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たまにはこんな世界もありだよね?




 このお話は【記憶持ち転生パロ】を前提とした学パロです。ジナコさんは月でのこともカルデアでのこともそれなりに覚えています。イマジナリーガネーシャさんも出てきます。
 どの世界線でも可哀想な目に合いそうなジナコさんを幸せにしたくてなんか色んな因果を無理やり捻じ曲げたお話です。fate警察の方が見たら包丁持って刺し殺したくなるレベルです。あと落ちなどありません。書きたかったところだけ書いた感じです。

 ただ正直なことを言うと学生ジナコさん(没案参照)に求婚するカルナさんが見たかっただけの話。(盛大なネタバレ)

 もう大体何がきても大丈夫そうな方は大丈夫だとは思いますが、ダメだった方は見なかったことにしてください。
(※FGOの二部四章、大奥イベントに出てくるサーヴァントが出ますので、未プレイの方は意味不明かと思います)




 月から生還し、突然神様になったかと思えば世界を救う戦いに強制参加させられた。
 何を言っているか分からないと思うがボクにもサッパリだぜ! というわけでインドの神様こと「ガネーシャ」さんの擬似サーヴァントに選ばれてしまった「ジナコ=カリギリ」は、人類最後のマスターと契約し無事世界を救ったのでした! おしまい。

 っていうのがジナコさんの人生第二部までのお話。(尚第一部は月での出来事とする)でまあ、凡人類史を取り戻した後は特に大きな事件もなく。ガネーシャさんから「お疲れ〜」ってかる〜く解放されてからの人生が第三部なわけだけど、まぁ、そこは色々とありまして。(今回の回想には不要なのでガッツリ省くけど)
 カルデアではエリートニートのジナコさんにしてはかーなーり頑張った。結果としてガネーシャさんもちょっとは「神様らしく褒美でも与えよう」って感じでそれなりに加護を与えてくれたわけで。まぁまぁ平和で普通な人生を送ったんじゃないかな。と思います。いや、比較対象がないから知らんけど。

 じゃあ今このモノローグを語っているジナコさんは何のか、って話なんだけど、いやー、本当どういうことなのかにゃ〜? どこぞのタイガーの口調になるほどジナコさんも大混乱! 第三部・完! の後にまさかの「強くてニューゲーム!」が始まるなんて誰も思わないじゃ〜ん? ほら、ジナコさんただのモブだから。エリートヒキニートという名の自宅警備員なだけだから。座に刻まれるような英雄でもなければ作家でもないわけよ。強いて言えば「神様に擬似サーヴァントの依代として選ばれました」ってぐらいの、本当なんでもないモブなんですよ。いや、これ本当にモブか? とにかく! ジナコさんはジナコさんとして第二の人生、いや。第三の人生と言った方がいいのか? を歩みだしたのである! まる!

「少しは落ち着いたか? ジナコ=カリギリよ」
「う〜るせーっスよ! このメタボ象改めメタボ少年! 幾らジナコさんがショタ好きであったとしてもそんなふてぶてしいショタはお断りです!」

 蹲るボクことジナコ=カリギリ御年十歳。未だトドやマナティーには程遠い、平均体重と平均身長を邁進中の中身だけはちょっぴりお姉さんのこのボクが! 何故こんな人生を歩む羽目に?!
『前世(?)の記憶を持っている』だなんてどこの二次元だっつーの! ジナコさんは現実に生きるリアリストです!
 それが! 何故! こんなラノベで使い古されたような状況にならなきゃいけないわけ?!

「うむ。それはな、母上がそなたを気に入ったからだ。『あの子は私の娘も同然ですから!』と言って人の話を聞かずに受肉したんだなこれが」

 マジかー。いや、マジか! パールヴァティーさん、お気持ちは大変ありがたいんですがジナコさんには正真正銘本物のママがいますから!
 一応はこのメタボ少年ことガネーシャさんも説得を試みてはくれたらしいのだが、残念無念。ここにいる時点でお察し案件です。まぁ、ジナコさんがガネーシャさんやってた時から押しは強かったから、ガネーシャさんが止められないのも納得なんだけどさ。
 因みにそんなパールヴァティーお母様は現在引っ越しの荷解きを終え、早速周囲の家々にあいさつ回りに出ていると。相変わらずの大和撫子ぶりである。インドの神様だけど。

「とはいえ、我も一時とはいえそなたと運命共同体となった身。多少なりともそなたに降りかかる障害を除去してやってもいいかな。と思い母上と一緒に現界したわけだ。というわけで、えいっ」
「ほあ!? 何々?! 何したの?!」

 見た目はちょっとふくよかでやる気のない目をした少年が、まるで指揮棒を振るかのように手を振り上げた瞬間キラキラとしたものが降り注いでくる。黄金色のそれはどこかの英雄の鎧を彷彿とさせたけど、それは瞬きの間に消えてしまった。

「そう騒ぐな。そなたに降りかかる厄災をすこぉーしばかり振り払ったまで。因みに今日中にご両親の手をギュッと握ると神様パゥワーが移ったり移らなかったりする」

 いやどっちよ。そう突っ込みたかったがここはグッと堪え、未だ成長途中の小さな手のひらを見つめる。
 この人生が前世(?)と同じように進むとは思っていない。でも、もしも『間の悪さ』が今生でも受け継がれていたのだとしたら、またパパやママを喪うかもしれない。そう思うとゾッとした気持ちになる。
 でもガネーシャさんは『障害除去』の神様だ。基本的に『神様なんていない』と思っているジナコさんだけど、今回ばかりはピコっと、いや、ミクロぐらいは信じてみようかな。という気持ちになる。

「あ、ありがとう」
「うむ。今後は母上でなく我のことも“お兄ちゃん”と呼んで慕ってくれても構わんぞ」
「いや、そこは丁重にお断りさせて頂くっス」

 何故か微妙にショックを受けたような顔をするガネーシャさんだけど、素直じゃないのはジナコさんの特徴なので。それに今は子供だし。少しぐらい大目に見て欲しい。
 そんなガネーシャさんの背後から、挨拶周りを終えたのだろう。背後にお花でも背負ってそうな嫋やかな貴婦人――パールヴァティーさんが歩いてくる姿が見えた。

「あ」
「あら!」

 そして目が合った。合ってしまった。どう見ても子持ちには見えない年若い、相変わらず女子高生にしか見えない美女が素早くこちらに向かって駆けてくる。咄嗟に逃げようとしたが流石に良心が咎め――というより逃げた場合の方が厄介なことになりそうだったとかそんなことは思っていない――その細腕にどんな力があるのかと思わんばかりの勢いで抱きしめられる。

「ああ! ようやく会えました! ガネーシャ、じゃありませんでした。ガネーシャの依代だった貴女」
「お、お久しぶりッス、パールヴァティーさん」

 ギュウギュウと抱きしめられて若干苦しいが、一応子を持つ母だからか力加減は心得ているのだろう。痛みはない。どうにかこうにか挨拶を済ませると、パールヴァティーさんはニコニコと花のような笑みを顔いっぱいに咲かせながらこちらの頬を両手で包み込んでくる。

「カルデアでは結局、退去する時でさえ貴女の名前を呼ぶことが出来ませんでした。可愛い貴女。私のもう一人の我が子。どうかお名前を教えてくれませんか?」
「そ、そんな大げさな……」

 パールヴァティーさんが大袈裟なのは今更だが、それでも彼女はあんなイロモノサーヴァントだった自分を「ガネーシャ」として、そして「依代のアタシ」として気に掛けてくれた。スイーツなお花畑なうえに押しが強くて苦労したことは一度や二度ではないが、決して嫌いだったわけではない。見た目年齢が自分より年下だったこととどこかの小悪魔系AIと姿が酷似していたことが相まって所見は「ぎえええ!」とはなったけど。それも今や昔。だからほんの少しだけ照れ臭い気持ちを抱きながらも「ジナコ=カリギリっス」と答えれば、彼女は嬉しそうに目元を綻ばせる。

「ジナコ……! ええ、覚えましたとも。ジナコ、ジナコというのですね。何と喜ばしいことでしょう。これからはご両親だけでなく、私のことも「母」と思っていいのですよ」
「あー、それは……善処します……」
「ええ、ええ! ああ! そうだわ! 今度ジナコのお家にも挨拶に行きますからね! ご両親は何時頃ご在宅かしら?」

 相変わらずグイグイくる貴婦人だ。それでも今度の土曜日は父母共に休日だと告げれば、改めて挨拶に来ると言ってその日は何故かパールヴァティーさんのご自宅へとお招きされてしまった。いや。マジでなぜぇ?
 でもお招きされた先でペットのハムスターとしてムシカくんと再会できたのは嬉しい。ムシカくんもボクのことを覚えてくれていたみたいで、すぐにこちらの肩に昇ってくるとスリスリしてくれた。なんという可愛らしさ。なんというモフモフ。可愛いは正義。むしろ世界を救える。ムシカくん最高。

「そういやガネーシャさん。ガネーシャさんとパールヴァティーさんがいるってことは、つまり……」
「安心しろ。父上は最高神故人の世に下りることはない。あくまで受肉したのは我と母上だけだ」

 それはよかった。インドの最高神が民草に扮して生活するなんて想像がつかない。いや、厳密に言うとガネーシャさんとパールヴァティーさんもそうなんだけどさ。
 二人は(そのうちの一人はジナコさんが依代だったわけだけど)サーヴァントとしてカルデアにいたから、何となく想像は出来る。いや、でもパールヴァティーさん、日本に馴染めるのか……?

