▼ #01
魔術が栄えた世界。力に差はあれど、誰もが魔術という力を持っていた。
そんな世界を蝕む謎の怪物。その怪物に対抗できる程の魔力を持った人間は、多くはなかった。怪物はカルマと呼ばれ、そのカルマを殲滅する為の組織がある。
その組織は『CROWN』と呼ばれた。
これは、そのCROWNに所属する少年たちの物語。
#01 魔法学園-Side.Boys-
「今日から俺も、この魔法学園の生徒の一員……っ〜〜!!テンッ、ションッ、上がって来た〜!!」
校門を前にして気分が高揚したのか、少年・
アキハは両手を大きく挙げて叫んだ。
当然他の登校中の生徒の注目を集めた。上級生の面々が微笑ましげに笑っており、流石に恥ずかしかった。
そんなアキハの背後から呆れた調子の声がかかる。
「ちょっとアキハ。嬉しいのはわかるけどもう少し高校生らしくしてよ。じゃないと他人のフリするからね」
「キ、キリカ!ひでぇなお前!」
アキハよりも少し身長の低い彼の名前は
キリカはアキハを追い越し校内へと入って行く。慌てて追いかけた。
「な、俺らもCROWNに入れるかな?」
隣を歩くアキハは目を輝かせて言う。
この魔法学園はCROWNの候補生を育成する為の学園だ。優れた魔力を有した少年少女がCROWNの一員となる事を夢見て入学する。
CROWNは国から支援されている組織だ。その為CROWNの一員になった者は色々と優遇される。命懸けの戦場へ赴く事になるにも関わらずCROWNに憧れる学生がいるのはこれが理由の一つだ。
「さぁね。予備軍がいいとこじゃない?本部に所属出来る学生なんてそうそう居ないよ……あの例外のメンバーを除けばね」
キリカが呆れたように答える。
「いやいや、もしかしたら俺らもここで才能開花しちゃうかもじゃん!?」
「はいはい。寝言は寝てから言ってね」
「ちぇっ。キリカってばつれねぇな」
冷えた反応のキリカにアキハは頬を膨らます。
その時、後ろが騒がしくなる。
「なんだ?」
アキハたちは振り向く。
「きゃー!StarSの二人と紫築先輩よ!」
黄色い声が上がる。
注目を浴びながら歩く上級生三人組が見えた。
「あれは……」
「す、StarSの黒井トモヤさんと赤峰リセトさんだ!!」
アキハのテンションが上がる。
StarSは今人気のアイドルユニットだ。
トモヤと
そしてその二人はこの学園の生徒で、若くしてCROWNの正式メンバーでもある。二人の後ろを眠たげに歩いている長身の彼は
「お、おはようございますッ!!」
目の前を通り過ぎて行こうとする三人にアキハ思い切り大きな声で挨拶をする。突然の事に三人は驚く。
「びっ、くりしたー。デッカイ声出すね〜?」
眠たげにしてたレンナの目が見開かれる。
「ふふ。元気がいいね」
「新入生か?はは、元気いっぱいで何より。おはようさん」
リセトとトモヤも続く。
三人は小さく手を振り校舎へと向かって歩き出した。
「っ〜キリカ!!」
「うわぁ!?」
歓喜極まったのかアキハはキリカの両手を握りグルグル回る。
「俺!StarSの二人と会話しちゃった〜!!!!」
「わかった!わかったから止まって〜!!!!」
***
入学式を終え、帰路につくアキハとキリカ。
「明日から本格的に学園生活の始まりだな!」
「アキハってば今日ずっとテンション高いね」
「まぁな!……そういやアキハ、今日買いたい本があるんだっけ?」
「そうそう。寄り道していい?」
「かまわねーよ!」
キリカの要望で本屋へと寄る為に商店街へと向かう。
目的の店の近くまで来た時だった。騒音と共に人々の悲鳴が木霊したのは。
「なんだ!?」
「カルマだ!カルマが出たぞ!」
誰かが叫ぶ。
異形の形をした魔物が人々を襲い始めた。
刹那、アキハたちの隣を誰かが走り抜ける。
「おい化物!お前らの相手は僕だ!」
魔法学園の制服を着た、アキハたちよりも少し小柄な少年がカルマへ叫んだ。
彼の声にカルマが一斉にこちらを向く。
すると少年は宝石のようなものを取り出し掲げる。
「タイガーアイ!リアライズ!」
光を放ち少年の持っていた宝石が銃剣へと変わった。
次々と牙を向くカルマを少年は流暢な動きで仕留める。手馴れたその動きにアキハたちは見とれた。やがてカルマの殲滅が終わる。
少年はやってきたCROWNの隊員と少し言葉を交わしアキハたちの方へやってきた。
「ぼさっとしてると死ぬぞ。魔法学園の生徒なら一般人の避難誘導くらいしろ……ってなんだ、一年か」
ネクタイの色で判断し少年は呟く。
「す、スンマセン!!」
アキハが大きな声で深々と謝罪を述べると少年は少し目を見開き、やがてバツが悪そうに背を向けた。
「しっかりしろよ、新一年生」
それだけを言い残し、去った。アキハが頭を上げたところでキリハが少し動揺した声をもらす。
「あの人、茶野ミナトさんだ」
「え!?茶野ミナト!?CROWN正式メンバーの!?」
ミナト。CROWNの男子最年少を飾る正式メンバーだ。彼は入学前からその才能に一目置かれ、魔法学園直々にスカウトされた有名人でもある。
「ちょっと怖そうな人だったね」
「そ、そうだな。でもやっぱスゲェよ。あっという間にカルマを殲滅しちまった」
ミナトの実力を目の当たりにして二人はただ立ち尽くすばかりだった。
***
「ミナト、また一人で無茶したのか?」
CROWN本部。
たまたま居合せたトモヤに言われミナトは眉間に皺を寄せた。
「別に僕一人で十分ですし」
「でもな、一人の力には限界があるんだぞ?前みたいに誰かとチームを組むべきだ。………………まだ、引きずってるのか?アイツのこと」
トモヤの指摘にミナトは一瞬だけ動揺を見せる。
「何のことですか」
「アイツは自分からCROWNも魔法学園も去ったんだ。いつまでも「気にしてません!!!!」
遮るようにして叫ぶミナト。
「僕は気にしてなんかいないし、あの人のことなんか一切知りません。勘違いしないで下さい」
「…………だったら、なんで誰とも組まないんだよ」
「今のCROWNで背中を預けれるような人物が居ないだけですよ」
そう吐き捨てミナトは去って行く。そんな彼の後ろ姿を見てトモヤはやれやれ、と肩を竦めた。
「ホントは今でもアイツの帰りを待ってるんだろうな」
呟いた言葉は誰にも届くことなく消えていった。
to be continued...
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