小説2
- ナノ -


Happy VD!





「それじゃあ次は脇差ね。まずは堀川!」
「はい!」

 うちに始めてきてくれた脇差であり、ずっと一人で担っていた炊事を手伝ってくれた最初の刀。そして今もあらゆる面で大活躍してくれている頼れる脇差を呼べば、すぐに駆け寄ってくれた。

「いつも苦労ばかりかけてごめんね。堀川が来てくれてからずっと助かってるよ。いつもありがとう」
「気にしないでください。時間を持て余すことの方が苦手ですから、むしろ助かっているのは僕の方ですよ。これからも気負わずに頼ってくださいね!」
「うん。ありがとう」

 苦手なことなんてないんじゃないかと思うぐらい多方面でお世話になっている堀川には、前田や平野と同じように手軽に食べられるスティックタイプのチョコにした。だけど中にはナッツやドライフルーツが入っているので、小腹が空いた時とか、急いでいる時に簡単に食べられるうえに腹持ちもよさそうなものを選んだ。
 堀川自身好き嫌いが殆どないし、察しがいいので『忙しい合間に食べられるように』という意図を汲み取ってくれるだろう。

 そんなわけで笑顔で受け取ってくれた堀川とハグをするが、正直堀川の方が背が高いので抱きしめられている感がすごい。というか、見た目細いけどやっぱり男士なだけあってゴツゴツとした男らしい体をしている。言うて国広だもんな。和泉守の相棒でもあるんだし、そりゃしっかりとした体してるか。

「えへへ。なんだかドキドキしちゃいますね」
「あ、堀川も? 実は私も。なんだかんだ言って初めてだもんね、ハグするの」
「ですね。貴重な思い出になりそうです」
「あはは。大げさだなぁ」

 戦場ではどうか知らないけど、私の前ではいつも爽やか好青年な堀川と笑いあう。本当はもっと話していたいけど、そうなると後がつかえるからね。一先ず体を離し、鯰尾を呼ぶ。

「じゃあ次は鯰尾!」
「はーい!」

 堀川と入れ替わるようにして前に来た鯰尾には付属されている槌で割って食べるハードチョコを選んだ。鯰尾は固い触感の食べ物を好んでいるみたいで、よくお徳用煎餅を購入している。それに槌で割らなくても一枚自体がさほど大きくないので、思いっきり噛んで割ってもいいしね。場合によっては短刀たちと一緒に割って、楽しみながら食べるという手もある。だから結構喜んでもらえるんじゃないかと思うんだが。
 まあそれはそれとして、いざハグをしようと手を伸ばしたのだが、何故か鯰尾はニヤリと笑い――

「ちょっ!?」
「へっへーん! ただのハグじゃあつまらないから、特別編でお届けしまーす!」
「うわあ!」

 受け取ったチョコを懐に収めたかと思うと、いきなりこちらの体を抱き上げその場でグルグルと回りはじめたのだ。これは流石に予想していなかった。というか、

「鯰尾意外と力あるのね?!」
「あったりまえですよ! 俺こう見えても歌仙さんぐらいなら担げますからね!」
「そこで僕の名前を出さないでくれるかな」

 脇差は私より少し身長が高いだけだから意識したことなかったけど、鯰尾は私の体を簡単に持ち上げてしまった。陸奥守は筋肉質だし、身長もあるから私を抱き上げることが出来ても「まあ、出来るとは思いました」と答えられる。だけど黙っていれば女の子にも見える鯰尾にこんな力があったとは驚きだ。
 そして歌仙さん、抱えられたことあるんですね。渋い顔していらっしゃいますよ。

「へへっ。普段は弟たちにしかしないけど、主は特別! 出血大サービスです!」
「あははっ、驚いたけど、いい思い出になったよ。ありがとう」
「えっへへへー! これからもジャンジャン鯰尾くんを頼ってくださいね! 俺、ケッコー優秀なんですから!」
「うん。頼りにしてるよ」

 実際、物吉が契約してくれなければ未だに脇差は二人しかいなかった。あらゆる戦場に出向くことが出来るうえ、刀種問わず連携が取れる脇差は貴重だ。なにより鯰尾は良くも悪くもムードメーカーであり、我が本丸の粟田口の中ではお兄ちゃん枠でもある。だから改めて頭を撫でてやれば、鯰尾は照れくさそうに笑ってから「チョコ、おいしくいただきます!」と言って踵を返した。

「それじゃあ次は、物吉くん!」
「はい!」

 物吉は契約する前からうちで預かっていたから顔見知りでもあるけど、契約をしてからはまだ数ヶ月しか経っていない。だからまだお互いのことはよく知らないんだけど、それでも他所の本丸で同個体と接したことがあるから大体の性格は把握できている。
 いつも穏やかで、柔らかい笑みを浮かべている彼は完全に癒し枠である。それに燭台切や歌仙と一緒になって本丸の食材を管理してくれていることを最近知った。そんな縁の下の力持ちにはドライフルーツにチョコが浸されてある、ちょっとお洒落なチョコを選んだ。特にオレンジは物吉のイメージカラーの黄色にも近いしね。
 包装紙も華やかなデザインなので、物吉は「綺麗ですね」と言って微笑んでくれる。

「ありがとうございます、主様。身に余る光栄です」
「いやいやいや、そんな大げさな。ほんの気持ちですよ」
「いいえ。それでも……。嬉しいです」

 どうしてここまで喜んでくれるのかな。と考えた時、ふと「前の主」はこういうことをするタイプじゃなかったからかな。と思った。彼を顕現させた審神者は男性だったし、話を聞いた限りじゃ見目の整った男士には後ろ暗い感情を抱えていたみたいだし。彼は何も言わなかったけど、冷遇されたことがあるのかもしれない。
 その傷を埋めるわけじゃないけど、少しでも私の気持ちが届けば嬉しいな。と思う。

「物吉くん。うちは脇差が少ないからさ、色んな面で仕事をお願いすると思う。だから覚悟しておくように!」
「はい! むしろ頼ってもらえると嬉しいです! 楽しみにしていますね!」

 お仕事増やすよ、って宣言したのに何故喜ばれるのか。君、さては長谷部と似た感じか? 若干頬が引き攣ったけど、ただの社交辞令だろう。とりあえず物吉とも軽くハグをすれば、本人は「ボクの方が幸運を分け与えてもらった気がします」とまるで恋愛ゲームのような台詞を零した。
 あぶねえ。私が恋愛に疎いうえ結婚した身でよかったよ。じゃなかったらうっかりコロっといってたかもしれない。……いや、やっぱりいかんかったかも。神様に恋するとか罰当たりじゃん。って気持ち未だにあるからな。うん。

「それじゃあ今度は打刀ね。まずは、長谷部!」

 だけどここで元気よく「はい!」と返事が来ると思っていたのだが、何故か打刀たちは「え?」という顔をする。だから「どうしたの?」と首を傾ければ、先ほど呼ばれた長谷部がおずおずと近づいてきた。