「そう心配せずとも良い。我らは人の形をとっていても神のままだ。如何様にでも出来る」
「はあ。そういうもんッスか」

 パールヴァティーさんがおやつとして出してくれたロールケーキに舌鼓を打ちつつ、ムシカくんを掌でモフりながら色々なことを話してその日はお開きとなった。

「ではジナコ。また後日ご挨拶に伺いますからね」
「うむ。ではな。くれぐれも両親に触れることを忘れるでないぞ」
「はーい。了解ッス〜」

 どうにも心配性な二人に送り届けられ、ガネーシャさんの忠告に頷きつつまだ誰も帰っていない家へと入る。それにしても、何だか白昼夢でも見ているようだ。あの二人とまた出会えるなんて。

「……カルナさんは、今頃どうしてるんっスかねぇ」

 沈みゆく夕日をカーテンの隙間から眺めて目を細める。あの夕焼けに似た髪色をしたヤンキーくんも、常闇を閉じ込めたような瞳を持つ授かりの英雄も。一緒に悠久の時を過ごした王妃も、愛妻家のコサラの王様も。今もどこかで聖杯戦争に呼び出されては戦っているのだろうか。もうアタシには関係のないことだけど。

「ジナコ〜、ただいま〜」
「! ママ! おかえりなさい!」

 物思いに耽っていると一足先にママが帰ってくる。今のジナコさんはまだ十歳だ。だからパタパタと足音を立てて廊下を走っても、勢いよく優しい体に抱き着いても文句は言われないのである。

「コラ、廊下は走っちゃダメでしょ?」
「はーい」

 まあ注意はされるけどね。
 それでも返事をすれば優しく頭を撫でられる。あったかくて、優しい手。ギュッと抱き着けばいい匂いがして、クスクス笑いながら髪を梳いてくれる。
 前は手入れするのが面倒でぼさぼさだった髪も、今はママが櫛を入れてくれるから真っすぐだ。この幸せを喪いたくない。もう二度と、あんな思いはしたくない。だから――

「ママ。おててギューって、して?」

 もし本当にガネーシャさんが力を貸してくれるなら――。

「あらあら、今日のジナコは一段と甘えん坊ね」

 微笑むママの手を小さな両手でギュッと握って願いを込める。祈りにも似たソレ。果たして本当に効力があるのか分からない。それでも、少しだけ、今はガネーシャさんの言葉を信じてみたかった。


***


 その後仕事から帰ってきたパパにも同じように「神様パゥワー」を分け与えた結果――。
 何と言うことでしょう。アイスバーンしたダンプカーが襲ってきたことまでは恐ろしいまでに一致しているというのに、ここでまさかのガネーシャさんの第二宝具――『帰名せよ、我は障害の神なり』が発動し、両親は無事だった。
 最初はあまりのことに腰が抜けたけど、この時ばかりは初めて『神様を信じてよかった』と思った。両親はかなり不思議がっていたけど、当然か。突然見えない壁が現れてダンプカーを跳ね除けたんだから。でも、本当によかった。またパパとママを喪うなんて冗談じゃない。だから一応『お礼参り』も込めて後日ガネーシャさんに報告しに行けば、ガネーシャさんは一緒に話を聞いていたパールヴァティーさんにも褒められて腹立たしい程のドヤ顔を見せてきた。でもまあ、今回は両親の命を助けてくれたのでよしとしよう。

 そんなわけでジナコさんは両親を喪うこともなく、ご近所のパールヴァティーさんとガネーシャさんとそこそこ、いや。実のところはだいぶ親密に過ごしながら中学を卒業し、初めての高校生ライフに足を突っ込んだのである!! ヒュー! これでジナコさんも花の女子高生!! 体重は前よりもマシとはいえ標準からはちょこーっと多いけど、それはそれ。
 パパは「大丈夫。ジナコはいつだって天使だよ」って言ってくれるし、ママも「五キロまでなら許容範囲よ!」とサムズアップしてくれた。
 まあ、美容と健康に煩いパールヴァティーさんからは「ダイエットしましょうね?」とは言われたけど。でもジナコさんは食べ盛りなので、ダイエットはもうちょっと待って欲しいところである!

