小説2
- ナノ -


魅惑の花園





ぷくぷくと泡立つ水面を見やり、指先を軽く浸せば程よい暖かさが伝わってくる。
サクラはよしと頬を緩めると、早速纏っていた衣服を脱ぎ捨て湯を浴びた。

「はぁ〜…あったまる〜」

普通の入浴剤とは違い、泡立つその入浴剤をサクラは気に入っていた。
元々はいのから誕生日プレゼントとして詰め合わせを貰っていたのだが、一気に使うのがもったいなくて機嫌がいい時や、仕事が一段落した際にご褒美として使用していた。
そして今日は久方ぶりの長期任務が終わり、そのご褒美として大きめの入浴剤を丸ごと一つ使っていた。

「それにバラの香りがいい感じ〜。本当いのってこういうセンスはいいわよねぇ」

キメ細やかな泡を掬えば、その下から仄かに色づいた水面が見える。
そこから香り立つ匂いは華やかな薔薇の甘い香りで、サクラの凝り固まった気持ちを和ませる。薔薇の匂いにはリラックス効果もあるうえ美肌効果もある。
流石流行に目を光らせているいのだとサクラが鼻歌交じりに湯に浸かっていると、擦りガラス越しに影が映り、それがゴソゴソと動いたかと思うと扉が開いた。

「お邪魔します」
「邪魔するなら帰って〜」
「一応ここは俺の家なんだがな。ただいま」
「はい。おかえりなさい」

どうやら我愛羅も仕事を終えてきたらしい。
疲れた顔をしつつも入浴中のサクラに一言かけることもなく乱入してきた夫に、サクラはやれやれと肩を竦めた。

サクラと我愛羅は去年結婚したばかりの新婚である。
けれど元々付き合いは長く、友人としても恋人としても申し分なかった男の元にサクラは嫁いできた。
とはいえ互いに忙しい身である。特に砂隠出身ではないサクラからしてみれば他里での生活ということもあり初めは四苦八苦していたものだが、一年も立てば大分慣れるもので、今ではすっかり主婦業も仕事も両立させていた。

「しかし今日は一段と寒かったな…」

熱い湯を足にかけ、ぶるりと身震いさせる我愛羅の指先は赤く染まっている。
砂漠と言えど冬、しかも夜は特に寒い。そんな中風を切って帰ってきたであろう我愛羅を思えばその反応は当然で、サクラはお疲れ様。と声をかけつつ我愛羅の横顔を見つめた。

「しかし珍しいな。泡風呂か?」
「うん。ってひゃああ?!ちょっと!冷たいじゃない!」

我愛羅の視線がサクラから湯船へと移り、それに倣うように視線を落としたサクラのうなじに我愛羅の冷たい指先が宛がわれていた。
途端に体を跳ねさせ抗議の声を上げれば、我愛羅は軽く笑い、それから早く隙間を開けてくれと冷えた指先を振ることでそれを伝えてきた。

「もーっ、そんなイジワルする人、本当なら入れてあげないんだからっ!」
「酷いことを言う。ほら触ってみろ。俺の指に今感覚はない」
「自慢することか!ってうわ、本当に冷たいじゃない!手袋持って行かなかったの?バカねぇ」

ゆったりと伸ばしていた足を曲げ、背中側に我愛羅を招き入れたサクラの胸の前に赤く染まった掌が回される。
促されるままにサクラがその手を取れば想像以上にその手は冷えており、サクラは目を丸くした。

「仕方ないだろう。本当ならもっと早く帰ってくる予定だったんだ」

サクラに手を弄ばれながら、我愛羅は髪を纏めたサクラの露わになった白い肩に顎を乗せ吐息を吐きだす。
耳元でため息にも似た吐息を浴びせられ思わず体が跳ねたが、サクラは何事もなかったかのように再び我愛羅の指先に己の指を絡める。

「何かあったの?」
「大したことじゃなかったがな。書類がなかなか来なくて待ちぼうけを喰らっていたんだ」
「あら、それは大変だったわね」
「まったくだ」

サクラの絡んできた指を握り返しながら、我愛羅はその手を湯の中に浸ける。
けれど普段ならば眺められたであろうサクラの裸体は泡に隠され見えず、しかし触れる肌からはサクラの柔肌を感じることが出来る。
これはこれで厭らしくていいな。と途端に助平心が頭を擡げる我愛羅ではあったが、口にすれば怒られることは分かり切っているのでそのままサクラの肩から首筋に頬を寄せる。

