5日目!

キムチ茶漬け、中華スープ、爆豪君は納豆キムチ豆腐、私は三色ナムル。
昨日しゃべっちゃった通り、今日の朝食は爆豪君スペシャル、というか用意されてたメニューを中華風にして爆豪君用のキムチと一味を昨日買っただけだけど。

「……上出来」

喜んでもらえたようで何よりです。


問題なく午前のスケジュールをこなして、スパゲティを巻きながらエンデヴァ―の記者会見を見る。
保須市はまだ復興などで騒がしいけれど、こちらは穏やかなもので今日は平和に終わるかな、食器を片づけながらのほほんと思っていたけど。
平和が崩れて問題発生したのは、パトロールが終わった後だった。


ズシーーーン…………

先に帰ってきてトレーニングをしている爆豪君は、なんというか、陰を背負っていた。

「こ、子ども泣かしちゃったんですか……」
「ああ、それからずっと黙っていていてな」
「な、なるほど」
「というわけで頼んだぞ」
「え、頼んだ、というのは?」
「上手く慰めてやってくれ。今の彼でも君の声なら届くだろう」

む、無茶ぶりきたーーー!!
平和に今日が終わるとか思ってたの誰だよ私か!
黙々とトレーニングを続ける爆豪君は落ち込んでいる、というより狭い檻に無理やり入れられた獣を思わせる。
初日以外、戦闘系訓練してくれないし、座学とパトロールだけ。保須市みたいに大事件が起きることもない。
体育祭以来のフラストレーション溜まって地雷を踏み込まれて、普段なら聞き流せた、かもしれない、子どもの言葉にも過剰に反応しちゃったんだと思う。

ここ数日一緒に過ごしてきて分かったけど、一応理由があってキレてるんだ。
地雷が多いだけで、いやそれが問題なのかもだけど。
例えば、緑谷君、ヘドロ事件、揶揄、弱いと言われること、見下されること、それから、心配してくれるくせに心配されることも。
下手な慰めはきっと逆効果、私にできることは、

「あのベストジーニスト、お願いが、あるんですがーーー」



BOOOM!、3階、バトルフロアで爆音が響く。
今のでまた300枚くらい減らされた。
でも距離をとって体勢整える時間はとれた、もう一度千枚、彼の足を拘束、

「っから効かねえよ!」

両手の爆破で跳躍、足に迫る折り紙の群れを爆発するために上に振りかぶった、

「今!」
「?!」

四方に飛ばしてた一見無意味な折り紙千枚、爆豪君の手のひらを避けて両腕をまとめて覆って拘束する。
よし、次、最初失敗したけど今なら目を覆える。
だが、新しく飛ばした100枚をうまく爆破されて距離を詰められる。
回し蹴り、両腕を振り下ろす、踵落とし、両肘打ち、止まらない接戦攻撃を流すだけで精一杯だ。
反射で折り紙で防御してしまう上に小規模爆破を繰り返すからジリジリと数が減らされてる。

「っこの!」

折り紙3千枚、厚い壁を間に作って後方に下がる。
もう一回、目っていうか顔狙おう、細かい操作させてもらえる時間はない、

「って、あ!」

爆豪君の手には折り紙のストックボックス、ひょいと目の前に投げて、両手を向ける、歯で籠手のピンを噛んで、やばい。

ドガアァァン!

熱風に飛ばされて壁に叩きつけられて、痛みに支配されそうな頭を無理やり回転させる。
今ので折り紙ほぼ全滅、残り背中の隠しストックのみ、ヤケ起こしたふりして距離つめれば―――

「!!」

立ち上がろうとしたところ、凶悪な膝蹴りが迫って身体をひねって回避、伏せた状態になってしまい起き上がる前に、背中に重みが乗る。
そのまま後頭部を押さえられ上半身は完全に動かない。

「紙1枚でも動かしたら爆破する」
「あ〜……まいった」
「勝負あったな」

ベストジーニストの言葉で爆豪君がどき、私は拘束していた折り紙の個性を解除する。
随分派手にやったな、というお小言を交えながらの講評を聞く。
私は目隠しするということに固執しすぎ、もっとパターンを広げること。
爆豪君は束縛されてからの対応に高評価を貰っていた。

「2人とも手当てを終えたら今日のスケジュールは終了だ。しっかり休んで明日に備えるように」
「ウス」
「はい……ありがとうございました!」


手当てを終えて個室へ向かう途中、チラリと爆豪君を盗み見るとさっきと同じで静かだけど、いつものむすっと顔だ。
私の個性は爆豪君の個性と相性最悪も良いところで、私じゃ力不足かとも思ったんだけど。
良かった、少しはストレス発散になったようで安心する。

「……なに、笑ってんだよ」
「え、わ、笑ってた?」
「あぁ」
「そっか、なんか、いつもの爆豪君だなって」
「はぁ?」
「ううん、やっぱり強いなって」
「っ!!……ったりまえだ」

おお、照れてる。
顔をそむけて口元に手をやる爆豪君の頬が赤くなっていた。
珍しくてまじまじと見ているとついにチッ、と舌打ちされてしまった。

「見んな、じゃあな」
「うん、おやすみ。……ごめん、一言だけ!」

部屋に入りかけてた爆豪君が振り向いてくれて無言で続きを促がす。
ヒーローを目指す者として今回の結果は素直に、悔しかった。
だから、これは言っておきたい。
真っ直ぐぶつけた言葉に、彼も不遜に笑いながら真っ直ぐ返してくれた。

「次は、絶対、負けないから」
「何言ってんだ、次も俺が勝つ」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

2017/08/27



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -