「見てみ。ほら、あそこ。」
「うわあ、星がすごく綺麗!」
「フッ…あんな星の輝きよりもお前の方が綺麗やで。」
「侑士…。」
「お前ら何やってんだ…?」
お風呂上がりでまだ少し濡れている短い髪を、宍戸はがしがしとかいた。
そんな宍戸を見て私はツンと顔をそむけた。
「侑士、何か聞こえたわ。」
「聞こえてもうたか。それは俺の心の囁きや。アイ・ラブ・ユー。ハアァ…」
「なんだよその寒い台詞は。」
合宿最後の夜だった。
私と宍戸は付き合ってるんだから合宿中にドキドキハプニングとかあったっていいはずだ。
だから私は色々なハプニングを仕掛けるべくチャンスをうかがっていたのに、結果は全て未遂に終わった。
何もかも宍戸のせいだ。
だからこうしてここにいる。ラブロマンスの代名詞である忍足なんかと一緒に(しかもノッてきた。前から思ってたけど、忍足キモいよ。)
「宍戸のバ―――カ!」
「あ?何だよ。おい!待てって!」
首を傾げる宍戸に忍足はため息をついた。
「もうええから…。追いかけてキスの一つでもしてやったらええねん。」
「そ、そうか…。」
宍戸は何だかよくわからないまま一応走り出した。
「えぇそうです。私には魅力なんてこれっぽっちもございませんから。なんで付き合ってくれてるのかもよくわかりませんしね。うん。なんでだと思いますか。やっぱりフッたら私が変態的なストーカーになりそうだからかな?」
「なに一人でブツブツ言ってんだよ。気持ち悪ィ。」
「一人じゃないもん…。お星様が一緒だもん。」
合宿所の裏側に座り込んで、私は宍戸とは反対の方向に顔を向けた。
私が鼻をすすると、宍戸は困ったように顔をしかめた。
「あのよ…、俺こんなだけど。」
「……うん。」
「お前の彼氏だろ。」
「……うん。」
「だから…。ってお前ちゃんと聞いてんのかよ?こっち見ろって。」
「嫌。無理。」
今、目赤いから。いつもの何割増しで不細工に違いない。
宍戸は座っている私の前にしゃがむと、両手を壁について私の逃げ場を塞いだ。
「し、しど…。」
「俺鈍いし、よくわかんねぇけど…。いいんだよな?」
「は?何が?」
宍戸はポカンとする私を見て、「鈍いのはお互いさまだ」と私の顎を片手ですくった。
重なる唇にあっという間に思考を奪われて。
口付けが終わった後に宍戸に抱き寄せられても、私は茫然としていた。
宍戸が失敗したとか何とか呟いていたのも、もう何を言っているかわからなくて。
「さすがにこんなところじゃできねぇよな…。」
宍戸はため息をついて私の頭を撫でると、私の顔を見て笑った。
「ははは。すげー顔。」
「だ、誰のせいだと思ってんのよ!バカ。」
「うん。」
「宍戸のバカ。」
「うん。」
「大好き…。」