「ふふっ、なぁに?甘えんぼさん?」
「ん…いい匂いがするなと思ってな。薔薇か?」

くすくすと笑うサクラの手を握りしめながら匂いを嗅ぐ我愛羅に、サクラはご名答と返す。

「いのから貰ったの。いい匂いでしょ?薔薇の香りにはリラックス効果があるのよ」
「ほぉ。知らなかったな。今後の為にも覚えておこう」
「ふふっ、豆知識ね」

我愛羅の冷えた体も暖まり、感覚の戻ってきた指先を弄びながらサクラが上機嫌に笑う。
それに対し我愛羅も軽く頬を緩めてから、改めてサクラの纏められた髪と項へと視線を移す。

(…色っぽいな…)

サクラは綺麗に纏め上げたつもりだろうが、さほど長くない髪は後れ毛が幾つか残っており、濡れた項に張り付いている。
その様が乱れる情事の最中を思い出させ、我愛羅は無意識に喉を鳴らす。

そういえば最近ご無沙汰だったな。
そんなことを考えつつも我愛羅の指がサクラの指をやんわりと解き、何も纏っていない柔肌の上へと滑っていく。

「ん…ちょっと、」
「ん?何だ?」

咎めるようなサクラの視線を流しつつ、首を傾ける我愛羅にサクラの唇が尖っていく。
その眼は明らかに助平親父め、と語っていた。

「やらしーことしないでよ?」
「やらしいこととは何のことだ?どういったことをすればやらしいんだ?」

サクラの牽制に対し、すっとぼけた態度で躱す我愛羅。思わずサクラが睨めばひょいと視線を逸らされる。

「どうして男の人ってエッチなのかしら!」
「しょうがない。本能だ」
「あ、ちょっとやだ!おっぱい触らないで!」

呆れつつも背後の我愛羅の胸に背を預けるサクラの表情は不満げで、けれど我愛羅からしてみればそんな表情すら可愛らしい。
思わず頬を緩めてそれを笑い、けれど疼く本能に従い腹の上から指を滑らせ、そのまま慎ましい二つの乳房を包めばサクラの体が離れていく。
だがこのぬくもりと感触を逃してなるものかと、我愛羅は離れた分だけサクラの背に己の胸板を宛がい、そのままぐっと前傾姿勢を保ちつつ乳房を揉み扱く。

「ぁ、ん、コラ、バカ我愛羅!」
「誰がバカだ。言っておくが俺はナルト程頭の出来は悪くないぞ」
「そういう意味じゃなくて!」

とぼけつつも声音だけは真面目を装い、けれど指先はしかとサクラの乳房を揉み続ける。
下着で拘束されていない自由な乳房は我愛羅の掌の中でやわやわと形を変え、波打つ湯の動きに合わせ踊る泡が肌を滑っていく。
水面下で行われる悪戯に逃げようと腰を捻るが、狭い湯船に逃げ場など存在しない。
入浴剤のおかげでいつもより滑らかな湯は尚更その肌を滑り、我愛羅はサクラの硬くなり始めた乳房の先端へと指の腹を宛がった。

「嫌よ嫌よも好きのうち、とはよく言ったものだな」
「んっ!あっ、や、だ、ちょっと、ぁん!」

我愛羅の手を掴むサクラではあったが、同時に我愛羅から主張し始めた乳首をキュッと掴まれ甘やかな声が漏れてしまう。
思わず口元に手を当てようと思ったがその手は泡に濡れており、躊躇した途端に再度抓まれる。

「んぁ、はぅ…だ、ダメだってばぁ…!」
「ん?気持ちいいのか?やらしいな、サクラは。こんなに硬くして…」
「ぁんんっ、」

我愛羅の指の間で完全に立ち上がった乳首がコリコリと転がされていく。
ベッドの中とは違う、明々と光が灯った中での愛撫にサクラの肌が羞恥と快楽に赤く染まっていく。

「も…乳首ばっかり弄んないでっ…!」

サクラからしてみれば胸への愛撫ばかりする我愛羅に対する抗議の声でもあったのだが、我愛羅からしてみればこの行為に同意を得たのと同然である。
後ろから抱き込んだせいで顔が見えないことをいいことに、我愛羅は意地悪く頬を緩めると、サクラの乳首から指を離し剥き出しになった耳たぶへと唇を近づける。

