幸村は凄艶だ。


「暑い…。」


幸村が頭に手をやって、はぁと気だるそうにすると周りの女の子たちは失神寸前だ。
悲鳴をあげる子もいれば、倒れる子もいるし、普段は違うテニス部男子に熱を上げている女の子でも顔を赤らめた。

汗をかきにくい体質らしく、幸村は暑がっていても爽やかだ。
幸村は髪の先や爪の先まで幸村だと思う。
どこまで綺麗で、どこまでも人を魅せる。


「今日は暑いね。」

「…幸村なんか汗でべたべたして気持ち悪…痛!!」


殴られた頭を撫でながら私は隣にピッタリとくっついた幸村を見た。

裏庭で昼ご飯を食べていたら幸村がやってきた。
暑い暑いと愚痴を言う口と、私にピッタリとくっついて座る行動は矛盾している。
私の記憶では、幸村は暑い日はほとんど校内から出ないはずなのに。
校舎の向こう側が騒がしかったから、きっとここに来るまでに女の子たちに色気を振りまいてきたんだろうと思う。


「ベタベタしてるのが気持ち悪いなら、気にならなくしてあげるけど。」

「?」


幸村は私の頬を片手で取ると、唇を重ねた。
私の手からボトリとパンが落ちる。
唇を舐められて非難の声をあげようとしたのを利用されて、舌が押し入ってきた。


「…っ、!」


生ぬるい舌が我が物顔で口内を蹂躙する。
幸村を意識すると急に心臓が跳ねた。
ぞわぞわする感覚から逃げたくて、後ろにのけぞると追うように幸村の手が私のうなじの辺りを這った。
逃げた罰とでも言うように更に深く舌を入れ込んで、強引に熱を上げる。


「…っつ、ン、」


幸村の匂いがする。
シャツ越しに温かさがリアルに伝わってくる。
眩暈がする。
幸村の手が優しく背中を撫でた。たまらず息がこぼれる。


「ん…」


幸村は眉間に皺を寄せて離れていった。
頬に汗で張り付いていた髪を乱暴にかきあげるともう一度唇を重ねようと私を抱き寄せた。


「ちょ、ちょっと、わ!わあああ!!!」


幸村は全力で押しのけて逃げようとする私の腕を掴んで止めた。
もう千切れてもいいと私は強引に腕を引いて走った。
走り去った。
頭に幸村の顔が浮かんで、かあっと顔に血が集まる。




「はぁ…あつ……。逃げなくてもいいのに…。」


走っても走っても苦しい。
あんな色気反則だ。




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