「ジロー、起きて。」


うーん、と少し反応は見せるものの起きてはくれない。
さっきからこの調子だ。早くしないと跡部に怒られてしまう。


「ジローを起こして来い。」

「え?なんで私!?」


跡部がどうして私を指名したのかはわからない。
いつもみたいに樺地くんに頼めばきっと私なんかよりも早いのに。


「自分の彼氏の躾くらいお前がしろ。」


そういうことか…。
跡部はそっけなくそう言った。
私はYESの返事をする以外にできなかった。


木漏れ日が風で葉と一緒に揺れる。
今日は気温もちょうどいいから、気持ち良さそうに寝ているジローを起こすのは忍びないけど。

私はジローの肩に触れると揺らして、大きな声を出した。


「ジロー!!」

「うわっ!」

「ぎゃあ!」


ジローが勢いよく起きたため、ジローを覗きこむように起こしていた私とぶつかった。
後ろに倒れそうになる私をジローがとっさに支える。ジローの膝に背中を預けるようにしてようやく安定した。


「びっくりしたC〜。」

「わ、私も…。」

ジローは上から私を覗きこんで面白そうに笑った。


「今日はどうして樺地じゃないの?すっげー嬉C〜けど!」

「さぁ?跡部に聞いて。」


起きようとしても起きれない。ジローがなんとなく押さえつけている。


「ジロー、起きれないんだけど…。」

「うん。じゃー…そのまま。」

「………っ!!」


逃げられないように押さえ込まれたまま、唇を塞がれて酸素を奪われた。


(ここ学校……!)


ぐっと押し返してもジローは手を緩めない。
手に集中して抵抗していたせいで、おざなりになった口を割って舌が入り込んでくる。


「…っ!ん!」


歯列、咥内、口蓋、舌の裏側、丁寧に強く舐められていく。
口の端から唾液が垂れたのに驚いて私は身を捩った。
ジローの膝から落ちても唇は重なったまま、雑草が生えた地面に倒された。
ジローは私の上に跨って、さらに深く舌を入れ込んだ。


「…、く…っん…!んー!」


息が苦しくて、私は抵抗できない手足の代わり必死に声をあげたけれど、抵抗虚しく意識が朦朧とし始めた。
うっすら目を開けると、ジローは平気そうに私を見ていた。


(もしかして…怒って…る…?)


今となっては確認しようがない。
段々と力が抜けていく。

完全に意識を失った私から唇をそっと離して、ジローは小さく呟いた。


「俺以外の命令、聞かなくていーのに。」


醜い嫉妬なんかできないくらい目に見える形で感じさせてよ。


君の全てを呑み込むように。



1.貪欲なキス







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