2日目!

ピピピ、ピピピ、ピピピ、ピピ……

携帯のアラームを止めてから1、2、3、きっかり10秒数えて勢い良く腹筋で起きる。
朝弱い私のマイルールだ、これに失敗して二度寝すると地獄を見る。
準備を終えて、3階のフロアの真ん中であぐらをかく。
瞑想、まずは5分。
これはベストジーニストに毎朝晩、行うように言われたものだ。
私の個性には高い集中力、素早い情報処理、細かな操作能力が必要になってくる。
それらを向上するために瞑想は効果的なのだそう。
丁寧に教えてもらった通りに終えた後、日課のヨガを始める。
母に誘われて始めたけれど、ダイエットよりも接近戦での柔軟性や健康維持が目的になっている。
ルーティンとなっている一連のポーズをなぞっていき、深呼吸、はいおしまい。

軽く汗を拭きながら4階に戻ると、いい匂いがただよってくる。
あ、まさか、と思い共同キッチンを覗くといつものツンツン頭を見つけた。

「おはよう、爆豪君」
「っおう、はよ」
「朝早いね、後ろ通るよ」
「おう」

ルールの1つ、職場体験中は朝ごはんは自分たちで作る。
見本となるヒーローとなるため規則正しい生活から、メニューも材料もレシピまで用意してくれている。
昨日のうちに爆豪君と交代で作ることに決めた時は料理、出来るの?とか思ったけど。
失礼しました、私より手際良いですね、爆豪君。
手伝ったらむしろ邪魔そうだ。
お茶を飲みながらなんとなく眺めていて、思い出した。

「あ、ねえ爆豪君、昨日の課題、見ても良い?私のも見ていいから」
「あ?ああ。黒いファイルだ」
「ありがとう」

彼のレポートを見ながら椅子に座って待つこと五分。
テーブルに並べられる白ごはん、お味噌汁、カレイの甘酢煮、卵焼き、きゅうりのゴマ和え。
配膳を手伝って、食材と作り手に感謝を込めて手を合わせる。

「いただきます」
「いただきます」

おお、おはようもそうだけど、挨拶はちゃんとするんだなぁ。
育ちは意外と良いのかな、お味噌汁をすする。

「!おいしい。」
「……当たり前だろが」
「いや、ほんとに!ちゃんと出汁とってるし」
「普通だろ」
「卵焼きも、……おいしい!私甘いの好きなんだ」
「〜〜〜っ!!そ、そーかよ」
「わー、明日ハードル上がるなぁ」
「……不味かろうが食ってやるよ」
「言ったな?!明日おいしいって言わせてやんよ」
「ハッ、せいぜい頑張れや」

おお……!今までで1番まともに会話できてる。
というか、爆豪君にとって気に入らないことを言わなければむしろ静かで穏やかだ。
今まで避けていた不良って言われる人達とは違うのかも。ただ、

「お、2人とも早いな、おはよう!」
「おはようございます、宿直お疲れ様です!」
「……はよっす」
「なんだ、カツキは朝から機嫌悪そうな顔してんな」
「黙れクソが!もともとこういう顔だよ!」

短気と口の悪さは聞いてた通り、キレどころは、まだ謎だ。



午前中、座学(一般常識、マナー、ヒーロー法等)、基礎体力トレーニング、昼食。
午後、パトロール、基礎体力トレーニング、終了。
ぱぱっと手抜きスパゲティで夕飯を、ささっと湯船から上がってお風呂を済ませてから座学の内容をまとめるために共有スペースでノートを広げる。ついでにお菓子も。

「あ?」
「あ、今日もお疲れー」
「おう。……」

お風呂上りに飲み物をとりに来たらしい爆豪君に声を掛ける。
そのまま個室に戻るかと思ったら、向かいの椅子に座り頬杖をついてこちらを睨みだした。
え、なに、ついに、ヤラれちゃう感じ……?

「……何してんだ」
「ざ、座学の復習。と自分にご褒美」
「甘納豆て。ババアかよ」
「ひどい!しかもつまんでるし」
「……甘ぇ」
「そりゃそうだ」
「……」

まじでなんなんだ。
無言の目線はまとめ終わったノートを端に片付けて、お茶を淹れ直しにキッチンへ行くまで続いた。
テーブルに戻っても、2人のお茶をすする音だけが響く。

「……お前が」

口を閉じて、一度目線を左に外した後、また口を開いた。

「お前がアイツのフォロワーなんは個性が似てるからか?」
「……え」

予想斜め上の質問に頭が追いつかない。
特に隠してもいないからフォロワーなのを知ってても不思議じゃないけど。
こう、指摘されると下心あって職場体験先を選んだことをつつかれたようで、なんというか。

「それとも、アレか。……アイツみたいなんが、こ、好みなんかよ」
「えぇっ?!」

意外すぎて入学以来1番のびっくりだよ?!
話題と顔が合ってない気がするのは私だけかな。
睨んでたと思ったのは、どう切り出すか考えてたからか。

「おい!どうなんだよ」
「え、えっと、うん、フォロワーになったきっかけはそうだね、紙か繊維かの違いで似てるなって」
「で?」
「で?!……それから味方も敵もなるだけ傷つけない戦い方とか、努力家なところとか知ってファンになったかな。あ、あとファン大事にしてるところとか」
「……で?」
「え……あ、ああ!好み!好みかぁ、好きは好きだけどなぁ、カッコいいと思うし」
「………………フーン」
「(聞いといて興味なさそーだな)んん、まぁ、付き合いたいのとは違うかな。下手したらお父さんくらいの歳だし」
「!……そか」
「うん、服のセンスもなぁ、アレはあの人だから許されてるもんだし……ナルシストは好みじゃないかな」
「お前、意外と言うよな」

いつもバカにした笑い方じゃなくて、思った以上に幼い顔で吹き出して笑う爆豪君をまじまじと見てしまう。
軽く恋バナしたり、笑ったり、なんかこうしてると爆豪君も普通の高校生なんだなぁ。

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2017/08/19


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