小説
- ナノ -





照明を落とした布団の中、熱い指先が肌を辿る。
久方ぶりの愛撫にふるりと体を震わせれば、露わになった喉に噛みつかれ肌を吸われる。
味わうように何度も嬲られ食まれ、耐えれず甘い嬌声を吐息と共に零す。
名前を呼べば口付られ、甘えるように声を出せば抱きしめられる。
重なる肌が心地よく、耳を掠める吐息がくすぐったい。
我愛羅の愛撫はさながら乾いた土地に水を与えるように、飢える心を満たしていく。
誰でもない、我愛羅の手でなければ潤うことができない。
飢え、渇き、ひび割れた土地が豊かに育ち新たな命が芽吹いて行くように、サクラの体が色づき開花していく。

「ん…我愛羅くんっ…」

舌なめずりする我愛羅の濡れた瞳が爛々と輝き、まるで肉食の獣に目を付けられたような錯覚に陥る。
けれど我愛羅になら食べられてもいいかもしれない、と白い肌を赤く染めあげ浴衣をはだけさせ、味わうようにたてられる歯に甘く喘ぐ。

「ぁ…ね、ぇ、もっと…」

記憶の中のものよりももっともどかしい、けれど心地のいい愛撫に感じ入る。
未だ明確に刺激を与えられていない体は微弱な刺激でも貪欲に吸収し、腰が揺れる。

耐えれず早く、と強請っても、我愛羅はまだ。と返し肌を味わうだけ。
いっそ自ら慰めてしまいたい。と唸る欲望に目を閉じれば、ようやく我愛羅の指先がサクラの胸の周りを撫でだす。

「あっ…!っ、んっ…」

揉みほぐすかのようなじれったい触り方に無意識に腰を絡め、もっと確かな刺激が欲しいと喉が鳴る。
けれど我愛羅は掌全体で乳房を揉みしだき、指先でくすぐり愛撫するだけ。

「あ…ねぇ…我愛羅くん、早く…さわって…」

お願い。
と羞恥に耐えて懇願してみるも、もう少し。と言って聞いてはくれない。
ああ、もう。と首を振り身を捩れば、その動きにつられ我愛羅の指先がぷっくりと立ち上がった乳首を掠める。
途端躰を走り抜ける刺激にああ、と声を上げれば、まるでそれが引き金だったかのように我愛羅の口ががぱりと大きく開かれ、生温い肉厚な舌でねっとりと舐めしゃぶられる。

「んああっ…!」

ようやく与えられた刺激は想像以上に強烈で、びくん、と大きく体が跳ねる。
掌全体で乳房を揉まれながら、舌全体で乳輪を嬲られ唇で食まれ、吸い上げられる。
浅くなる吐息に嬌声を乗せ喘げば、反対の胸を弄っていた掌が乳房を押し上げ指の間できゅう、と乳首を摘む。

甘い声を上げながらびくつく背をぐっと反らせば、強く胸に吸い付かれ甘く歯を立てられ、疼く子宮から愛液が溢れてくる。

自分で慰めるよりも遥かに強い快楽に血液が沸騰し、開いた毛穴から汗が噴き出してくる。
たまらず首を振ってみても、我愛羅は愛撫を止めずに赤子のように胸に吸い付き離れる気配はない。
そのうち快感よりも痛みが強くなってきて、再びもういや、と首を横に振るが、まだダメだと言って離してくれない。

「ぁあっ…!」

赤く充血し痛む胸とは対照的に、愛液で濡れそぼった秘所はショーツを濡らし、足を擦り合わせる度に濡れた音を奏でる。

「相変わらずお前は濡れやすいな」
「ぁんっ!」

微かに笑った我愛羅の指がそっとショーツの上をなぞり、楽しむように上下に擦ればサクラの腰がびくびくと跳ねる。

「ふっ、んん…い、じわるっ…!」

何度も割れ目をなぞられくすぐられ、溢れる愛液がショーツにシミを作っていく。
徐々に香ってくる女の匂いに我愛羅が舌なめずりすれば、その雄の本能とも呼べる仕草の色っぽさに、サクラの花弁の奥、子宮の中がきゅんと啼く。

もどかしげに腰を動かせば、逃げるなと言わんばかりに腰を引き戻され、下腹に口付られる。
いっそのこと乱暴にでもいいから触ってほしい。
羞恥を堪えつつ自ら足を広げれば、我愛羅が喉の奥で笑いながら、淫らだなと呟く。

そうさせたのは誰のせいだと突っ込みたい気持ちではあったが、早くこの熱をどうにかしてほしいという思いの方が強かった。
自分の手で慰めてもよかったが、我愛羅の手で愛される方が遥かに気持ちがいい。

