小説2
- ナノ -





「はっくしゅん!!!」
「うおぉ?!びびったぁ…」

書類を捌く最中、珍しく盛大にくしゃみをした我愛羅にカンクロウの肩が跳ね上がる。
対する我愛羅も自分の声に驚き目を白黒させており、差し出されたティッシュを暫く受け取れないでいた。

「おいおい我愛羅〜、しっかりしてくれよ?お前に倒れられたら困るじゃん」
「分かってる…だが別に大して異常はないはずなんだがな…ちゃんと栄養も睡眠もとってるし…」

もしかして誰かに噂でもされているのだろうか。と受け取ったティッシュで鼻をかんでいると、二人の元に文を手にしたテマリが入室してくる。

「我愛羅、木の葉の医療班遠征の話、纏まった内容が送られてきたぞ」
「ああ…そうか。ご苦労」

ずっ、と鼻を啜りつつ文を受け取る我愛羅にテマリが風邪か?と首を傾け丸い額に掌を当てる。
だが我愛羅は首を振ることでそれから逃れ、問題ないと言い張る。

「さっき珍しく我愛羅がオッサン臭いくしゃみしただけじゃん」
「おっさんとは失礼な。ただちょっとあれだ…勢いが良かっただけだ」
「それがおっさんだって言ってんだろ」

からかうカンクロウを一睨みした我愛羅ではあるが、結局ふんと鼻を鳴らしてから文を開く。
確認した内容は一週間後にサクラ率いる医療班が数名、砂隠に講師として赴くというものであった。
今までの我愛羅であればサクラに会える!と内心密かに歓喜しただろうが、今の我愛羅からしてみれば非常に胃が痛い話であった。

(もしサクラに会って“あんたの顔なんて見たくもない、口もききたくないわ”等と言われたらどうしよう…告白する前に振られるとか最悪だ…)

青ざめる我愛羅に流石のテマリとカンクロウも視線を合わせ、我愛羅の手から文を抜き取ると同時に額に手を当て、口の中に体温計を突っ込んだ。

「おい、お前ら」
「いいから黙るじゃん」
「ほら、動いたら熱計れないだろうが」
「………」

別に異常などないのと言ったばかりなのだが、相変わらず過保護な姉兄に我愛羅は諦めて口を閉ざす。
しかし実際どうしたものかとは思う。サクラにロクな説明も出来ぬまま木の葉を発ってしまった我愛羅はサクラ宛に文を飛ばすことも出来ずにいた。
そもそも我愛羅はサクラの家を知らない。もし知っていたとしても文を運ぶ鳥は必ず木の葉の伝書センターへと飛び、我愛羅がサクラに手紙を送ったことが一瞬でばれてしまう。
そうなれば必然的に自分とサクラが身を結んだことが木の葉中にバレてしまい、彼女は居た堪れない思いをするだろう。そう思うと我愛羅は文を出すことさえ出来なかった。

(まぁサクラは聡明な女だ…ちゃんと説明さえすれば分かってくれるだろう)

もう未来の自分にすべてを任せることにし、熱はないなぁとボヤく姉兄にほら見たことかと鼻を鳴らす。
我愛羅の元にはサクラが今どんな状況にいるかなど、そんな情報は一切入っていなかった。



一方サクラと言えば、たまたま木の葉に顔を出したサスケと砂隠から戻ってきたばかりのナルトに囲まれていた。

「サクラ、聞いたぞ」
「サクラちゃん、どーいうことだってばよ!?」
「え…っと…な、なんのことかなー…って…お、おかえりぃ、二人とも…」

あはは、と苦笑いするサクラの背にあたるのは壁。
そしてその両脇にはこの里の英雄二人。足元には眠たそうな瞳のパックン。そして頭上に伸びる木の枝にはサイが飛ばしたであろう超獣戯画の鳥が止まっていた。
完全に逃げ場なしである。

「サクラ、俺はお前なら大丈夫だろうと思っていたから敢えて何も言わなかったんだぞ?」
「そーだってばよ!サクラちゃんには俺とかサスケとかぁ、今はあれだけどサイもいるし、カカシせんせーだってヤマト隊長だってサクラちゃんのこと大事にしてんだからさ!!」
(うえぇ…ナルトはともかく何でサスケくんにまで情報がいってるのよ〜!誰よ流したのーっ?!)