「あの、本当に俺からでよろしいのですか? 陸奥守の分は……」
「あ。そういうこと?」

 どうやら「最初に呼ばれる打刀は夫であり初期刀でもある陸奥守だろう」と思っていたらしい。だけど流石にねえ? 旦那様の分を皆と同じタイミングでは渡さんよ。

「気遣ってくれてありがとう。でも、むっちゃんには朝一で渡したから」
「ほにほに。夫やきの。一番乗りぜよ」
「はっ。心配して損した」

 ケッ、と言わんばかりの厳めしい表情を浮かべる長谷部だが、私たちを気遣ってくれたことは一目瞭然なので手招きしてから頭を撫でてやる。

「ありがとう、長谷部。気にかけてくれて。嬉しかったよ」
「は、い、いえ! とんでもない……!」
「あはは。はい。これがチョコレートね。長谷部はあんまり甘いもの好きじゃないでしょ? だからお酒が入っているのにしたんだけど、私飲めないからさ。口に合わなかったらごめんね?」
「滅相もない! ありがたく頂戴いたします!」

 長谷部はミルクチョコやホワイトチョコといった、後を引くような甘さは好んでいない様子だった。和菓子は甘くても平気みたいだけど、洋菓子は種類を選ぶのかもしれない。
 だからビターやブラックのチョコに焼酎が入っているチョコを選んだ。シックな装いの箱に手紙を付けたものを渡せば、しっかりと両手で受け取った後、感極まっているかのように下唇を噛んだ。流石に「大袈裟だなぁ」とは思うが、喜んでもらえて嬉しい気持ちもある。
 そうして照れた様子の長谷部に「ハグするよー」と両腕を伸ばして近づけば、意外と初心らしい。顔を真っ赤にして固まってしまった。

「きょ、恐悦至極……!」
「大袈裟ぁ」

 だけど抱きしめ返すのは恥ずかしいのか、体を屈めるだけで抱きしめ返しては来ない。だからちょっとしたサービスで背中を軽く叩いたあと、頭を撫でれば案の定桜が舞った。

「主、過剰供給だと思うよ」
「そんなに?!」

 小夜からのストップがかかったので慌てて身を離せば、長谷部は赤ら顔のままふらふらとした足取りで下がっていった。
 ……うむ。本当に過剰供給だったかもしれない。どうしよう。手紙読んだあと気絶とかしないよね? 不安になってきた。

「えー、気を取り直して、加州〜」
「はーい! はいはいはーい!」
「わあ、元気」

 まるで散歩に行く犬のように挙手をしながら前に来た加州に笑いそうになる。そんな加州には可愛い系のチョコレートを選んだ。一個ずつカラフルな包装紙に包まれたトリュフで、フレーバーもそれぞれ違うから見た目も味も楽しめる。包装紙も綺麗な赤色をしているので「加州に似合うなぁ」と一目見て決めたので、綺麗に塗りなおされた赤い爪が印象的な手にそれを乗せた。

「いつもありがとう。加州は色んなことで手助けしてくれるし、気遣ってくれるから本当に助かってる。これからも沢山話して、おいしいものも一緒に食べに行こうね」
「もっちろん! 約束だからね、主!」

 少し泣きそうな顔をしていたけど、それでも安心させるように腕を回して背中を叩けば感極まった様子で抱き返される。
 うーん。なんだか迷子になった我が子と再会した母親のような気分だ。実際の年齢を考えるとこっちは赤子レベルなんだけどさ。

「俺、頑張るから!」
「うん。でも、ほどほどにね? 加州が倒れたら、私が困る」
「だーい丈夫! 俺のこと信じてよ。ね?」
「分かった。それじゃあ、無理をしないのが前提ということで。約束ね?」
「オッケー!」

 やる気スイッチがオンになったどころか限界点を突破したかのような様子にはちょっとハラハラするが、疑ってもしょうがない。むしろこちらの心情には敏感な彼のことだから、本当にヤバイ時以外では無理を押し通すことはしないだろう。それにもし無茶をしようとしても周りが止めてくれるはずだからね。

「次は歌仙さん」
「こほん。僕はここだよ、主」

 ちょっと緊張していたのだろう。咳払いした歌仙に笑みが浮かんでくるが、揶揄うことはせずに用意したものを渡す。

「歌仙さんにはちょっと変わり種を用意してみたんだ」
「変わり種?」
「うん。歌仙さん、チョコよりも和菓子の方が好きでしょ? だから私が気に入っている和菓子店のお菓子にしたの。甘さ控えめでさっぱりしてるから、冷やして食べてね」

 歌仙はあまり洋菓子を好んではいない。食べられないわけじゃないし、食べないわけでもないけど、ケーキよりもどら焼きとかもなかの方が好きだ。パッと見ただけでも分かる顔をして食べてるから、流石に気づく。
 チョコもそうだ。短刀たちはチョコパイとかポッキーとか美味しそうに食べるけど、歌仙は「雅さに欠ける」と微妙な表情を浮かべている。多分舌が繊細なんだろう。だらか抹茶やあんこにも拘っている、お上品な甘さが売りの和菓子店のあんみつを選んだ。

「僕のために、わざわざ……?」
「そりゃそうでしょ。ちゃんと相手に合わせたもの選びたいじゃん」

 むしろ「感謝の気持ち」だからこそ適当には選べない。本命だとか義理だとか、そんなこと以前の問題である。

「それに、あんみつなら好きな器に盛れるでしょ? おいしいものをさ、味覚以外のところでも楽しんで、そのうえでもっと美味しくいただけるなら最高じゃない?」

 茶器を初め、骨董品に筆や反物と赴きあるものが好きな歌仙だ。ちょっとしたおやつでも、彼が当番の時は器から拘っているからすぐに分かる。だからこそ『自分が好きな器に美味しいものを盛って食べることの喜び』を知っている彼を信じて選んだのだが、こちらが想像していた以上に刺さったらしい。歌仙は「主……!」と頬を染めて桜を降らせてくる。

「ありがとう……! 大事にいただくよ!」
「そう言ってもらえると嬉しいです」

 色々と助けてもらっている身だからね。こういう時だけでも気持ちに寄り添ってあげたい。
 それからまだ感極まっている様子の彼に抱き着き、背中を軽く叩けば、ハッとしたような声を出した後そっと背中に手が回された。打刀の中では力が強い刀だけど、こういう時は優しいんだよね。本当、素敵な神様だ。

「それじゃあ、次は山姥切!」
「ああ」

 長谷部に続き桜を舞わせている歌仙の次に呼んだのは山姥切だ。彼には最初の怪異の時に助けてもらった恩がある。それに、最近気づいたのだがうちの山姥切は他所と違って手先が器用みたいだ。修行に行く前から時々作ってくれていた和菓子作りが更にうまくなっている。
 そんなわけで彼にもチョコレートではなく、歌仙同様和菓子店で購入した練りきりを準備していた。

「山姥切にもチョコじゃなくて和菓子を用意したんだけど、チョコの方がよかった?」
「いや。和菓子は好きだ」
「よかった。ここ私のお気に入りなんだよね。きっと山姥切の口にも合うと思う」

 歌仙と山姥切以外にも和菓子を用意した刀は多い。ただ山姥切は味云々と言うよりは和菓子の見目を気にしている様子があるから、参考になれば。という気持ちで選んだ。実は堀川がこっそり教えてくれたんだよね。うちで和菓子を作るようになってから造形に関心を持ち始めた、って。
 だから味も見た目も一押しのお店で購入した箱を渡せば、いつもより柔らかな声でお礼を言われた。