「ではどこを触って欲しいんだ?」
「ぁん!や、だ…耳も、ダメっ」

サクラにとって耳は性感帯だ。我愛羅に触られるまでそんなこと知る由もなかったが、我愛羅に作り変えられた体はすっかりその指先や唇、声に敏感に反応するようになってしまった。
案の定サクラの下肢は己の意に反してキュンと疼き、見えない湯の中でじゅわり秘部を湿らせ足先にまで快感を伝え始めている。

「先程も言っただろう?嫌よ嫌よも好きのうち、と」
「あうっ!」

言い終わると同時に耳たぶに口付られ、あまつさえそのまま舌で嬲られればサクラの体は否が応にも反応してしまう。
口付けられたばかりの耳たぶに舌が這い、そのまま唇に挟まれ舌先で転がされる。かと思えばそのままべったりと広げた舌全体で愛撫され、複雑な迷路を描く耳殻を舌先で舐めまわされる。
それだけでサクラの下肢は言い様もないほどに疼き、肌は粟立ち、開いた口から荒い吐息が漏れ始めてくる。

「可愛いな、サクラ。耳がこんなに赤くなってる…薔薇のように。綺麗だぞ」
「んんっ…!い、やぁ…のぼせちゃう…!」

口では否定しつつも、直接吹き込まれてくる言葉に脳だけでなく全身が甘く震える。
全身を巡る血潮ですら性感帯になってしまったのではないかと疑いたくなるほどに脈は速くなり、吐息が荒くなっていく。
風呂の湯とも相まって更に上がった体温と与えられる愛撫に、徐々にサクラの頭がぼんやりと霞んでいく。
流石に我愛羅も不味いと気づいたのか、耳の愛撫の最中にも胸を弄っていた手がサクラの腰へと回り込み抱き上げる。

「少し熱すぎたな」
「はぁ…ん…」

湯船の縁に座らせたサクラはぐったりと顔を逸らし、首筋や耳まで、全身真っ赤に染めた肌を無防備に晒す。
けれどその随所で細かな泡が纏わりついており、我愛羅はシャワーからぬるま湯を出すとそれを丁寧に流していく。
だがその際触れた下肢の、呆けるサクラの秘所が湯や泡とは違った湿り気を帯びていることに気付き、我愛羅の口角がやんわりと上がっていく。

「サクラ」
「ん…なに…?」

湯船から出たことで多少落ち着いたのだろう。
ぼんやりとしつつもサクラが我愛羅を見返せば、我愛羅の指先が濡れた茂みを通り過ぎ、無防備に開いた足の合間へと宛がわれる。
途端にサクラの目が驚きに見開かれたが既に遅く、我愛羅の指先がぬるりと潤い始めた花弁を撫でた。

「おかしいな…あんなに嫌がってた割にはこんなにぬるついてるじゃないか」
「あ!ダメっ、触らないで!」

サクラの手が我愛羅の手首を掴み腰を浮かせるが、焦るサクラと冷静な我愛羅では頭の回転が違う。
既に花弁を撫でていた指をそのままぬるついた女壺の中へとぐっと押し込めば、サクラの腰がビクリと跳ねる。

「ああ…すごいぞサクラ…すごく熱くてぬるいついて、俺の指に絡みついてくる」
「や、やだ、そんなこと言わないで…っ」

恥ずかしがるサクラを言葉で責めつつ、我愛羅は浮いたサクラの腰から手を素早く滑らせ柔らかな桃尻を掴む。
途端にぐっと指先が肌に沈み込み、その極上の触り心地に自然と我愛羅の唇から熱い吐息が零れる。

「ほらサクラ。どこを触ったら気持ちいいか教えてくれ。出来るだろう?」
「そ、そんなこと…」

今まで散々自分の体を好き勝手触っていたくせに今更どうしてそんなことを聞くのか。
サクラの体のことを本当は誰よりも知っているであろう男に非難にも懇願にも見える眼差しを向ければ、我愛羅の瞳が柔らかく細くなる。
だが女壺の中に埋め込まれた指は尚も動かず、先程まで散々舌や指で愛撫されていた耳や胸にも愛撫は来ない。
快楽に溺れ始めた体にその態度はいっそ拷問に近く、サクラは羞恥に頬を染め上げながらもゆっくりと自ら腰を動かし始めた。