内心冷や汗を掻きまくるサクラの足元では、パックンがやれやれと言った体で体を掻いている。

「サクラ、カカシは別に我愛羅を責める気はない。ただもし我愛羅がお前に対し無体を働いたというのなら一言言わねばならんと言っているだけだ」
「俺はぜってー許さねえってばよ!つか、我愛羅何も言わなかったし!あのすけこましやろーっ!!」
「そもそもだ、アイツはお前に碌なことしてないんだぜ?何故お前はそうホイホイと奴に向かって警戒心を解いていられるんだ?信じられん」

幾らなんでも酷い言われようの我愛羅に、あの人木の葉で嫌われてるのかしら…と思わざるを得ないサクラではあったがしょうがない。
何せ里の英雄二人に寵愛され、そして現火影であるカカシの教え子であり前火影の弟子に手を出したのだから噂は瞬く間に広がるものである。
幾らサクラが違うと否定しても二月前残されたキスマークを目撃している人物は多く、またその頃に五影会議があった事は周知の事実である。
その時ナルトもサクラのキスマークは目にしていたが、性に疎い彼はそれを単なる虫刺されだと勘違いしていたのだ。
しかし砂隠から戻ってきたナルトの耳に届いたのは“春野サクラの初めての男は風影”というとんでもない情報で、ナルトはその時ようやくあの虫刺されがキスマークだと理解したのだ。
結果として我愛羅の名は不本意な形として里に広まり、ナルトも丁度木の葉に戻ってきたサスケもお冠状態になったというわけである。

「い、言っておくけど我愛羅くんは無理やり私を襲ったわけじゃないから!そこは絶対勘違いしないでよ!パックンも!先生にそう言ってて!」
「分かった。正しく報告しよう」

流石長年生きた男である。というよりあまりにもくだらない内容にいつまでも付き合いたくないのだろう。
あっさりと頷いたパックンはともかく、サクラは過保護なナルトとサスケ、そしてどこかで鳥を操るサイを納得させなければならなかった。

「ていうかナルトもサスケくんも、それからサイも!いくらなんでも過保護すぎるわよ!私だって一人の女よ?もう二十も超えたんだし、自分の相手位自分で選ぶわよ!」

サクラの言い分はナルトもサスケも、それからサイも分からないものでもない。
だがサクラを大切に思うがあまり閨に連れ込んだ我愛羅が許せないのであった。

「だからだよ!サクラちゃんってばみーんなにやさしーからさ!我愛羅もちゃんとしたやつだけど、男はオオカミなんだってばよ!」
「今回ばかりはナルトの言う通りだぜ。実際お前我愛羅に食われてんだろ。何でちゃんと警戒しなかったんだ」
「あーもうっ!何なのよ二人とも!あんたたちあたしのお父さんでもなんでもないでしょーっ?!」

叫ぶサクラにパックンがやれやれと吐息を零し、サスケは鋭い視線をサクラに投げてくる。

「サクラ、確かに俺はお前の父親じゃねえ。だがお前のことは大切だ」
「さ、サスケくん…」

サスケの鋭いが真摯な瞳と言葉に思わずサクラの頬が赤くなるが、続いた言葉に思わずその熱も冷めていく。

「だから尚更お前のことが心配なんだ。ナルトならいざ知らず、何でアイツなんだ?眉毛ねえし、何考えてるか分からねえじゃねえか。告白だってされてねえんだろ?そんなふしだらな男に惚れるなんて俺は認めねえぞ」
「眉毛ねえこと関係あるか?サスケ…」

