短編 | ナノ


▼ その窓から

秋がやってきた。
遅くまで遊んでいた子供たちの声はもう、17時のチャイムとともに消えていってしまう。
朝日の昇る時間が遅くなり、段々と起きるのが億劫になってくる。
自転車に乗りながら眺める景色も、葉は緑から黄色に変わり、
空は低くなり、微温く吹き上げる風が透子の胸を締め付ける。

こんな日は、無性に悲しくなる。
何が悲しくなるかは、透子にはわからない。
きっと遺伝子レベルで刻む込まれた先人の誰かの気持ちなのだ。
そうでなければ、なぜここまで苦しいような悲しいような怒りのような理解できない感情にならないといけないのか意味がわからない。

そうでなければ、私の体はこれから起こることを知っていて、


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