触って、と我愛羅の手首を掴み秘所に導けば、その指先がショーツの隙間に入り込み濡れそぼった茂みを撫で、溢れる愛液を絡めながらゆっくりと花弁の淵を撫でる。

「は、あぁ…もっと…」

濡れた音を立てながら焦らす様に撫でられ、もっと欲しいと腰が前後に動く。
早く、と潤む瞳で我愛羅を見上げれば、欲望に濡れ光る瞳がサクラの痴態をじっと眺めている。

それすらも刺激となり膣の奥からとろりと愛液が溢れれば、今日はやけにすごいな。と喉の奥で笑われる。
思わず睨みたくなるが、我慢できない体は正直だ。
サクラは我愛羅の手首をつかみ指を引き抜くと、広げきった足を一度閉じ、自らショーツを脱ぎ捨てる。
我愛羅の目下、露わになった秘所は愛液で濡れそぼり、男を誘う淫猥な匂いが漂ってくる。
こくり、と我愛羅の喉が上下に動くのを眺めながら秘所へと指を導けば、今度は深く花弁の中に入り込み明確な愛撫を施してくる。

「あっ!はぁ…ぅ、んんっ」

我愛羅の指先が柔らかな花弁を押し広げ愛液を絡め取り、音を立てて愛撫される。
とめどなく溢れる愛液は後ろの蕾にまで垂れ、シーツを濡らす。

まるで水を掬うように我愛羅の掌が大きく花弁を撫で上げ手を離せば、滴る愛液が我愛羅の手を汚し、指の間で糸を引く。
そのあまりにも淫らな光景にカッと羞恥に頬が染まるが、我愛羅は味わうようにそれに舌を這わせ音を立てて舐め啜る。

意地悪っ、と淫猥で野性的な光景に耐えれず視線を逸らせば、上体を折った我愛羅が耳元でどうした?と甘く囁き体が震える。

分かっているくせに。
睨んでみても我愛羅は底意地悪く笑むだけで、どうされたいか言ってみろ。と言いつつ舌を伸ばして耳たぶを舐めてくる。

「ひっ…!」

慣れない感触に、けれど決して嫌悪からではない震えに甲高い悲鳴が上がる。
それに気をよくしたのか、我愛羅はサクラを布団の上に縫い付けると、囲うように覆い被さり髪を横に流す。

もしや、とひくりと喉が震える横で、予想していた通り我愛羅の舌がサクラの耳に這わされ、舐めしゃぶられる。

「いやっ…!」

感じたことのない刺激に逃げたくなるが、それを許してくれるほど我愛羅は優しくない。
痛いほどに腰を強く抱きかかえられ、ころころと舌先で耳たぶを転がし、熱い舌先が耳の中に押し入り、ぴちゃぴちゃと濡れた音を立てて舐められる。

「いやっ、やぁあっ…!」

どうにかなる、おかしくなってしまう。
舐められる度に足をシーツに擦りつけ、腿をすり合わせ、指先は縋るように我愛羅の腕を掴む。
耐えれず目を瞑れば余計に頭の中で音が響いて仕方なく、更には我愛羅の熱い吐息まで鮮明に感じてしまい余計に苦しい。

いやいや、と首を横に振っても、ぐちぐちと耳を嬲る舌の動きは止まらない。
びくつき縮こまる体の逃げ場はなく、やだやだと繰り返し泣き続けるしかない。

どうして今日はこんなに意地悪なのだろうか。
必死に耳への愛撫に耐えていれば、いつしか体を拘束していた腕は一本になり、行方知れずになっていた片腕が下腹をくすぐる。

あ、と思ったのも束の間、濡れそぼる秘所に指が潜り込みすっかり顔を出した突起を撫でられる。

「ぁあっ!」

いつもより焦らされていたせいか、その刺激は一瞬で頭を真っ白にするほど強烈で、全身が痙攣するように震える。
目の前が霞むようなその強すぎる刺激に耐えていれば、間髪入れずに再び撫でられ体が強く跳ねる。

「やだっ!やっ、あああ!やだああ…!!」

耳への愛撫は止まったが、今度は我愛羅の足が閉じていた足の間に入り込み、一気に左右に開かされる。
あまりにも恥ずかしい体制に羞恥で目の前が真っ赤になり、瞳からは溜まっていた涙が溢れ出てくる。

「あぁ、あ、あぁあ!!」

そのまま無理やり開かされた足の間、ひくつく秘所を明確な意図をもって攻め立てるように愛撫され、なりふり構わず泣き叫ぶ。

「やだやだっ!ひ、あぁ、あぁ!」

容赦なく突起を撫でられ小刻みに擦られ、突き抜ける快感に足をばたつかせシーツを蹴る。
痺れるような快感に腹筋が引きつるように痙攣し、子宮が戦慄き体が反る。
どんなに泣いて叫んで懇願しても、我愛羅の指は止められることなくサクラを頂へと昇らせていく。

