小説2
- ナノ -


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「ハァ....」

風影室では幾つもの巻物が机に積まれ、その反対側には数十センチにおよぶ書類が積まれた間に、砂隠れの風影である我愛羅は筆を止め、椅子の背凭れに寄りかかり身を任せる。


この数時間、休むことなく筆を動かしていたため、どうも目の奥に疲れが溜まっている気がした。親指と人差し指で目と目の間を摘まむように、軽く揉んでいると、ノックもなくガチャリとドアが開く。


「ほらよ、我愛羅」


我愛羅の兄であるカンクロウは高く積み上がる書類の山をドカリと机に置く。


せっかく一息つこうにも、これでは台無しである。


「....一体これは何なんだ」

「傀儡部隊での後期の予算表じゃん。部品から薬草まで事細かく纏められてある。毎年6月には後期、12月には前期のそれぞれの部隊の予算の割り振りをしないと、上役の連中がうるせぇだろ」


それに加え、五影会談や上役との会合、そして上忍から下忍までの任務の割り振りなど、我愛羅の元には様々な依頼書や報告書がどんどん山積みになっていく。


ハァ....と我愛羅はこの終わりが見えない書類や巻物を見て、再びため息を溢した。


いつになれば、最愛の妻であるサクラに会えるのだろう。サクラもまた、砂隠れへ来てから此方の病院に勤めるようになり、夜勤もある。我愛羅がやっと自宅へ帰ることが出来ても、サクラは病院勤務のことも多く、帰る時間帯も我愛羅は定まってはいなかったので、朝方帰ることもざらであった。


もうかれこれサクラとは数ヵ月は顔を会わせていない。

さすがの我愛羅も我慢の限界であった。


『.....今日こそは』


五大国の影達をも招いた大々的な挙式を挙げたにも関わらず、当の本人達はそれ以降、顔すら合わせていないなど誰が考えてもおかしな話である。

毎日サクラ宛に必ず一言手紙を残してはいるものの、サクラ自身はどう思っているのだろう。



結婚式では友であるナルトや、サクラの親友であるいのから『サクラを幸せにしてくれ』と祝いの言葉と共に、『必ず幸せにする』と我愛羅は誓った。


果たしてどうだろうか。


祝福してくれた友達との約束以前に、サクラ自身を大事にしてやれているのだろうか。



『.....まずいかもしれんな』




どう考えてもそうだとは言えなかった。



すると我愛羅は椅子から立ち上がると、カンクロウが持ってきた書類の山には見向きもせずに、ドアへと足を進める。


「我愛羅!どこ行く気だ?!まだ仕事がこんなに.....」

「急用が出来た。すぐに戻る」

「おいっ!!」




バタン





「.....ったく」


一人部屋に残されたカンクロウは、弟の後ろ姿を一人見送る。


『.....アイツもずっと此処にカンヅメだったしなぁ.....ま、少し位息抜きも必要か.....』



弟の行き先を知っていたカンクロウは、心の中で呟くと、窓から我愛羅が砂に乗っていくのを見届けた。



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