「ありがとう、主。この菓子はちゃんと味わって食べる」
「そう言ってもらえると嬉しいな。よかったら堀川とシェアしてみて」
「ああ。そうしよう」

 軽い言葉の押収の後、両腕を伸ばせば思ったより力強い腕に抱きしめられる。わお。山姥切さん見た目によらず力が強い。
 だけど力は強くとも触れていた時間は短く、すぐに離れて行った。
 山姥切は修行に出てから卑屈さが抜け、代わりにワイルドさが増した気がする。男前になったなぁ。とちょっとだけ微笑ましい気持ちになってしまった。

「じゃあ、次は兼さん!」
「おうよ!」

 和泉守もソワソワが隠せなかった一人だ。実際名前を呼ぶまでずっとそんな感じだったからね。微笑ましく思いながらも見て見ぬふりをしていた時間も終わりだ。

「はい。和泉守もいつもありがとう。これからも頼りにしています」
「おうともよ! 大船に乗った気持ちでいな!」

 ニッコニッコな和泉守、刀剣男士の中では最年少というだけあって喜びが隠しきれていない。当然堀川もニコニコである。
 なんだかこのコンビって頼りになるのに可愛いんだよなぁ。と思いつつ、和泉守用に選んだ『恐竜の化石』を発掘するチョコを渡す。なんだかんだ言って和泉守こういうの好きなんだよね。もし細かい作業がイヤになっても堀川や歌仙が手伝ってくれるだろう。一緒に楽しんでくれてもいいしね。
 そんなことを考えつつも、ハグをしようと腕を伸ばしたのだが。

「ぎゃあ! デジャブ!!」
「はっはー! どーだ! 俺だってあんたぐらい、かる〜く持てるんだぜ!」

 まさかの鯰尾と同じパターン!
 いきなり抱きかかえられ驚くが、やっぱり鯰尾より体格もしっかりしているし、身長も高いから安定感がすごい。あと「絶対落とさねえからな!」という自信が全身から伝わってくる。

「そりゃすごいけどさ! 正直目線の位置が高くて慣れません!」
「普段この視界にいねえんだから、しっかり堪能しておけよ」
「このやろお〜」

 確かに身長百五十しかないけどさ! 現代人は高い建物からの景色に慣れているから色んなものを見下ろすことには慣れている。だけど人に抱き上げられ、そこから何かを見下ろすのは子供の時以来なので逆に新鮮な気持ちになった。

「正直私のこと抱き上げられるのむっちゃんと和泉守と同田貫ぐらいしかいないと思ってたからビックリした」
「いや、流石に短刀以外なら抱えられるだろ」

 和泉守は簡単に言ってのけるけどなあ! 私の重量を舐めるんじゃないぞ! そこいらの女性に比べたら圧倒的なんだからな!!

「というわけで次はたぬさん!」
「どういうわけだよ。まあいいけどよ」

 和泉守が床に下ろしてくれたけど、これ以上墓穴を掘らないためにすぐに同田貫を呼べば呆れた表情を浮かべながら近づいてくる。和泉守も私が逃げたことを察したのだろう。笑いながら下がって行った。

「たぬさんにはお酒のケーキ用意したよ。甘いのよりそっちの方がいいでしょ?」
「おう。食えりゃあなんでもいいが、酒入りの方が嬉しいぜ」
「よかった」

 同田貫は食に拘りがないから、甘いものも辛いものも気にせず何でも食べる。流石に極甘な食べ物は顔を顰めるけど、チョコレートぐらいなら普通に食べる。でも「腹が膨れねえ」と言われそうだったので、見た目はカステラにそっくりな洋酒のケーキを選んだ。だけど何故か渡した後ニヤリと笑われる。

「で? あんたは抱きしめられるより持ち上げられる方がいいんだろ?」
「そんなこと言ってませんけど?! って、ぎゃあ!」

 何がどうしてそうなった?! と突っ込む前に抱き上げられて悲鳴を上げる。わしゃ荷物か!

「なんだ、思ってたより重くねえな」
「それどういう意味?!」

 嬉しいけどなんか複雑!
 あんまりな言いように突っ込まざるを得なかったけど、流石同田貫。和泉守同様がっしりしているから安定感がすごい。

「たぬさんすごいね。絶対落とされない、って安心感がある」
「そりゃあな。あんたを落とせば俺の首が落ちらあ」
「そんなに?!」

 突っ込みはしたものの、確かに怒りそうな刀たちがひいふうみい……。やめよ。指が足りんわ。
 そんなくだらないことを考えている間にも同田貫が床に下ろしてくれたので、安心して両足で立った。

「貴重な体験をありがとう」
「おう。抱えられたかったらいつでも言いな」
「あはは、ありがと」

 抱えられたいなんて子供じゃないんだから思う日は来ないだろうけど、それでも気遣ってくれる彼に笑みを返す。
 ふざけているように見えるけど、彼らは彼らなりに真剣なんだよね。そういうところは愛おしいなぁ。と思う。

「じゃあ次は、鳴狐!」
「主殿ー! 是非わたくしの毛並みをご堪能くだされー!」
「うおっ」

 本体も小さく返事をしてくれた気がするが、お供の狐の声の方が大きくて聞こえなかった。それでも突撃した小さな狐の頭を撫でれば「どうだ」と言わんばかりに見上げられたので答えてやる。

「いつもよりサラツヤだね! 触り心地最高!」
「そうでしょうそうでしょう! 鳴狐にブラッシングをして頂いたのです!」
「そっかぁ。よかったねぇ」

 かく言う本体は相変わらず無言だが、満足そうにしている気がする。いつまでも狐を撫でていたい気持ちはあるものの、心を鬼にして手を離し、鳴狐とお供の狐用のチョコとおやつを渡した。ちなみに中身は一口サイズのバウムケーキにチョコレートが掛かっているタイプだ。これなら仮面を外さなくても食べやすいだろうと思ってね。

「はい。こっちは鳴狐の分ね。で、こっちはお供の狐用だよ」
「ありがとう」
「わたくしにもあるのですか?!」
「当然だよ〜」

 一人と一匹で一振り扱いではあるが、やはり個々に用意するのが当然だろう。それに鳴狐はうちで二番目に顕現してくれた打刀だからね。感謝の気持ちは大目に込めているのです。

「ごめんね、呼ぶの遅くなっちゃって。でも先にソワソワしている刀たちから渡した方がいいかな、と思ってさ」
「平気」
「なるほど。主殿のお気持ち、お察しいたします」

 特に長谷部と和泉守は分かりやすかったから、二人には早めに渡そうと思っていたのだ。あとは初期刀組も、後回しにすると厄介な気がして早々と渡そうと決めていた。結果として鳴狐が後になってしまったのだが、本人はちっとも気にせずチョコを受け取っている。こういうおおらかさが鳴狐のいいところであり、昔から助けられている部分でもある。

