小説2
- ナノ -





西日が差しこむ資料室で、彼の膝の上に座らされていた。
与えられる口付は止むことなく、息が苦しくなっても続けられた。舌と舌が絡み合って、飲み込めない唾液が口の端を伝って、舌先が糸を引くのを眺めながら、それでも何度も唇を重ね合った。

そうして私の体から完全に力が抜けきると、サソリは少しだけ意地の悪い笑みを見せながら私を抱えなおした。

「お前って自分の体型気にしてるけどよ、俺はこのぐらいがちょうどいいと思うぜ」
「んっ!ちょっとやだ、どこ触ってんのよ、くすぐったいっ」

落ちないよう片手で腰を支えられつつ、けれど不安定な姿勢を恐れてしがみ付く私の足にもう片方の手が這いまわる。
一応基準である膝丈を守ったスカートの上からではなく、そのスカートの中に手を突っ込んで直に、だ。
自身では太いと思っている太ももに指を喰い込まされ頬に熱が昇るが、彼は気にせずあー…と心地よさそうな吐息を零した。

「お前これ以上痩せんなよ?コレが丁度いいんだからよ」
「う、煩いわね!どうせ既にデブよ!!」

そりゃあ身体測定前にはダイエットするからちょっと体重は落ちるけど、それでも普段の体重は平均値だ。
だけどどうも私の体はモデル体型から程遠く、無駄に肉が付いている気がしてならない。
実際友人数名は羨ましいほど細い子がいる。正直ちょっと憧れているんだけど、甘いものが好きな私にとって甘いものを断つのは至難の技だ。

それに彼は私がダイエットしようと決意すると不機嫌そうに顔を歪め、今がベストだと言って拒むのだ。
挙句の果てにはあんみつやチョコレート、クッキーとかシュークリームとか、私の好きなもので釣ろうとするのだから本当に狡い。
それでも私が頑張って首を振り続けたら、ある日突然美味しいと評判のパンケーキ屋さんに連れて行かれ、屈服した。
パンケーキには勝てない。だってあんなに美味しいんだもの。

「余所事たぁ余裕じゃねえか。なぁ、サクラ」
「んっ!」

髪を耳にかけ、露わになったソコに甘い吐息と同時に掠れた声が吹き込まれる。
途端に全身が震え、足の間が疼き、無意識に太ももを強く閉じた。

「なんだ、感じたのか?お前本当耳弱いよな…それとも、俺の“声”に弱いのか?」
「ひっ!やだ、耳元で喋んないでよ、ばかぁ…」

彼のやらしい声が吹き込まれる度に背中が震える。けれど震えれば震える程しがみつく指先からは力が抜けて行く。
どうにか頑張って彼の拘束と耳への攻撃から逃れようと身をよじっていると、彼に我慢できないのか?とからかわれ睨みあげた。

「バカ!エッチ!!」
「お前の口から出る“エッチ”って単語はエロくていいな。専門は数学だが、こういう時は国語が好きになりそうだ」

何バカ言ってんの、と続けたかった言葉は彼の口の中に消え、不安定な身体はついに机に押し倒され固定された。

「それにほら、“嫌よ嫌よも好きのうち”って言うだろ?」
「んんっ!」

前触れもなく触られたのは、下着の上からだったけど私の恥ずかしい所で、思わず口元を手で覆えば笑われた。

「いいな、そそる」

バカ、と言いたかったけど、彼の指が突然ブラジャー越しに乳首を抓んできて言えなかった。
彼に教え込まれた体は、どんなに嫌がっても否定しても感じてしまう。彼の指や吐息や声に反応してしまう。だから、卑怯だというのだ。
こんな人に、勝てるはずないのに。

「先にコッチから可愛がってやろうか?ん?」
「んっ、ぅんんーっ!」

服の上からだからか、いつもより強めに指先で乳首を抓まれ全身がビクつく。
最初は何も感じなかったのに、この指で苛められると体が熱くなって頭がボーっとして、アソコが厭らしくキュンキュンと疼いて仕方なくなる。
もっともっとって言いそうになって、嫌らしい言葉を言いそうになって必死に口元を塞ぐ。けど、自分の声とは思えない甘い声は溢れて止まらなくなる。

