幸村は危険だ。


目の前には幸村の整った綺麗な顔。
顔の横にある幸村の腕は私を閉じ込めている。
幸村の体温も、不本意ながら良い匂いも、感じ取れるくらい近くて、幸村が少し腕を曲げれば唇と唇がくっついてしまいそうだ。
後ろの壁と仲良くしながら、私は必死に顔を背けて幸村を見ないようにしていた。

朝、人気のない廊下で突然死角から人が倒れてきたと思ったらこの状態。
悲鳴をあげる暇すらなかった。


「 おはよう 」


朝とは思えないような艶やかな声で幸村は私に挨拶をした。


「…おはようございます。ひっ!」


幸村が顔を近づけたけど、顔を背けているせいで、耳や首筋あたりからゾワッと全身に鳥肌がたった。
肌に当たるすれすれの距離で幸村の唇が滑っていく。
恐る恐る見やると、流し目で私を睨む幸村と目があった。
青ざめてじりじりと壁伝いに逃げる。
幸村は鼻で笑って首筋に唇を落とした。


「うわっ!わー!!」

「昨日寝る間を惜しんで、フラれた理由を夜通し考えてたんだ。でも、駄目だね。さっぱりわからないよ。」


そんな血色の良い顔で言われても説得力はゼロだ。
幸村は私の顎をすくって、ヤクザも真っ青になるような笑顔でゴツンと額と額をくっつけた。


「わ か ら な い よ。」


そんなおめでたい頭でわかるわけねー!とは言えず、私はただみっともなく震えて黒板を引っ掻いたような悲鳴をあげていた。
涙目で幸村を押しやると、幸村は私をぎゅうと抱き締めた。


「諦めないから。」

「幸村…」


私が油断してふと力を弱めた瞬間、幸村はぎゅうと私のお尻を掴んだ。


「キャ―――!!!」

「うん。なかなか。」


何に納得したのか、幸村は散々お尻を撫で回してから満足げに教室に戻っていった。
セクハラなんて可愛いものじゃない。
もう二度と幸村には近づかないと壁に倒れ込んで、私は悔し涙を飲んだ。




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