「やっ…!も、イくっ…!!」

あと少し、というところで突如我愛羅の指が離れ、愛液で濡れた手で内腿をあやす様に撫でられる。
何で、と荒くなる呼吸の合間に呟けば、さあ、と答えられ目の前が霞む。
ともすれば我愛羅はサクラの下から抜け出ると、再びサクラを布団に縫い付け足の合間に体を割り込ませる。

「果てたいか?」

問われ何度も頷けば、そうか。と我愛羅は頷くが、だが、と言葉を続け底意地悪く顔を歪め笑う。

「イかせない」
「なっ…!」

何で、と答えるよりも早く、我愛羅の舌が突起に伸ばされ嬲られる。
再び襲ってくる快感に知らず逃げ腰をうつが、がっしりと抱え込まれ引きずり降ろされ、再び執拗に愛撫される。

「あっああ!!やらっ、いやぁああ…!」

イきたいのにイかせてもらえない。
果てそうになる度に舌は突起から離れ、足や下腹を食み、熱が一旦落ち着けば再び突起を愛撫され啼かされる。
それを何度も繰り返され本当に脳みそが溶けそうな快感と、果てることができず体の内側で暴れまわる欲望に耐え切れずむせび泣く。

全身を流れる汗ごと飲み込むように愛液を啜られ肌を吸われ嬲られて、強すぎる快感がいっそ辛い。
呼吸は荒く、足りない酸素のせいで頭が霞む。
けれど敏感な所への愛撫は止まらず啼かされ続け、喉も、涙を流し続けた目の奥も痛い。

あまりにも徹底的な愛撫に、ついにゆるして、とか細く泣くしかできなくなる。

「も、やだぁ…ごめんなさい…ゆるしてぇ…」

じゅるじゅると音を立てて愛液を啜る我愛羅が、その声にようやく顔を上げ濡れた口元を拭う。

「別に怒ってるわけじゃないぞ」
「…う、そ…」

霞む視界で我愛羅を見つめれば、ただ、と言葉が続けられる。

「今日は苛めぬいてやろうと思ってな」

にやりと笑う顔は酷く獰猛で、実はどれだけ彼が腹の底で怒っていたかが分かる。
幾ら任務と言えどもやはり許せなかったらしい。

(もう絶対、二度とこんな形で我愛羅くんを怒らせない。絶対…!!)

ひんひんと泣きつつ心に強く誓えば、まぁ今回はこのぐらいにしてやろう。と我愛羅は呟き宥めるように目尻に口付け溢れる涙を舐めとる。

「これに懲りたら金輪際色の任務には出るな」

もし次に色の任務を引き受けてみろ。もっと容赦なく苛めるからな。
と低い声音で告げられ、サクラは何度も上下に頭を振り頷く。

「わかったから…もう、でないからっ…」

だからもう、イかせてほしい。
潤む視界で見上げれば、分かればいい。と我愛羅は言うとサクラの背を抱きながら慰めるように、慈しむように優しく顔中に口付けを落としていく。

「ん…んんっ」

くすぐったさに身を捩れば、我愛羅の指が髪を梳き、頬を撫でる。
先程までとは違う優しい愛撫に再び呼吸が浅くなり、とろりと視界が蕩けていく。
我愛羅くん、と名を呼びつつ見上げれば、ゆっくりと唇が重なり優しく唇を食まれる。
それだけで、先程までの仕打ちを忘れるほどの幸せが全身を包み心が奮える。

この男の飴と鞭の使い分けがなんとうまいことか。
汗ばんだ肌を押し付けるように抱きつき背を撫でれば、我愛羅の大きな掌が頭を撫で額に唇を落としてくる。

「んっ…」

先程までの一方的な愛撫とは違う、二人で感じあうような行為に身も心も溶け始め熱を帯びていく。
重なる肌と伝わる鼓動が、徐々に呼応して一つになっていく。

幸せだと、うっすらと瞼を開ければ唇を重ねられ、甘えるように舌を差し出せば食むように絡め取られる。
鼻に掛かった声は甘く、抱き着くように首の裏に腕を回し、茜の髪をかき混ぜる。
零れる吐息に交ざり、我愛羅の喉から心地よさそうな声が漏れ、至近距離で見つめ合えば自然と頬が緩くなる。