「じゃあ鳴狐とお供の狐もハグしようか」
「うん」
「なにやら照れますなぁ〜」

 お供の狐にも恥じらいはあるらしい。どこか照れた様子の彼を抱き上げれば、本体の腕が回って優しく包み込まれた。おお、思った以上に触れ方が紳士的でちょっと驚き。

「改めて、二人共。これからもよろしくね」
「うん。任せて」
「はい! お任せあれ!」
「フフッ。頼りにしてるよ」

 紳士的だった腕から解放されると同時にお供の狐も地面に下ろす。その際ヒラヒラと桜が舞ったので、鳴狐もバレンタイン楽しみにしてたんだなぁ。とほっこりした。

「次はー、大倶利伽羅!」
「ああ」

 いつもと変わらぬシンプルな装いの大倶利伽羅だが、彼にはいつも花を貰っているからちょっと奮発した。

「実は中に入ってるチョコの数、一番多いのは大倶利伽羅なんだ。皆には内緒にしてね」
「……分かった」

 ちなみにそのチョコレートは動物をデフォルメキャラにした可愛いやつだ。果たして大倶利伽羅がどんな顔でそれを食べるのか気になるが、首を突っ込むとロクなことにならないと思うので横に長いタイプの箱をそっと渡した。
 大倶利伽羅は一瞬間を置いたが素直に受け取ると、片腕で私の腰に腕を回し抱き寄せてくる。

「わお! ワイルド!」
「うるさい」
「あははっ。でも大倶利伽羅らしいや。格好いいねえ」

 見た目もそうだが行動も男らしい大倶利伽羅だ。ハグの仕方も男らしいなぁ。と思って褒めれば、何故か溜息を吐かれた。

「陸奥守の苦労が偲ばれるな」
「え? どういうこと?」
「そのままの意味だ」
「What?」

 理解出来なかったけど、大倶利伽羅はそれ以上何も言わずに腕を離して離れていく。だけどその背中に「これからもよろしくね!」と声をかければ軽く手を振られた。去る姿も格好いい刀である。

「それじゃあ次は、宗三さん」
「はい。こちらに」

 しずしずと近寄ってきた宗三は、今日も相変わらずの気だるげ美人だ。口を開けば毒舌家なんだけどね。見た目詐欺だわぁ〜。と思いつつも小夜に用意したチョコと同じメーカーが出している、生チョコが入った箱を渡す。ちなみに洋酒の香りが強めなので、隠れ酒豪の宗三は喜んでくれるだろう。

「いつもご心配おかけしてすみません。そしてこれからもよろしくお願いします」
「ええ。承りました。曲がりなりにも主ですからね。命令には従いますよ」
「命令て」
「兄様……」

 相変わらずひねくれた発言をする宗三ではあるが、ちゃんと両手で丁寧に受け取ってくれるところに品位を感じる。だけどハグをするのには抵抗感があるのか、眉間に皺を寄せながら見下ろしてきた。

「まったく、あなたという方は。どうしてこうも軽率なんでしょうかね」
「え? ダメ?」
「相手が人間でなくとも夫がいる身なのですから、もう少し考えて発言なさい」
「うい」

 ド正論にぐうの音も出せずに頷けば、宗三は疲れたように息を吐き出した後そっと背中に手を回してきた。

「言っておきますが、僕も男なんですからね。そこを忘れないように」
「確かに宗三さんは綺麗だけど、女性だと思ったことはないですよ?」
「だったらもう少し意識しなさい」
「あいた」

 軽く触れあっていた体が離れたかと思うと、軽くデコピンをされてしまう。でもそこまで威力はなかったから加減してくれたんだろうな。優しい神様である。

「じゃあ、最後は亀甲さん」
「はい! ここだよ、ご主人様」

 亀甲は……なんというか、色んな意味で特殊というか、なかなか性格に慣れない刀だけど根は素直な神様だな、と思っている。現にキラキラとした瞳はどこか長谷部と似通っており、犬みたいだ。
 そんな彼には中にキャラメルが入っているコロンとしたチョコレートを選んだ。チョコ自体はカカオ含有量が多いから甘さ控えめなんだけど、その分キャラメルで甘さをカバーしている。甘いと苦いで味覚的な違いを楽しめるかなぁ、と思って購入してみた。……なんか、喜びそうじゃんね。そういうの。

「お互いまだ知らないことが多いから、これから少しずつ覚えていけたらいいな。と思います。改めて、よろしくね」
「仰せの通りに。ご主人様の期待に応えられるよう、頑張るよ」

 頬を染め、どこかうっとりとしたような笑みを向けられ「おおう」となる。すごい。キラキラが飛んでくる。
 瞬きの回数を増やしながらも「おいでー」と手招きすれば何故か跪いてきた。え? なんで?

「ご主人様からご褒美を与えられるのに、不敬があってはいけないだろう?」
「そういう問題?」

 よく分らんけど亀甲がこれでいいって言うならいいか。深く考えたところで理解できる気もしないし。だからそのまま軽くハグをしてポンポンと背中を叩けば、大袈裟なほどに細身なようでしっかりとした体が震えた。バイブレーション機能でも搭載してんのか?

「はあ……! これが、至福の喜び……!」
「これはセーフと言ってもいいのかな?」
「わしの中ではアウトじゃ」
「うーん……。でも主に手は出していないから、なんとも……」

 両サイドの保護者に尋ねれば、一方はアウトで一方はグレーと来た。でも実際亀甲は長谷部同様こちらに指一本触れていない。だけどビクビクと震える姿はなんとなく目に毒なので視線を逸らせば、すぐに歌仙と物吉が回収してくれた。ありがとう。バンされずに済んでよかったわ。

「えーっと、それじゃあ次は太刀の皆ね。まずは三日月さん」
「おお、俺からか。はっはっはっ。皆の者すまんな」
「いいから早く行け」

 朗らかに笑う三日月の背を鶴丸が軽く押し出す。だけど三日月は気にすることなく笑顔で近づいてきたので、こちらも和洋折衷となっているチョコ大福が入った箱を渡す。

「はい。三日月さん。色々と面倒ばかりかけていますが、これからもよろしくお願いします」
「うむ。ありがたく受け取ろう。それから、そなたを守るのは面倒ではないぞ。むしろそのために戻ってきたのだから気にするな」
「ありがとうございます」

 面布を含め、色んな方面で手助けしてくれているし、怪異に会うたびに助けに来てくれた。そんな頼りになる神様に改めて頭を下げれば、こちらも春の陽気のようなあたたかな笑みを返される。

「では、俺も主に触れて良いのだな?」
「はい。どうぞ」

 身長差があるからすっぽりと懐に収まってしまうのが何とも恥ずかしいが、三日月さんは「よしよし」とおじいちゃんらしい台詞を口にしながら優しく抱きしめ、頭を撫でてくれた。

「うむ。触られるのも良いが、触るのも良いな」
「そうですか?」
「ああ。得難い時間であった」
「それはよかったです」

 ニコニコと、まさに『ご満悦』と言わんばかりの表情を浮かべた三日月にこちらも安堵する。だけどいつまでも抱きしめられていたら問題になるので、陸奥守がそっと三日月の肩を押した。

