初恋はいつですか?
相手は誰ですか?

どんな形で始まって、どんな形で終わりを迎えましたか?






うだるような暑い夏。
ただでさえ気分が沈むようなこの時期に、更に自ら沈んでいく奴がいた。


「いい加減泣きやんでよ…。」


ウザいんですけど。
暑いんですけど。


「…馬鹿じゃないの。」


いつものように悪態ついてみるものの、南は全く無反応だった。
ざまーみろバーカ。
大切な大会前に色惚けしてるからこんなことになるんだ。
私なんかとっくの昔に失恋したんだっつの。


外が明るすぎるせいで、電気をつけていない教室は昼間だというのに少し暗い。
窓の外では蝉がうるさく鳴いていて、もどかしい私の気分をさらに煽った。

横で机に突っ伏して、南は先ほどからピクリとも動かない。
泣いているのかどうかもわからなかった。

ただ、南が初めて小さく見えた。
地味だから気付かないけど、よく見ると実は結構筋肉があって、肩幅もしっかりしていて、スタイルもいい。
優しいし、面倒見もいいし、運動神経も良くて、勉強もできて、顔も悪くない…ってこれじゃ私が馬鹿みたいだ。


「初恋は実らないって言うじゃん。」

「…ほっといてくれよ。」


ようやくポツリと南の声が腕の下から聞こえてきた。
声はかすれていたが、涙声ではなかったことに私は安心感を抱いた。


「早く…新しい恋をして、幸せになった方がいいよ。」


南は何も言わなかったし、私も南が何も言わないことをある程度予想していた。


好きなんだよ。
南のことが。

こんなに好きなんだよ。

気づけよバカ。
一体何年、友達やってると思ってるんだ。


「私も新しい恋しようかな…。」

「Aが恋って…想像つかねぇな。」

「言ったな。」


私の初恋は小学生からだった。
始まりは、覚えてない。
いつの間にか私は南が好きで、好きで、どうしようもなく気持ちの確認だけを繰り返してきた。


「おま…、なんで泣いて…。」

「泣いてない。」


もう散ってしまった恋を私はいつまで大事に持っておくつもりなんだろう。

逃げてばっかりだった。
臆病だった。
そんなろくでもない初恋だった。


窓の外の蝉の鳴き声が一斉に止んだ。
自分が傷ついて落ち込んでいることを放り出して南は私の心配をし始める。
おろおろと私のために戸惑って、困ったように私の顔を見る。優しい目で。
そうだ、そういうところだ。
胸が熱くて喉が焼けて眩暈がするような、私をどうしようもない気持ちにするのは。


「泣くなよ、A。俺のせいか?」

「違うー…」


千石に奪われた君の初恋が、どうか君に傷を残しませんように。


好きだよ南。
だから君の初恋が終わる今日、私も一緒に泣いてあげる。







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