よりによって真田…!

当の本人は明日から部活仲間となるであろうKとデレデレしながら談笑している。


「さあ、真田を納得させてやってくれ。」

「くじもう一回やっていい?」

「フフ…面白い冗談だ。」

「もうやだ幸村。」


Rはため息をついて真田の元へすたすたと歩いていくと、Kと真田の間を割るようにして間に入った。


「なんだ。試験は終わったのか?」

「はい。」

「は…?」

「タオルとドリンクね。」

「あ、ああ…。」

「どうぞ。」

「かたじけない。」

「意外だな。もっと奇抜なことをやると思っていたのに。………それだけかい?」

「不満?」

「一応、理由を聞いておきたい。」

「運動で疲れてる選手にだらだらと不必要な説明をしてもストレスになるだけでしょ。必要な時と質問を受けた時にのみ説明を加えればいいと思う。…ちなみに今の真田のドリンクは普通のドリンクだよ。体調良好、規定のドリンクで問題ないはず。何も言わずに選手を思いやるのはマネージャーの常識だし、親切心は売っていい時と悪い時があるのよ。」

「フフ…道理で仁王と仲が良いわけだね。」

「そうじゃろ?」

「それ褒められてんのかな…。それにさ、説明してくれって言われても私しないかもよ。」

「さあてねぇ…天の邪鬼じゃのう。」

「そういうのを屁理屈と言うのだ。俺は認めん。」



何が頭にきたのかと言えば全てがとしか答えようがない。
朝からうるさくテニス部員の勧誘に追われ、クラスで一悶着起こしたことのある真田に友人を奪われ、面倒な試験を受け、苛々の原因の八割をしめている真田に文句を言われた。

効果音で表すのなら

カッチーン

それから、ガツン


「うおおおおおおおお!!」

「ゲフッ!」

「Kちゃん!こんな奴がいる部活に入るのやめなさいよ!」

「真田くんは素敵な人だよ…?」

「待って。うちの部員がみんな真田みたいな言い方をされては困るよ。」

「真田がいなくても入りたくない!!」

「往生際が悪いぜ。潔く入部すればいいだろぃ。」

「そもそもなぜ貴女はそんなにも入部を拒むのですか。」

「あ、実はねRちゃんは、青学の」

「Kちゃんちょっと黙ろうか。」
「やめろR!Kには手を出すなゲフッ!」

「離せこの老け顔!!もう帰る!帰ってやる!!」

「入部届を書くまで帰らせるわけにはいかない。みんなRを止めるんだ。」

「「「(ヒイィィ!!)」」」








「その後暴れ出したRを抑え込むのに多大な被害が出た。それを知っている者ならばRを怒らせるようなことはしないだろう。俺も御免だ。ちなみにKも怒らせると怖いぞ。」

「柳先輩がそう言うなんて相当なんスねー。」

「利得がないからだ。」

「お前一番に避難してたもんな。恐かったなー。あの時のRは。真田が小さく見えたぜ。」

「R先輩、なんで入部したくなかったんでしょうね。面倒くさいのが嫌いだからっスか?」

「それもあるだろうが一番の原因は青学の不二だな。Rは不二のファンでいつも試合を観戦しに行っていたようだ。立海のテニス部に入れば当然観に行けなくなることもある。」

「不二さんのファンだったんスか?!…なんか意外っス。仁王先輩みたいなのが好みだと思ってました!」

「だろぃ?俺もびっくりしたぜ。」

「でも、結局入部したんスね。」

「幸村と交渉の末、入部するかわりに青学の偵察という名目で試合観戦の許可を得ている。」

「幸村部長が許可したんスか?!」

「ああ。幸村はあの二人を大層気に入ったらしい。」

「恐ぇ…。K先輩はあの真田副部長と付き合ってるし、R先輩は幸村部長と渡り合ってるし…。弱みとかないんスかね。」

「Kの弱みはRと真田だろぃ。」


なるほど、と赤也は納得した。
じゃあ、R先輩は?と言われて、今度はブン太が頭をひねる。
すると柳が静かに口を開いた。


「実は……ああ見えてRは人のいないところではよく泣く。普段は弱さを見せずに強がっていて、自己領域に他人を受け付けないだけだ。」

「は…?R先輩が?」



「Rちゃん!弦一郎さんの帽子返してあげてよ!」

「これ洗濯しないとそろそろヤバいって。」

「そ、そうか。手洗いで頼むぞ。」

「ごめん。落として砂まみれになっちゃった☆」

「もうRちゃん返して!弦一郎さん…私が手洗いするからね。」

「ああ…頼む。」

「キッチン洗剤でいいかな?」

「だめだって!」





「それ嘘だろぃ。」

「明るさが取り柄って感じの…なんかアホっすよね。R先輩って。」

「お前が言うなよな。」

「ていうか、なんで柳先輩そんなにR先輩に詳しいんスかー?もしかしてR先輩のこと好きとか。」


ニヤニヤと笑う赤也をたしなめながら柳はあっさりと答えた。


「これは俺が取ったデータではない。仁王の情報だ。」




いつものように騒ぐRとKと真田の三人から離れてそれを見ながら、仁王は切なげに笑っていた。
視線に気付いていたのかいなかったのか、柳生に話しかけた仁王はもういつも通りに見えた。



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