「それじゃあ次は、鶴丸!」
「おっ。待っていたぞ、主!」

 鶴丸もソワソワしていた刀の一人だ。ちなみに鶴丸に用意したのは、見た目は焼き魚そっくりに作られた特殊加工されたチョコレートだ。カタログで見かけた時は「これ絶対に鶴丸に買おう!」と思ったので、驚きを愛する彼が気に入ってくれたら嬉しいなぁ。でも反応が見られないのが残念だ。是非驚いて欲しい。

「鶴丸は色んな意味で年齢にそぐわないことするけど、何だかんだ言って手助けしてくれているから助かっています。いつもありがとう」
「ははは。君に驚きを提供するのが俺の役目だと思っているからな」
「いや戦ってもらうのが本業じゃーい!」
「はははは! そういえばそうだったな!」

 分かっててボケてるだろこのおじいちゃん。まあいいや。鶴丸こういうとこあるし。今更だわ。
 呆れつつもビックリチョコが入った細長い箱を渡せば、鶴丸は「さて、どんな驚きを用意してくれたのかな?」と笑いながら受け取った。
 だがここで驚きを提供する側から、一気に提供される側へとチェンジする。

「さて! それじゃあ俺も君に驚きを与えようじゃないか!」
「え? ちょ、何する気?!」
「ん? 俺だって君を抱えられるからな。お姫様抱っこでもしてやろうかと思って」
「ぎゃー! やめて怖い! 折れたらどうすんの!」

 何故かハグではなく抱き上げようとしてきた鶴丸に悲鳴を上げ、咄嗟に陸奥守の後ろに隠れたら何故かショックを受けたような声が飛んでくる。

「主、流石に傷つくぞ! 俺だって太刀なんだから主の一人ぐらい抱えられるさ」
「太刀って言っても鶴丸細いじゃん! せめて光忠ぐらい筋肉つけてから言って!」
「主の基準って僕なの? これ喜んでいいところ?」

 光忠から疑問符が飛ばされるが、ジリジリと近寄ってくる鶴丸に意識を向けているため返事が出来ない。

「大丈夫だ! 変なところ触ったりしないから!」
「そういう問題ちゃうわ! 鶴丸の腕、っていうか肩とか腰とかからぽっきり逝ったらイヤだから逃げてんの! もう二度と鶴丸が折れるところなんて見たくないんだから!」
「心配してくれるのは嬉しいが、その想像はどうかと思うぞ! ガンプラのように脆くはないから安心してくれ!」
「なんでガンプラ知っとるんじゃい!」

 普通にハグをしてくれたらいいのに、何故か拘る鶴丸に「本当に何なのさ」と訝る気持ちが湧いてくる。だが鶴丸もこのままだと進まないと思ったのだろう。「よし分かった!」と声を上げると、光忠の肩をポンと叩いた。

「俺が光坊を持ち上げることが出来たら問題ないだろう?」
「だからなんで基準が僕なの?」
「光忠より私の方が重いかもしれないじゃん」
「「それはない」」

 こちらは割と本気で「光忠より重いかもしれない」とデブらしい危機感を抱いていたというのに、光忠と陸奥守に同時に否定された。喜べばいいのか、それとも「なんで言い切れるのか」と問い詰めた方がいいのか。どちらにせよ終わらない押し問答になりそうなので口を噤めば、鶴丸は光忠に「協力してくれよ」と笑みを向けていた。

「まったく……。重傷でもないのに抱き上げられるのはイヤだけど、今回だけは協力してあげるよ。だから格好いい姿を見せてよね、鶴さん」
「よしきた! 見てろよ、主!」
「ええ……」

 やる気満々の鶴丸だが、正直心配だ。咄嗟に光忠の隣に立っていた大倶利伽羅へと視線を投げれば、気づいた彼は「好きにさせておけ」と言わんばかりに肩を竦めた。信頼しているのか単に面倒なのか。よくわからんなぁ。
 なんて思っている間に鶴丸は光忠の背中と膝裏に腕を当て、気合の籠った声を上げてその長躯を抱き上げた。

「どうだ!」
「う、うわあ……! 光忠が横抱きされてる……!」
「あんまり見ないで欲しいなぁ……」
「無様だな」
「酷いよ伽羅ちゃん!」

 大倶利伽羅の辛辣な突っ込みが入るが、こちらとしては結構驚きの光景だ。色んな意味で。

「えっと、大倶利伽羅後ろから支えるの手伝ったりしてないよね?」
「そんなに疑うか?! ほら、見ろ! こうやって回ることだって出来るぞ?!」
「わあ〜。楽しくな〜い」

 光忠の顔がどんどん虚無に染められていく。これ以上は伊達男たる彼にとっては苦痛というか屈辱だろうから「分かったよ」と鶴丸の膂力を信じれば、本人は「だから言っただろう」と言いながら光忠を下した。

「さ、それじゃあ主の番だ。むしろ光坊の後だから軽く感じるだろうな」
「一言余計だよ、鶴さん」
「あはは……」

 苦笑いしつつも近づいてきた鶴丸の腕を受け入れれば、この細い体躯のどこから力が出るのか。簡単に抱き上げられて「ひぎゃあ!」と情けない悲鳴を上げてしまう。

「思ったより力強いのが逆に怖い!」
「どういう意味だ?!」

 非力に見えるけど、鶴丸って案外力持ちなんだなぁ。確かにこれは驚きである。だから素直に「驚きすぎてどうにかなりそうだから下ろして」と伝えれば、どこか残念そうな顔をされた。

「このまま本丸をひとっ走りしようかと思ったんだが……」
「やめて! そんな驚きはいらん!」
「ははは! じゃあ今日は他の驚きを提供するとしよう!」
「お願いだから大人しくしててくれませんかねえ?!」

 相変わらずな鶴丸に、こちらも相変わらずの反応を示せば機嫌よさそうに笑われる。それでも流石に本丸一周だけは避けられたので、床に下ろされると同時にほっと息を吐き出した。

「えーっと、それじゃあ次は鶯丸さん」
「おお、俺の番か。待っていたぞ、主」
「遅くなってすみません。いつも美味しいお茶を淹れてくださってありがとうございます。鶯丸さんと飲むお茶は美味しいから、これからも楽しみにしてますね」
「ああ。ありがとう、主。君の心遣いごと、しっかりと味わおう」

 なんかちょっと含みのある言い方に聞こえなくもないけど、お菓子を受け取る表情が嬉しそうだからいいか。それに鶯丸に用意したのは抹茶とほうじ茶の味がするラングドシャだ。クッキーはサクっとしているけど、中のチョコレートはパキっといい音がする、お上品な甘さのお菓子である。チョコよりはお茶に合いそうだったから選んだんだけど、気に入ってくれるかなぁ?

「さて。俺は鶴丸とは違うのでな。普通に抱きしめるぞ」
「はい。よろしくお願いします」

 よろしくお願いします、って言うのも変な話だけど、両手を伸ばせば思ったよりも優しく抱きしめられる。だけどそっと回っていたはずの腕に急に力が込められたかと思うと、鼻先が頭に埋められた。

「にゅあ?!」
「フッ、たまには驚きを与える側になるのもいいものだな」
「不意打ち!」

 まさかの驚き要因だった! そりゃあ鶯丸ののんびりとしたところには常に驚かされているので「意外!」と言うわけではないけれども。それでも予想外な行動に驚いているうちに鶯丸は体を離した。

「ふぅー。じゃあ、次は大典太さんで!」
「ああ……。俺にもあるのか」
「ありますよ! 当り前じゃないですか! あと大典太さんは強制的にハグします!」
「何故?!」

 何故自分の分は除外されていると思ったのか。素で驚かれたことに対する意趣返しとして「強制的にハグしちゃるわい!」と口にすればギョッとした顔をされる。だけど「強制」しないと「俺に触るな……」って逃げようとする可能性があるからさ。こうなりゃ自分から行っちゃる。

「大典太さんには本当、私も家族もお世話になっておりますので。感謝の気持ちを込めております」
「そこまで畏まらなくてもいいんだが……」
「いえいえ! というわけで感謝の気持ち多めチョコです! そんで不意打ちハグじゃ!」
「ぬおっ!」

 大典太の大きな手に、隠れ酒豪な彼のために選んだ洋酒入りのフォンダンショコラが入った箱を置くと同時に懐に飛び込む。途端に立派な体躯が大袈裟なほどに震えたが、それでも突飛ばさない辺り優しいなぁ、と思う。それにおずおずと伸ばされた手が、それこそ羽が軽く触れたみたいな力加減で頭を一撫でしてきたので自然と笑みが浮かんだ。

「へへへ。なんだか私の方が元気貰った感じになっちゃいましたね」
「いや……。そんなことはない」

 大典太は視線を逸らしつつもそう答え、こちらが体を離すと同時にするりと身を引いた。若干頬が赤いから照れてるんだろうな。嫌がられなくてよかったよ。

「次は江雪さん!」
「はい。ここに」
「江雪さんもいつもありがとうございます。特に小夜くんには常日頃からお世話になりっぱなしですみません」
「ふっ。よいのですよ。あなたの傍にいることを望んでいるのは、他でもない小夜自身なのですから」

 穏やかな声に見合った、柔らかな笑みを返されてちょっと照れる。それでも用意したお菓子を渡せば小夜や宗三同様丁寧な仕草で受け取り、懐に仕舞ってくれた。

「ありがたく頂戴致します。小夜と宗三と共に食べても?」
「はい! そう仰られると思っていたので、中身はそれぞれ別のものにしているんです。是非三人でシェアしてください」
「フフッ。私の考えはお見通しでしたか。それでは、ありがたく」

 左文字兄弟にあげたチョコはメーカーこそ一緒だが、中身は全く違う。多分三人で食べ比べっていうか、分け合うと言うか、シェアするんじゃないかな。初めからそう考えて選んでいたから、読みが当たって嬉しい。

「それじゃあ江雪さんにも、強制ハグです」
「おや。強制なのですか?」
「はい。逃げられたら困るというか、私が悲しいので」
「逃げませんよ。私はあなたの刀ですから」

 大典太同様、自分から「そいや!」と懐に飛び込めば優しく受け止めてくれる。支えてくれる腕に力がこもっていないのは、普段小夜とか宗三を抱きしめているからだろうか。いや、宗三が素直に抱きしめられているのかは知らないけど。けど小夜のことは割と抱きしめてそうだな。と個人的に思っている。

「宗三さんもでしたけど、江雪さんもいい匂いがします」
「ええ。宗三が香を焚いておりましたので。匂いが移ったのでしょう。好ましい香りですか?」
「はい! めっちゃリラックスできます!」

 森林、とでもいうのだろうか。あまり人工的に感じない素朴な香りは嗅いでいてほっとする。だから「好きな香りですよ」と伝えれば、穏やかな視線が落ちてきた。

「そうですか。宗三にも伝えておきましょう」
「はい。よろしくお願いします」

 存外居心地のよかった江雪の手から離れ、まだかまだかと呼ばれることを待っている一振りの名前を呼ぶ。

「次は光忠! はい! いつもありがとー! 光忠がいてくれなかったら正直困るから、絶対に折れないでね!」
「あはは。僕も折れたくないよ。でも、ありがとう。主」

 光忠は歌仙同様舌が繊細だけど、和洋中どれもいけるオールマイティーな刀だ。だから何を贈るかものすっごく悩んだんだけど、見た目が華やかなチョコを選んだ。一枚一枚はポテトチップスみたいに薄いんだけど、フレーバーがたくさんあって、それを花びらに見立ててカラフルなバラに仕立て上げたものだ。これなら見た目も味も楽しめるかな、と思ってさ。

「正直堀川と光忠と歌仙さんいなかったら今でも厨に一人で立ってた可能性あるしね〜。そこを含めて本当に感謝してる。勿論、戦場でもね」

 特に光忠は最初の太刀だったから、特がついてからはよく殿を務めてくれた。それだけ多くの仲間を守ってきてくれた彼に改めて「皆を守ってくれてありがとう」と続ければ、光忠も笑顔を返してくれた。

「こちらこそ、主がいてくれるから頑張れるんだよ。僕たちを大事にしてくれて、ありがとう」

 うわあ。光忠の蕩けるような笑顔で審神者溶けそう。
 思わず「まぶしっ」と言いそうになったのを寸でのところで堪えれば、光忠が「抱きしめてもいい?」と照れた様子で尋ねてきたので「来いや!」と言わんばかりに両腕を広げた。

「こうして主に触れられる日が来るとは思ってもみなかったよ」
「あはは。言われてみればそうかも」
「うん。今、すごく幸せ」

 わあ。蕩ける笑顔に続いて鼓膜から入って骨まで蕩けそうなお声でそんなこと言われたら審神者溶けちゃう。
 思わずドキドキしたけど、どうにか人体を保ったまま体を離せばもう一度お礼を言われた。お礼を言うのはこっちな気がするんだけど、まあいいか。

「それじゃあ次は、小烏丸さん」
「うむ? 父にもあるのか?」
「ありますとも!」

 直接会話をした回数は少ないものの、それでも刀だけでなく私のことも見守ってくれていることは分かっている。歴史があるからこそ知識も深く、疑問を覚えて尋ねてみるとすぐに答えが返ってくるあたり本当にすごいと思うし尊敬もしている。
 そんな彼にも感謝の込めた和菓子――どら焼きとバレンタイン限定のミニ羊羹が入った箱を差し出せば、どこか楽しそうな笑みを浮かべながら受け取ってくれた。

「ほほほ。よもや父にも贈り物があるとはな」
「除け者になんてしませんよ。未熟者な審神者ですが、改めて、これからもよろしくお願いしますね」
「うむ。任されよう。では、親愛の証を交わすとしようか」
「はい!」

 この本丸で鶴丸以上に細い刀ではあるが、流石『刀剣の父』と言うだけあって抱きしめられた時の安心感が違う。うっかりすると全部ゆだねてしまいそうだ。これが長く生きている神様の懐かぁ……。貴重な体験だから忘れんどこ。

「えっと、それじゃあ小烏丸さんの次は、髭切さんです」
「お。ようやく僕の番だね。待ってたよ」
「お待たせいたしました」

 膝丸がいないからアレだけど、髭切が契約をしてくれただけでも喜ばしいことだ。そんな彼も例に漏れずかなり自由で、よく庭園や離れの近くを散歩している。実際に見たことはないけど、時折執務室に顔を出して「散歩してきたよ」と謎の報告をしてくるから間違っていないだろう。
 そんな彼にはショコラが挟まれたマカロンを用意した。これなら手袋を外さなくても食べられるし、食事に対して興味が薄い彼も多少は気が惹かれないかな。と思って。フレーバーは色々あったので、ベリー系を始めとした人気の者を幾つか選んで詰めてもらった。
 髭切はリボンが巻かれた重厚な作りの箱を受け取ると、何故か数度瞬いた。

「考えてみれば、持ち主から何かを貰うなんて初めてだ。なんだか変な感じだよ」
「あ。そう、ですよね」
「うん。でも、悪い気分じゃないよ。ありがとう、主。弟が来たら思い出話の一つとして話そう」

 思えば彼も長生きだけど、持ち主から何かを賜るのは初めての経験になるのか。そう考えると長生きの彼らにも『初めて』と呼べる行為はたくさんあるんだなぁ。

「ところで、主の体は柔らかいねえ。この間食べたお餅みたいだ」
「ああ、クリーム大福ですか。あれ美味しいですよねぇ〜」

 躊躇なくこちらを抱きしめてきた髭切は発現もフリーダムだ。だが武田さんと柊さんのところの髭切で慣れているから特に気にしない。むしろクリーム大福のことを覚えていたことにビックリだよ。

「あの時は苺味を食べたんだ。甘いのに酸っぱくて、初めての感覚だった。あれを人は『美味しい』と言うのかなぁ?」
「そうですねぇ。『また食べたい』と思えたら、それは間違いなく『美味しい』という感覚ですよ」
「成程。覚えておこう」

 ハグをしながらする会話としてアレだが、髭切は満足そうに頷くと手を離した。いつでもマイペースな彼だけど、そこが長所なんだよね。そう考えると割と鳴狐と空気感似ているかも。

「それでは、鬼丸国綱さん」
「ああ」

 バレンタインの特集がテレビで流れ始めた時は「なんだこの奇怪な行事は」と顔を顰めていたけれど、皆が熱弁したおかげだろう。否定的な意見を持っていた彼も諦めたらしく、素直に手を出してくれる。彼はお酒好きだから日本酒入りのチョコにした。変わり種は好まないだろうと思ってね。無難なものを選びました。

「正直自分でも引くほど変な目に合うので、いざと言う時はよろしくお願いします」
「おれはそのために存在しているからな。頭を下げずとも勝手に切るさ」
「ありがとうございます。めっちゃ頼もしいです」

 今までうちの『怪異切り』と言えば大典太だったけど、一振り増えるだけでも心強い。だってうちには未だににっかり青江も石切丸もいませんからね!
 髭切も怪異を切れる側だから、より一層心強くなりましたよ。はい。

「それで? この“はぐ”とやらは必ず行うのか?」
「行いますとも! 失礼いたします!」

 内心ドキドキしながらも、立派な筋肉に覆われた体に腕を回せば軽く頭に手の平が乗せられる。
 わお! この反応は予想してなかった! 優しい!

「すげえ……。めっちゃ筋肉……」
「主?」
「さーせん」

 小声で呟いたつもりだったんだけどな。陸奥守に拾われて音速で謝った。ただ言われた本人は全く気にしていないらしく、こちらが手を離せば普通に離れて行った。クールに去るぜ、ってな。

「それじゃあ、最後にジュジュさま!」
「はい。私の番ですね」

 数珠丸とも恒次ともうまく呼べなかった結果、本人に了承を取ってから「ジュジュさま」と呼ぶことにしたお相手は数珠丸恒次だ。最初は何度も噛む度に謝っていたのだが、結局言いなおしても噛むので一日と経たずに「ジュジュさまとお呼びしてもよろしいでしょうか」と打診したのは恥ずかしい思い出だ。
 だが数珠丸は「そのような名前で呼ばれるのは初めてですが、構いませんよ」と海より広い心で許してくれた。ジュジュさまマジ菩薩だわ。と両手を合わせて拝んだことは記憶に新しい。

 そんなわけで数珠丸にも用意した和菓子――中身はいちご大福だ。実は前に配った時「これは……良いですね」と絶賛していたので、毎年期間限定品としていちご大福を作っている和菓子屋さんで購入してきたのだ。それを贈呈すれば、普段あまり変わることのない表情が少しだけ綻んだ気がした。

「幸せの重み、ですね。ありがたく頂戴いたします」
「お口に合うといいのですが。何はともあれ、よろしくお願いします」
「ええ。承りました」

 頷いてくれた数珠丸にも手を伸ばせば、一瞬間があったものの「それでは、失礼します」と言って小烏丸並みに細い体が近づき、そっと触れてくる。

「貴方は……本当に柔らかいのですね」
「ははは。まるまるしておりますからね」

 だてにデブじゃねえやい。と心中だけで続ければ、数珠丸は「人とは本当に柔らかい生き物ですね……」と噛みしめるように呟き、そっと離れて行った。

 これで太刀にも渡したので、最後は長物の刀剣たちだ。

「それじゃあ次は大太刀! 蛍丸!」
「やっと俺の番? 待ちくたびれちゃったよ」
「ごめんね」

 蛍丸は短刀の次に呼ぼうかな、と考えたりもしたけど、本人が嫌がりそうだったから最後の方に回したのだ。でもこんなにも待たせたなら短刀の後に呼べばよかったかなー。と反省したけど、蛍丸は悪戯っ子のような笑みを浮かべてこちらを見上げた。

「なぁーんてね。冗談冗談。主さんとみんなのやりとり、面白かったから退屈しなかったよ」
「それはそれでどうなんだろう」

 苦笑いしつつも、蛍丸にも用意したチョコを渡す。蛍丸も短刀と同じように甘いものが好きみたいだから、アルコールが入っていない普通のチョコレートを選んだ。でも色んな形、フレーバーのチョコが入っているから楽しめるんじゃないかな。その中から好きな味が見つかればこっちとしても嬉しいし。
 実際、蛍丸は喜んで受け取ってくれる。

「ありがと、主さん!」
「どういたしまして。これからもうちの大太刀として、よろしく頼むね。蛍丸」
「うん。任せて」

 うちでは初の大太刀であり、即戦力として戦場で高戦績をたたき出してくれる頼りになる一振りだ。見た目は短刀のように小さくても手は結構しっかりとした作りになっているようで、ギュッと抱きしめられた時に「意外と力あるなぁ」と驚いてしまった。

「えーっと、続きましては、巴さん!」
「ああ。俺の番か」

 薙刀の中では小さく作られていても、私からしてみれば高身長である。そんな彼は特に食の好き嫌いはないみたいだけど、洋風よりも和風、とりわけあっさりとした味を好んでいることは歌仙から聞いている。だけどお茶は渋めが好きみたいだから、餡が美味しいお饅頭を用意した。

「中身はチョコじゃなくて和菓子なんだけど、大丈夫そう?」
「主から貰えるものならば何でも嬉しいぞ。感謝する、主」
「いいえ〜。よかったらお好きなお茶と一緒に楽しんでください」

 巴形薙刀は戦場も内番も、うちに来るまであまり経験がなかった。近侍についてもそうだ。だけど仕事についてはまだ経験が豊富な方で、日常生活についてはさっぱりだった。それこそお風呂の入り方さえまともに知らず、石鹸で髪まで洗おうとして当時一緒に風呂に入っていた刀たちが総出で止めたらしい。
 食に関しても「味覚がないの?」と思うぐらい何を食べても「よく分からない」と返され、歌仙と光忠が試行錯誤を繰り返していた。
 結果的に「甘いも辛いも苦いも酸っぱいも苦手ではないようだ」という結論に辿り着き、野菜も果物も特に何かを好むことも嫌うこともせずに出されたものを全て平らげている。ある意味では楽かもしれないが、ある意味では『食の楽しみ』を伝えられなくて歯がゆい存在でもある。
 だけどここで過ごし、皆と関わっていくことで変化するかもしれないから、こういう行事は積極的に楽しんで欲しいな。と思う。

「じゃあ巴さんもハグしようか」
「抱きしめればいいんだな?」
「うん。でも力は抜いてね。あんまり強くされると「グエッ」ってなるから」
「努力しよう」

 当り前だが、巴形は誰かと抱き合った経験などないに等しい。赴いた戦場で重傷になった時は肩を借りたり背負われたりしていたが、逆に言えばそういう触れ合いしか体験していない。だから「力を入れないでね」と予め伝えてから両腕を腰より少し上に回せば、巴形は「ほう」と吐息のような、感嘆の声を零した。

「不思議な心地だ……」
「大丈夫? イヤな気持ちになったりしない?」
「大丈夫だ。むしろ……体の内側が熱くなっている気がする。だが、不快ではない」
「そっか。よかった」

 どうやらイヤではないみたいだ。「体の内側が熱くなっている」感情がどういうものかは流石に分からないけれど、人と触れ合うことに対してマイナスのイメージを抱かれずに済んでよかった。

「えっと、それじゃあ最後に、日本号さん!」
「おう。やっぱりいい男ってのは最後に呼ばれるもんだからな」
「何がいい男だ、この飲んだくれが」
「オイ。へし切。聞こえてるぞ」
「聞こえるように言ったんだ! あと俺のことは長谷部と呼べと何度も言っているだろう!」
「ははは……」

 即座に突っ込んだのは当然ながら長谷部だ。うちに来てから絶えず行われる憎まれ口の押収ではあるが、武田さんのところに比べたら軽い方らしい。日本号さんも「前の本丸にいた長谷部より当たりが柔らかい」と言っていたから、これも個性の一つなんだろうな。

「えっと、日本号さんにはお酒入りのチョコレートをご用意いたしました!」
「おお、ありがとよ。しっかし、そんなに緊張しなくてもちゃんと受け取るぜ?」
「いや、あの、これは受け取ってもらえないかもという不安からの緊張ではなくてですね……!」

 むしろ「受け取ってもらえるの?! マジで?!」という興奮から来る緊張だ。だけどそんなこと言われたら引かれるかもしれない。かといって嘘を言うわけにもいかず、あうあう言っていたら日本号に笑われた。

「だっははは! 相変わらずだなぁ、うちの主は。まあいい。変に色目を使われるより、初心な方が可愛げがある」
「当たり前だ! 俺の主だぞ!」
「今は俺の主でもあるんだがな。さて、それで? チョコを貰った後は“はぐ”をするんだったか?」
「ひょえっ」

 軽率に口にしたことだったけどさ、そうなんだよ。うちには今日本号がいるんだよ。
 じいちゃんが大好きで、ずっと憧れていた槍にハグとか無理寄りの無理だわ! むしろうちに来てくれただけでもありがたいのに、更にハグなんてされたらキャパオーバーしてしまう。だから「正三位に触れるなど恐れ多いです……!」と首を振ったのだが、逃げる前に抱えられてしまった。

「ひぎゃあ!」
「なーに今更なこと言ってんだ。前にも一回こうやって抱き上げたことあるだろうが」
「そ、それはそうですけど! あの時はそれどころじゃなかったと言いますか、それ以外のことにしか思考が行っていなかったと言いますか……!」

 実際、小鳥遊さんの本丸に流された時日本号に抱き上げられたことはある。だけどあの時は事件を解決することに神経を向けていて意識する余裕がなかったのだ。だけどこうして改めて、尊敬する槍に抱えられるなどファンサが過ぎるどころの話ではない。

「おあああ〜〜〜! 重いですよね?! もう下ろしてもらって大丈夫ですから!」
「はっはー! なに勿体ねえこと言ってんだ。正三位に抱えられるなんて滅多にねえことなんだぞ? しっかり味わっていきなぁ」
「ピーーーッ!!!」

 太い筋肉に覆われた腕は逞しく、こんなデブチンを抱えているのに震えてすらいない。むしろカラカラと笑う姿は楽しげで、至近距離から見る美丈夫の笑顔に心臓が壊れそうだった。

「陸奥守。あれは浮気にならないのか?」
「んー……。わしはおもしろないけんど、主のあれは『あいどるのふぁんさーびす』に悲鳴上げゆう子ぉらとおんなし状態じゃ」
「はあ。つまり浮気ではないと」
「うん。日本号にもその気はないと思うよ。あれは完全に子供を構っている時の顔だから」
「けしからん奴め……! おい、日本号! いい加減主を離せ! 困っておられるだろうが!」

 山姥切と宗三、小夜に挟まれて陸奥守が何か言っていたけど、ここまで聞こえてはこなかった。代わりに助けに来てくれたのは長谷部で、伸ばされた手を掴めば日本号も下ろしてくれる。

「あ、ありがと、長谷部……」
「いえ。それよりも、大丈夫ですか? 主。お茶をお持ちしましょうか?」
「いや、大丈夫……」

 あまりにもファンサが過ぎて腰が抜けかけたが、どうにか全員に渡すことが出来た。そのことにホッとしつつ、最後にもう一度皆が舞わせた桜を処理してから本日の業務へと移った。

 だけどその後、数日に渡り本丸から桜が消えることはなかった。

「フッ……。まさか手紙一通であんなに喜ばれるとはなぁ……。ホワイトデー……怖いなぁ……」

 お菓子自体がそこまで高級品でもないからさ。せめて気持ちだけでも、と書き綴った手紙が大いに突き刺さったらしい。戦場でも本丸でも桜が消えることはなく、むしろ皆絶好調でバカスカ高戦績を叩き出してくる。
 いや、それ自体はありがたいんだけどね? 正直ホワイトデーが怖すぎるんよ。もうこうなったら遠足の時みたいに「使える金額は三千円まで!」って通達しようかな。
 そんなことを考えつつ、現実逃避をするように庭を眺める。だが最近鳴き始めた鶯の声に癒される間もなく、視界の端から端へと薄紅色の花弁が通り過ぎて思わず乾いた笑いが零れでたのだった。


終わり


 今回はちゃんとしたバレンタインを書こう! と思ったらえらい長くなってしまった……。流石に三十五振り分は無謀だったか……? いやでも、一人一人は短くしたからとりあえずセーフで(?)。そんな感じのバレンタイン小話でした!
 最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!m(_ _)m




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