熱を帯びる体と、逸る鼓動に反比例するかのような愛撫と口付に、いつしかほだされ、ゆっくりと花開いていく。

「サクラ…」
「うん…」
「…きれいだ、サクラ…」

何度も口づけられ、頭を撫でられ、そうして耳元で囁かれた言葉に目の前が潤む。
羞恥と、喜びと、愛しさと。溢れる想いがサクラの体を色づける。

「サクラ…サクラ…」

我愛羅はサクラの名を呼びながら、何度も肌に唇を落とし口付け、シーツの海にサクラを横たわらせる。

「我愛羅くん…」

腕を伸ばして求めあい、広がる髪に指を這わされ、撫でられ、背を抱かれ、うっとりと目を閉じれば潤む秘所が再び疼く。
互いに上り詰めあう中、ようやく我愛羅はサクラの腰を抱くと足の間に体を入れ込む。

「ぁっ…」

喉の奥から期待に震える声が溢れ、恥ずかしくなるが求める心は止められない。
ひたりと秘所に当てられた熱く硬い熱量に、声を上げる間もなく貫かれる。

「ああっ!」

ずん、と奥まで入り込んできた楔に、頭の中が真っ白に染まる。
仰け反った喉に歯を立てられ、掠れる声で啼けば腰を高く持ち上げられ膝を曲げさせられる。
不安定な体制を整えようと後ろに手を突けば、我愛羅の手ががっしりと腰を掴み直すと、高い位置から突き刺す様に腰を押し込んでくる。

「ぁああっ!ひっ!あっ、やぁっ…あっ!」

いつもとは違う、深いところまで入り込んでくる熱に全身を貫かれ、ひっきりなしに高く喘ぐ。
太いところで弱いところを責められ、深くまで挿入されれば奥をぐりぐりと穿つように腰を動かされる。
今までにない強い刺激に訳も分からず喘ぎ続け、目の前に火花が散っていく。

延々と焦らされ続けた体は貪るように快楽を拾い上げ、荒ぶる波のように全身にそれを広げ一気に高みへと押し上げていく。

「あああ!だめだめだめっ!ああっ!や、だっ!あっ、もうぅ…イっくっ…!!」

ガクガクと体が震え、崩れ落ちそうになる度に腰を抱えなおされ深く穿たれ、ぷつりと頭の中で何かが切れるように一気に弾け、落ちる。

「ぁあ…はぁ、あ…ふぁ…あぁ…」

あまりにも強烈すぎた快感と、今までにない上り詰め方をした体が余韻に震え続ける。
力の入らない体を生温いシーツの上に横たわらせ、疼く子宮が落ち着くのを待ちながら呼吸を整える。
その隣では我愛羅も荒い吐息を零しながら横になっており、気だるい体を横倒し眺めていれば、緩やかな曲線を描く額に汗が滑り片手で雫ごと髪を掻き上げる。

色っぽい。
ぼやける視界で、反らされ露わになった喉仏に手をやり指先で辿れば、荒い呼吸を繰り返していた我愛羅の瞳がサクラを映す。

捕らわれる。
思った頃にはどちらからともなく唇を重ね合い、腰を抱き合い足を絡め、舌を重ね合わせ愛撫し合う。

「ぁ…ねぇ、まだ…ほしい…」

未だ体は余韻に浸っていたが、それでもまだ欲しくて強請れば、我愛羅の口が弧を描く。

「今日は随分と積極的だな」
「だって…」

笑う我愛羅の胸板に額を押し付け、甘えるように体を寄せれば髪を梳かれる。
そのあやすような感触が心地よく目を閉じて甘受していれば、ぎゅうと強く抱きしめられ目を開く。

「だめ?」
「いや」

むしろ大歓迎だ。
楽しそうな声音にサクラも頬を緩め、体を起こして唇を重ね合う。

「ねぇ…」
「何だ?」

見下ろす翡翠の眼差しはあたたかく、けれど男の本能に濡れ光り色っぽい。
トクトクと高鳴る鼓動を感じながら再び唇を重ね、喉の奥で笑い、出かかった言葉を噛み殺す。


あなたがすき。
例えこの関係が、いつか壊れる曖昧なものだったとしても。
今この時感じる想いがサクラにとってはすべてだった。

この男の腕の中でしか自分は花開けない。

いつかの遊郭で男が嘯いた戯言を思い出しながら、己を抱く腕に体を預け目を閉じる。
菖蒲の花は自分には似合わない。

この男の目を奪うほどに咲き誇り、そしていつか散りゆくならばやはり自分は桜がいい。
いつかすべての花が散ったとしても、いつまでも男の心の中で美しく、たおやかに咲き誇ってくれるだろうから。

「サクラ」

呼ばれて顔を上げれば、優しい口付が降ってくる。
好きも愛してるも伝えられぬ関係ではあるが、この一時だけでも我愛羅の腕の中で咲けるのであれば、それでもいいと我愛羅の背に手を回す。

自分はもう他の誰をもこんな風には愛せない。

重なる鼓動が心地よく、この一瞬をいつまでも覚えておこうと切ない幸福を噛みしめる。
我愛羅の腕の中で広がる薄紅が、流れるように肩から滑り落ちた。




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