「ココも随分と弱くなったなぁ。可愛いじゃねぇか」
「ぅ、ん!んん、ん〜っ…!」

ブラジャーの柔らかい生地ごと責められる。指で直に触られるのとは違う感触に息があがり、足を強く擦りあわせてしまう。
そんなもどかしいけれど絶えず送られてくる刺激に嬌声を漏らし続けていれば、ついに彼の手が服の合間に滑り込み、裸のお腹を撫でてきた。

「このまま服の上からがいいか?それとも直に触ってやろうか?」

見上げた彼の眼は楽しそうに輝いている。
この意地悪男の好きにさせてたまるか、という思いも確かに残っているのに、彼に作り変えられた体を持て余す私は少しだけ首を横に振った。

「ふ…服の上からじゃ…やだ…」

蚊の鳴くような、喉の奥から必死に絞り出したようなか細い声だったけど、顔を近づけていた彼はちゃんと聞こえていたらしく機嫌よく目を細めた。

「素直なお前もそそられる」
「あっ!」

お腹を撫でていた手が背中をゆっくりと這い上がり、くすぐったさと同時に感じる快感に背を反らせば、その間にブラジャーの金具を外され掌で胸を包まれる。
瞬間私の体は期待に疼き、彼はその熱に応えるかのように直に胸を揉み扱き、乳首を捏ね回してきた。

「あっ!あっ、っ、んん」
「すげぇ硬くなってる…やらしーなぁ、サクラ」

掌全体で胸を揉まれ、押し上げられ、指の合間で乳首を苛められれば閉じていた口も開いてしまう。
おかげで思ったより大きな声が出てしまったけれど、彼は怒ることなく私の胸を弄り続け、気づけば前を開けられたいた。

「ココはもっと育ってもいいが…まぁコレはコレで乙だな」
「はぅ!う、うるさい、わねっ…!」

指で弄られすぎていたせいで赤くなった乳首に、彼の舌がねっとりと這いまわる。
その刺激に喘いでいれば再度股間に熱を感じ、思わずひっ、と声が上がった。

「ああ…すげぇ濡れてる…」
「や、やだっ、言わないで…!」
「そう言われてもなぁ」

下着の上からでも分かる、擦られる度に立つ濡れた音。
彼の指が動く度にくちゅくちゅとそこは音を立て、それが聞こえる度に顔が熱くなっていく。いや、顔だけじゃない。全身が発火したみたいに熱くって、恥ずかしいと思っているのにまたアソコが濡れていく。
どれもこれも全部彼のせいだ。先生が“こんなこと”を私に教えるから、私はどんどん厭らしい女になっていくんだ。

「はっ、白いパンツが濡れてぐっちゃぐちゃだぜ?すげえエロい」
「バカぁ…エッチ、変態、イジワ、あぅん!」

足の合間に感じた熱。
視線を下せばスカートの中に頭を突っ込む彼の姿が見えて、体が硬直した。

「ひゃあ?!や、やだ、舐めないでっ!」

けれどすぐに感じた柔らかく、ぬるりとした熱に腰が震える。
始めは下着越しに、けれどすぐにその隙間から舌が入り込んできて、音を立てて舐められれば私の腰は完全に砕けてしまった。

「はっ、あ、やぁ…ああっ」

両足を肩にかけられて、太ももを撫でまわされながらの口淫はすごく厭らしくて、でもそれ以上に気持ち良くて、ビクつく足が彼を受け入れようとどんどん開いていく。
今じゃ自分がどんな恥ずかしい格好をしているかも分からなくて、ただ与えられる刺激に泣き続けていれば彼がスカートの中から顔を出した。

「あっちぃ…」

口元を拭う彼の顔は実際随分と赤らんでおり、夕日のせいとは思えない。
実際スカートの中に籠っていれば随分と暑かっただろう。けれどそれとは別に彼の膨らんだ下半身、ソコの状態を見れば私の熱もまた上がりそうだった。

