小説2
- ナノ -


おまけ




〜おまけ〜


サクラちゃん視点


ちょっと気になる人と放課後一緒になるから、どうすればいいと思います?
なんてカルイ先輩に聞いたのが間違いだった。

お昼休みの会議が終わり、授業の前に職員室に寄った帰りだった。先輩と出会ったのは。
カルイ先輩は男友達が多く、後輩の面倒見もいい。けれど彼女を疎んでいる人も多く、彼氏が何人もいるとか何股してるとか、酒を飲んでるとか色々悪い噂も流れてくる。
けど大概その噂はでたらめだ。実際はノリがよくて優しくて、時には男らしい頼れる先輩だ。
そんな先輩は現在フリーらしく、片思いに悩む私がふと先輩に聞いてみたのがいけなかった。

『えー?同い年ぐらいなら男って基本単純でバカだからー、適当に足とか胸とかちらつかせとけばドキドキするもんよ?』

って言われて、思わずそれは先輩だからでしょ。と私とは比べ物にならないほどのグラマーな身体を横目で眺めた。
先輩は正直相当スタイルがいい。出ている所は出ているし、納まる所は納まっている。健康的に焼けた肌は活発さや明るさが見て取れて、それが大胆な体型に似合っている。

私とは雲泥の差がある体型に思わず落ち込めば、気づいた先輩にそんなの関係ないって。と笑い飛ばされた。

『大丈夫だって。サクラ可愛いじゃん。それに言うでしょ?女は愛嬌って。あんたなら大丈夫だよ』

そう言って肩を叩かれ、じゃあ頑張れ。と背を押され、私はそういうもんかなぁ…と疑問に思いつつ授業を受けた。

んでまぁ、実際ちょっと、っていうか大分ドキドキしながら放課後彼と昇降口で待ち合わせをし、その際スカートを随分な短さまで折ってみた。
正直見えるか見えないが、ギリギリの長さだった。
こんなに短いスカート履いたことなかった私は相当緊張したけど、暑いから、と言えば彼は特に気にした様子もなくそうかと言ってそれっきりだった。

やっぱり私じゃダメなのかなー。
思いつつも部屋に辿り着き、クーラーのスイッチを入れ胸元のリボンを取る。
正直スカートの長さだけで諦めるのも悔しくて、私は半ばムキになってボタンをいつもより多く開けた。
普段は第一ボタンだけ開ければそれで十分なんだけど、今日は第二ボタンまで開けてみた。その下には下着しか着けていない。
今日は六限目が体育でプールに入ったから、汗を吸ったインナーを着たくなかったのと、これで少しはセクシーに見えたらいいな。っていう願望があってのことだった。

けれど彼は普段と全然変わらない感じだし、でも何となくだけど視線が左右に泳いでる気もする。
ただ普段から彼は何を考えているか分からない人だから、今もきっと視線の先にあるプリントの文字を追っているに違いない。

あーあ。私もカルイ先輩みたいにセクシーな体型してたらなぁ。
そんなことを思いつつ学際のプリントを仕舞っていれば、つい油断していた私の足が彼に当たってしまった。
慌てて引っ込めて謝罪すれば、当たっただけだから気にするな。といつも通り冷静な声が返ってくる。

やっぱり私じゃダメか。
そんなことを思いつつ足を折り、体育祭のプリントを取り出し彼と向き合った。

でも何かさっきより随分と雰囲気が忙しないっていうか、ソワソワしてるっていうか、妙な空気を発している彼に気付き首を傾ける。
もしかして熱中症にでもなったのだろうか。だったら休ませなければ。
そう思って声をかければ、彼は暫く固まった後に突然顔を赤くして机に突っ伏してしまった。やっぱり熱中症だったのかしら。もし脱水症状ならヤバい。
少しドキドキしながら触れた彼の体は熱く、熱があるかもしれないと思った私はポカリを薄めてこなくちゃ!と使命感を感じて立ち上がった。

「…ナイスアングル…」

けれど聞こえてきた声に視線を落とせば、私のスカートの方へと視線が定まっている彼に気付き咄嗟に裾を押さえつける。

「見た?!今見たでしょ?!」

恥ずかしさのあまり半ば叫ぶようにして問いかければ、彼は素直に頭を下げてきた。
こっちは真面目に心配したというのに。
けれど責める気持ちと同時に、ふと今日着けていた下着のことを思いだした。

(やば…今日全然可愛くないやつじゃん…)

プールがある日は割と気を付けているんだけど、お気に入りのは一昨日履いちゃったし、一番可愛いのは昨日履いてしまっていた。
ご飯を食べた後転寝していた私はぼんやりとしながら下着を選んだから、正直微妙な奴を履いていたのだ。

あ〜!スカート短くするんだったらもっと可愛い下着履いとけばよかった〜!
そしたら我愛羅くんだってちょっとはドキッとしてくれたかもしれないのに〜!!

でもその気持ちがつい口に出てしまって、聞こえていたらしい彼の驚くような声が届き慌てて誤魔化す。
だって今の発言で尻軽女っていうか、やらしい女だなんて思われたくないし。
でもやっぱり見られた恥ずかしさからバーカっ!と叫んで彼から顔を背ける。

とにかく冷静になろうと再度プリントへと手を延ばせば、彼の視線がようやく私に定まった。

「…とりあえず、ボタンはもう一つ閉めた方がいいんじゃないか?」

彼の視線が実は私の顔より少し下にあることに気付き、つられてそこに視線を落としてから漸く気付く。
シャツに透けてるブラジャーの形と、少しだけ覗いている生地に。
いつもの癖で投げつけたプリントは見事彼の顔面にヒットし、仰け反った彼に私はやっぱり叫ぶようにして罵ることしか出来なかった。


end



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