流石のナルトも突っ込まずにはいられなかったのだろう。時折どうでもいいことにこだわるサスケにサクラも口を噤めば、サスケは関係あるな、とふんぞり返る。

「大体何だ、あの額の入れ墨!将来絶対後悔すんぞ!」
「いやぁ…お前の黒歴史ほどじゃあねえと思うってばよ…」
「んだとコラ!俺は俺の意思で進んだ道に後悔はしてねえ!」
「うわ…マジかぁ…」

徐々に話の線がずれていく二人にこのまま逃げられるかな、と思っていたサクラではあったが、姿を現したサイによりそれは戻されてしまった。

「二人とも話が反れてるよ。今はサクラの話でしょ?二人揃ってピーマン頭なんて笑えないから止めてくれる?」
「あー?誰がすっぽんぽんだってぇ…?」
「サスケ、誰もそんなこと言ってねえてば。な、サイ?」

まさかあのナルトがサイとサスケの間に入るなんて。成長したわね、とサクラがほろりと浮かんだ涙を拭っていると、足元のパックンが小声でサクラ、と名を呼ぶ。

「正直に言うとな、カカシは我愛羅を疑ってはおらん。ここはワシがどうにかしてやるからお前は今のうちにここを去れ」
「パックン…!」

思わず両手を合わせるサクラにパックンはふんと鼻を鳴らす。

「明日木の葉を発つんだろう?ならば準備が必要だろう。早く行け」
「ありがとうパックン!今度お礼するね!」
「礼はカカシに言え。気を付けてな」
「うん」

パックンに促され、サクラは喧嘩をおっぱじめる三人の男の元からこっそりと抜け出す。
木の葉を発つのは明日ではあるが、サクラは用意が済めば病院に顔を出すつもりでいた。引き継いでおかなければならない仕事もあるし、何よりそこだと三人が入って来れないということもある。
サクラは颯爽と自宅に戻るとすぐさま用意を整え、荷物を手に病院へ向かって駆けた。
そして案の定男三人はサクラの元を訪ねてきたが健常者はお引き取り願います。と受付のお姉さんこといのに追い返され、三人はその日サクラの姿を見ることは出来なかった。


「ったく、だから言ったでしょ?あの保護者敵に回すと煩いわよ、って」

引き継ぎを終えたサクラが更衣室で時間を潰していると、呆れたいのが入ってくる。
見事に巧みな言葉捌きで男三人を返り討ちにしたいのに対しサクラが苦笑いを向けると、いのは呆れた吐息を零してからそれで?と首を傾けた。

「あんた我愛羅くんのこと好きなの?」
「んー…どうだろ。好きか嫌いかで聞かれたら勿論好きなんだけど、なんていうか…サスケくんに感じたドキドキとか、メルヘンゲットな気持ちはないのよねぇ…」
「ふぅん…あるとすれば“情”ってやつ?」

尋ねるいのにサクラは再度どうだろう。と自身に問いかけてみる。
確かに情はある。共に戦争を切り抜けた仲間だ。そして木の葉と強い同盟に結ばれているし、ナルトを通しての親睦もまあある。
だがサスケに感じたトキメキや、ナルトに対する家族愛のような感情はないと思う。だから余計に我愛羅に対する気持ちが分からないでいた。

「よく分かんない…」
「…ま、いいけどさ。あんたももう二十超えたんだし。自分の相手位ちゃんと自分で決めなさいよ」
「何よ、無理やり聞きだしてきたくせに」

最終的にはサクラの意見を優先してくれるいのに軽口を投げれば、いのはふふふ、と意地悪そうに口の端を歪める。
それに対しサクラが顔を顰めれば、いのはサクラの広い額をトンと突いた。

「良いこと教えてあげるわ、サクラ」
「何よ」

突かれた額を抑えつつ、訝しむサクラにいのは口の端を緩める。
それは誰よりも長い間サクラを見続けてきた、親友の柔らかな笑みだった。

「あんた今、サスケくんに恋してた時よりずっと女の子の顔してるわ。素敵よ、すごく」

いののからかうような、それでいて柔らかな口調と微笑みにサクラは頬をほんのりと染め、それから俯いた。
我愛羅の熱い唇に名前を囁かれた時のような気恥ずかしさが、サクラの全身を包んでいた。



そしてその翌日、サクラは砂隠に向かって木の葉を発ち、男たちは虚しく地団太を踏んだ。
一方我愛羅は一人で書類を捌いており、黙々と仕事に励んでいた。

(肩…凝ったな…)

関節を鳴らしながら背を伸ばし、肩を回してから息をつく。
自然とカレンダーへと移った視線で確認すれば、サクラが砂隠に着くまで数日を切っている。

(サクラに会ったらなんと言おう…この間はすまなかったと謝るのが最初か。いや、でもそれはまず二人きりの時でないと不味いな。周囲にバレたら彼女が可哀想だ…どうしたものか)

我愛羅は既にサクラと我愛羅の関係が木の葉中に知れ渡っているとは露知らず、いかにしてサクラの心のダメージが少なくすむかと頭を悩ませていた。
しかし実際の所いつまでたっても解決策は浮かんでこない。
それ故にペースが落ちて捌けない書類はいつも以上に溜り、ますます我愛羅の気を落とさせた。
だが時間というものは待ってくれない。我愛羅がうだうだと悩む間にも時は過ぎ、サクラが来るまでの数日はあっという間に過ぎて行った。
長い時間をかけて悩んだというのに最終的に何もいい案が浮かぶことなく当日を迎えてしまった我愛羅は、非常に気まずそうな表情をしたサクラを顔を合わせることになってしまったのだった。

「…遠い所わざわざすまないな」
「いえ…お気になさらず。仕事ですから」

引きつるサクラの顔も新鮮でそれはそれで眺めていたいが、それにしたってサクラの後ろに控える医療班の女子たちがそわそわと空気が忙しない。
何と言えばいいのか、まるで近所の子供のデートをこっそりと覗く趣味の悪いおばさんのような空気だった。
あまりいい気はしない。
どうしたものかとサクラの瞳をじっと見つめれば、サクラの頬が徐々に赤くなっていく。あー…ダメだ…やはり可愛い。

「おい我愛羅、サクラに穴が開いたら大変だからそれ以上見つめるの止めるじゃん」
「そうそう。サクラ、お前も嫌なら嫌とハッキリ言いな。コイツ何考えてるか傍からじゃ分かんないんだから」
「え?!あ、は、はい」

カンクロウの両手が瞼に回され視界は閉ざされてしまうが、それでもサクラの上擦った声は聞こえてくる。
あの夜耳にした切羽詰まった声もよかったが、こうして狼狽える声も実に愛らしい。
これ以上考えると確実に下半身がのっぴきならない状態になるので止めておくが、決して俺は変態ではない。これだけは確かだと断言する。

「カンクロウ、手を離せ。これでは仕事の話が出来ん」
「おー。お前がサクラを穴が開くほど見つめねえ、って約束できんなら離してやるじゃん」
「そんなに言うほど見てないだろう。可愛いな、と思う程度の時間しか見ていない」
「あ?」
「は?」
「え」

カンクロウの声と、テマリの声。それからサクラの声に続き、キャーキャーと小さく騒ぐ声が聞こえる。
あー…しまった…本音が…こう、つい…ぽろりとだな…

「我愛羅、手、手。動いてるけど伝わらない」
「おい我愛羅、ここ最近おかしいなと思ってたけどコレが原因かい?」
「…我愛羅くん…」
「あー…すまん…」

無意識のうちにどうにか説明しようと手が動いていたが、結局言葉にならず両脇に落とす。
開けた視界の中、見下ろしたサクラの顔は真っ赤に染まりテマリとカンクロウは呆れた視線を寄越してきていた。
そしてサクラの後ろにいる、見た目は若いが中身はおばさんたちの女子数名がニヤニヤと格好を崩し、俺たちを見ていた。