「お前のスカートを汚すのは卒業してからって決めてんだ。ほら、腰上げろ」
「んっ…」

何やら不穏な言葉が聞こえたが、すっかり頭が溶けた私はあまり理解できず、後半の単語だけ拾い上げて腰を上げた。
素早く、けれど丁寧に脱がされたスカートと下着は皺にならないよう椅子に掛けられ、私は出来る限り足を開いて彼に恥ずかしい部分を見せた。

「せんせ…はやく…」

ベルトのバックルを外す音が、スラックスの前を開ける音がこんなにももどかしく感じたことはない。
そうして出てきた赤黒い性器に再びアソコが熱くなるが、彼は少し待ってろ。と告げてポケットから避妊具を出してきた。
…ちょっと用意よすぎじゃない?とか思ったのは秘密である。

「…っと、もう少し我慢しろよ」
「んやぁ…!もう我慢できないぃ…!」

彼の性器が濡れた花弁を擦っていく。
その度に刺激が欲しくて震える子宮が涎を垂らし、それを更に掻き乱してから彼は私の腰を掴んだ。

「欲しいか?」
「ほしい」
「どのくらい?」
「いっぱい、いっぱいほしい…!」

焦らされて焦らされて、早く早くとせがむ私に彼は一度深く口付けてから性器を花弁に押し当てる。
そうして口を開く膣の中へと徐々に性器を埋め込み、一番太い所を飲み込んだら一気に腰を推し進めてきた。

「ふぁ…!あ、ん!!」

ズン、と子宮だけでなく全身に広がる衝撃と重み。そうしてアソコからじわじわと焼けるような熱を感じ、満たされる幸福に瞳を潤ませていると体を軽く揺すられる。

「はぁ…すげ…気持ちいい…」

いつもはやる気がなくて、面倒くさそうな顔が、今は苦しそうに眉間に皺を寄せ、額に汗を浮かべて歯を食いしばっている。
こんな顔、絶対私しか知らない。他の誰も知らない、他の女の子が絶対に知らない彼のエッチな顔。
食いしばった歯の間から漏れる吐息がどれだけ熱いか、喉の奥から絞るように零される声がどれだけ掠れててセクシーか、私しか知らないのだ。
それが嬉しくて嬉しくて、キュウ、とアソコを締めながら彼にしがみつけば強く掻き抱かれた。

「くそ!煽んじゃねえ、バカっ」
「あ!だってぇ…すきなんだもん…」

そうだ。好きなのだ。こんな普段はやる気が無くて意地悪でどうしようもなくエッチで口が悪いけど、それでもやっぱり好きなのだ。
だから、彼に躰を作り変えられても、知らない私にされても、それがどうしようもなく嬉しくて、幸せなのだ。

「ひあっ?!」

でもすぐにそんな考えが飛んでいくような力強い衝撃に襲われる。
掴まれた腰には痛い位に指が食い込み、見上げた彼の瞳は獣のように輝いていた。

「…煽ったお前が悪いんだからな」

舌打ちの後に零された言葉に返事をする前に、強く深く腰を打ち付けられる。
そうなるとまともな会話なんか出来なくて、机が派手な音を立てるのも気にならなくなって、自分の声がどれだけ大きいかも考慮できなくなって、自分の全てが目の前の彼でいっぱいになって、どうしようもない充足感に満たされながら揺さぶられ、果てた。

「はあ…ぁ…は、ん……」
「はー…はー…」

覆い被さる彼の体は酷く熱い。
震える体も、香ってくる汗と彼自身の匂いにも、ただただ愛しさを覚えるばかり。

「…せんせぇ……さそり…?」
「…なんだよ…」

耳元に聞こえる掠れた優しい声。少しだけ疲れが滲んだその声に頬を緩めながら、私は彼の広い背中に指を這わしてぎゅっと抱きしめた。

「だいすき」

普段は滅多に言わない言葉だけど、たまにはいいんじゃない?と思って口にしてみる。
だけどやっぱりそれは思った以上に恥ずかしくて、子供っぽくて、私は上がっていく熱を下げることが出来なかった。


勿論この後無理やり二回目に持ち込まれたのは言うまでもない。



end




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