。」
精市は私の手を握ると強引に引っ張った。
「バカ!!精市のバーカ!!」
「フフ…誰がバカだって?」
「ヒィ!すみませんでした!!」
なんで私が謝ってんのよ。ほんとムカつく。
「精市はなんでいっつも邪魔するの?」
「幼馴染みがロリコンになるのを黙って見てろって言うのかい?」
「ロリコンじゃない!!ちょっぴりショタなだけ!」
「どっちだっていいよ。」
年下が好きなだけなのに、精市はこんな調子だ。
「部室の戸締りするからついてきて。」
「えー!なんでして来なかったの?」
「誰かさんのせいだよ。」
精市が恐かったので私はとりあえず黙った。
私と精市は幼馴染みでもう何年来の付き合いになる。
たまに一緒に帰ったりするけど、私が告白をする日は決まってお迎えが来る。地獄から(とか言うと怒られるけど)
部活が終わる時間だからもう日が傾き始めている。
電気をつけて部室に入ると私はイスに座った。精市が窓を閉めるのを大人しく待っている。
「どうして年下がいいんだ?」
「へ?」
突然精市が喋ったので、私は間抜けな声を出した。
「だって、ほら、可愛いじゃん。」
「フフ…どこが?」
精市の声に私は恐怖で固まった。
(私、なんか悪いことしたっけ…!?)
「げ、元気なところとか…。慕ってきてくれるとことか…。」
私が恐る恐る言うと、部室の電気が消えた。
「ギャアァ!!」
暗闇に満ちた周囲に私は叫んだ。
電気を消した当の本人は悪気もなく私の方に寄って来た。
「せ、精市…!電気…!なんで消すの!?」
「だって見つかっちゃまずいだろ。」
震える私の手を掴んで、精市はにっこりと笑顔を浮かべた。
「おいで。年下じゃ満足できないようにしてあげるよ。」
「は…!?」
中学生の年下なんてたかが知れてる、と精市は呟いた。
夏なのに冷たく感じる床に半ば強引に押し倒されて、無防備な首筋を舐められた。
「精市…っ!」
今から何をされるかわからないほど私は子供じゃない。
精市が本気だってことも、よくわかってる。
「や…、」
「優しくするよ。……大切だからね。」
フフ…と笑った精市の笑顔は綺麗だった。
落ち着かせるような笑顔とは反対に、服の上を滑って行く指にぞくりと快感が走る。
「……っう、…っ!」
溶けてしまいそうなほど甘く優しい極上の扱い方。
焦らして焦らして体温と一緒に駆け上がる。
夜に漏れ出すのは、声にならないような。
3.甘い悲鳴