「ぁ、うっ…ぅんんっ…!」
「…本当にそんな動きで気持ちいいのか?ほら、自分でするみたいに、俺の指でシてみせてくれ」
「あっ…や、やだぁ…見ないでぇ…!」

そうは言っても一度動かし始めた体は正直で、我愛羅の手首を掴んだままのサクラの腕はその手を頼りに腰をグラインドさせていく。
ともすれば我愛羅の広い掌に溢れ出した愛液が滴り、そのぬめりで更に埋め込まれた指と掌全体が滑らかに花弁と女壺を刺激する。
我愛羅の長い指が埋まった女壺からは厭らしく湿った音が響き、広い掌は硬く膨れ上がり始めた陰核に触れ、擦り上げていく。

「あ、ああっ!あーっ、い、い…気持ちいいぃ…!」

浴室ということもあり、サクラの奏でる淫猥な音と切ない嬌声がいつもより大きく響き、二人の性感を刺激する。
我愛羅はサクラの痴態を存分に眺めながらも無意識に唾を飲みこみ、数々の過酷な任務の名残を残す肌へと指先を滑らせていく。

「んんっー!ぁ、い、っちゃう……イっちゃうからぁあ…!!」
「いいぞ。俺の指で厭らしく腰を振りながらイけばいい」
「あ、あっ!あぁああぁ〜っ…!!!」

ビクビクとサクラの腰が小刻みに跳ね上がり、女壺に埋め込んだ指がキュウゥと切なく締め上げられる。その感触に我愛羅はうっとりと目を細め、堪能する。
そうして再度縁に腰を落としたサクラの余韻に震える体と、開きっぱなしになった濡れた口唇を見つめながら舌なめずりし、ひくつく女壺からゆっくりと指を抜き去って行く。

「ぁ…はあ…はぁ…はぁ…」

サクラの忙しなく上下する胸は呼吸に合わせ僅かに揺れ、染まった肌は淫猥な香りを漂わせる。
我愛羅は抜き去った指に残る愛液の残骸を舐め取ると、サクラの至る所に残った傷跡に唇を寄せた。

「ぁ…は、ん…」

自分以外の男、あるいは女がつけた傷など忌々しくてたまらないが、それでもやはり古傷というものは敏感なもので。
案の定唇で触れただけでもサクラの果てたばかりの体は震え、湿った唇から濡れた吐息を漏らしていく。

「が…らく…」
「ん?」

サクラはぼんやりとする視界の中で、けれどしかと夫の姿を確認するとゴムで纏めていた髪を解き、その逞しい肩に掌を乗せる。
そうして隆起した筋肉の確固たる弾力を指先で味わいながらも体を預け、剥き出しになっている首筋に唇を押し当てた。

「ねぇ…もうダメ…ここじゃいやなの…ベッドがいい…いっぱい、奥まで頂戴…」

熱い吐息と、掠れた甘い声で強請れば我愛羅の喉が再度コクリと動く。
サクラが耳への愛撫が弱いように、我愛羅も耳元で強請られるのに弱い。

「チッ…」

案の定我愛羅は舌打ちするとサクラの体を荒々しく抱き上げ、無造作に扉を開きバスタオルを数枚手に取る。

「ぁっ…んっ、んぅ…」

サクラの体にバスタオルを被せながら、それでも荒々しく口付られサクラの腰が甘く砕けていく。
けれど崩れぬよう我愛羅の首の裏に強く腕を回し、柔らかな太ももで腰を抱けばそのまま抱え上げられる。

「サクラ…煽ったのはお前なんだからな。もっと厭らしいお前を見せてくれ」
「ぁ…うん…頂戴。我愛羅くんの、いっぱい、奥まで頂戴…そしたらいっぱい、エッチな顔見せるからぁ…」

いつも二人で眠るベッドに下されながら、口付と愛撫を止めない我愛羅の興奮したような声がサクラの耳殻をなぞっていく。
それだけでサクラの一度果てた体は敏感に反応し、声が更に甘さを増していく。そうして官能に煽られた二人は夢中で互いを求めあうように抱き合い、ベッドの海へと沈んでいった。



end



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