「…とりあえず、仕事の話…」
「出来るかぁあ!!」

纏めた書類を手に取った俺の頭をテマリが叩き、カンクロウは額を抑え、サクラは肩を落とした。
叩かれた頭部がじんと痺れた熱を伝え、俺は立場無く頭を掻いた。


こうして不本意ながらも俺のサクラに対する好意がバレてしまったわけだが、スケジュールの関係上仕事の話は先に終わらせなければならない。
周囲の視線が非常に痛い中、俺はサクラたちにこの数日でこなして貰いたい仕事内容を伝え、纏まった書類を手渡した。
そうして説明自体は滞りなく終わり、さて仕事に戻るかと席を立つ俺を再びテマリが引きとめた。

「我愛羅、あんたサクラに言うことがあるんじゃないのかい?」
「言っておくがな、テマリ。この後仕事に戻らなくてもいいと断言してくれるのであれば俺はサクラと話をするぞ」
「何言ってんだこのバカ!ていうかサクラに何をするつもりだお前は!」

ピシャリと雷を落としてくるテマリの言葉に耳を塞ぎ、未だ居心地悪そうにしているサクラに視線を移す。
ああ、いや。でも確かに先に謝るべきことは謝っていた方がいいだろう。
だがサクラは風影である俺に遠慮してか、さっさと仕事に行きたいのか既に部屋を退室しかけている。引き止めなければ。

「サクラ」
「は、いっ?!」

トン、と彼女が出て行かないように後ろから扉を抑えれば、意図せず彼女を腕の中に閉じ込めたような格好になってしまう。
これはこれでまた誤解されるだろうなぁ、と思いはしたが、もうこの際どこまでも開き直ってやろうと俺はそのままの状態で口を開いた。

「この間はすまなかった。酔っていたとはいえ、迷惑をかけたな。本当に申し訳ない」
「へ?あ、い、いや、それはいいんだけど、あの、この体勢っ…」

狼狽えるサクラの後ろからはサクラさーん?と扉越しに彼女の名を呼ぶ医療班の声が聞こえてくる。時間がない。
俺は後ろから突き刺さってくる視線にも応えるべく、狼狽える彼女の右往左往する視線を知りながらもその耳元に唇を寄せ、今夜迎えに行くと囁いた。
いや、うん。正直言えば少しばかり意地悪したい気持ちはあった。謝る気は勿論あったが、こんな可愛い姿を見せられて悪戯心がくすぐられない男がいるなら是非会ってみたい。
そして案の定、耳から首まで赤く染めた彼女が小さく頷いた。よし、俺はこの後ノンストップで仕事をする。必ずだ。

「ではまた後でな」
「はい…」

顔を茹蛸のように赤く染めた彼女を部屋から送り出し、それから後ろから痛いほどの視線を寄越してきた姉兄に視線を移せば盛大にため息を零された。

「お前…本当女たらしもいい所だな」
「その技術どこで身に着けてきたか教えて欲しい位じゃん…」
「?何の話だ?」

首を傾ける俺に二人は再度ため息を零し、いいから仕事に戻るよ。と背を押された。
多分、勘のいい二人だから俺が彼女に対し何をしたか粗方予想が出来たのだろう。サクラの反応からしてみても。
だがもうバレてしまったのならしょうがない。変に隠そうとしたところでボロが出るだけだ。ならば俺はどこまでも開き直ろうと執務室に向かって歩き出し、溜まった書類を一瞥した。

「夜までに終わらせる。必要な資料は全て用意しろ。一分一秒たりとも無駄にはせん」
「りょーかい」

意気込む俺の後ろでは呆れた二人の声が聞こえたが、俺は気にせず筆を取った。
夜まで時間はまだある。俺はいつも以上にやる気をだし、早速一番上の書類を手に取った。




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