 さて。『間の悪い』ことに定評のあるジナコさんにしてはかーなーり順風満帆、いやむしろ最高なのでは?! と言うほどのリアルが充実しまくってるライフを送っているわけですが。ここにきて。なんと。にゃんと。思わぬ『障害』が。(平凡に生きる、と言う意味で)

「皆席つけ〜。今日はインドからの編入生が来てるから紹介するぞ〜」

 眼鏡をかけたそこらへんにいそうなモブ中のモブこと担任教師が、今日もよれよれのワイシャツを身に纏いつつ教室に入ってくる。
 そういえばこの間の集会でインドから何人か学生が編入してくる。って話があったっけ。パールヴァティーさんやガネーシャさんに報告しようかな。と思ってたんだけど、何かみょ〜に忙しそうで声かけない方がいいかな〜。とか思ってたから結局報告出来ず仕舞いだ。だから帰ってから話をしよう。
 あ。そういえばインドでの使用言語はヒンディー語だったよね? 英語ならともかくヒンディー語は自信がない。でもどんなに言葉の壁が立ち塞がろうとも、今は便利で高性能な翻訳アプリがあるので問題なし! むしろマハーバーラタの話とかで盛り上がれるかもしれない。
 コミュ障ヒキニートだった時代からは考えられないほどの前進を見せているジナコさんが「ふひひ」とカーディガンの袖の下で笑っていると、担任の後ろから姿を現した二人の男女に全身が凍り付いた。

 ――な、なななななな……! なんで、なんでここに――!

「――何でここにカルナさんがいるの?!」
「む? その声は、ジナコか?」

 教室に入ってきたのはどう見ても『インドから来ました』とは思えないほどの白い肌をした人形じみた男――見間違うなんてありえない。だって彼は私の最推しのヒーロー、施しの英雄こと『カルナ』なのだから。

「それに、ラクシュミーさんまで……!」

 続いて入ってきたのはアタシと同じ学生服に身を包んだキリっとした瞳を持つ美しい女性――『ラクシュミー・バーイー』さんだった。
 二人は、特にカルナはこちらを見ると目を丸くし、あろうことかそのままズカズカと近寄ってくる。

「ジナコ、そうか。やはりここだったか」
「ガネーシャ神……! よかった! こんなに早く会えるとは!」
「え、あ、あの、ちょっ、」

 確かに声を出したジナコさんが悪かった。でも担任や周囲の生徒がビックリ仰天する中マイペースに話しかけないで欲しい。というかカルナさん。何故アタシの手を握る?!

「そうか。そうか……。今生では未だトドではないようで安心した。無論あのマナティーに酷似した姿が愛らしくないわけではなかったが、健康面での憂慮はあった。憂いが晴れて喜ばしい限りだ」
「初っ端から失礼か」
「む。褒めたつもりだったのだが」
「下げてんのか上げてんのか分からない言葉は『褒め言葉』とは言わねーんスよ」

 ありえないはずの『再会』から僅か数秒でこのカルナ節よ。うん。これは間違いなくカルナさんだわ。本当失礼なんだから。でも、何で二人がここに?

「ガネーシャ神、ではなかったな。えっと、その……じ、ジナコ殿」
「ら、ラクシュミーさん! 殿、だなんて大袈裟っスよ! ボクのことは『ジナコ』って呼んでくださいッス」

 どこかの魔王でもあるまいし。殿だなんてつけられるほどジナコさんは偉くもなんともない。むしろ付けるなら王妃であったラクシュミーさんに、だ。でも彼女は何故か驚いたように目を丸くすると、浅黒い肌であっても一目で分かるほど頬を染めて微笑んでくれる。

「そうか……。貴殿の名を口にできるとは、何と喜ばしいことだろうか。ジナコ、かつてガネーシャ神の依代であった貴殿の本当の名を呼べることは、この身に余るほどの光栄だ。貴殿と再び言葉を交わせることも含め、私は今、喜びと感動に打ち震えている」
「そ、そんな大げさな……えへへ。でも、ボクも嬉しいッス。ラクシュミーさん、また、その……あ、アタシと仲良くしてくれたら嬉しいかな、って……」
「勿論だ! むしろこちらこそお願いしたい。改めて、よろしく頼む」

 カルナさんが握っていた手とは逆の手を握られて照れ笑いを浮かべていると、どこか気まずそうな声が「あー」と割って入ってくる。

「カリギリ? お前、編入生たちと知り合いだったのか?」
「へ?」

 ありありと『困惑しています』という表情を浮かべる担任に声を掛けられ、改めて今ここがどこで、どんな状況なのかを省みる。
 ……うん。完全に周囲のこと見えて無かったわ。やっちまったぜ。

「つーかラクシュミーさんはともかく、カルナさんはいつまでジナコさんの手を握っているつもりッスかー!!」

 ブンブンと片手を勢いよく上下に振るが、この英雄。ちっとも引かない。何故?!

「ジナコ。ジナコ=カリギリ。我が得難き光、大輪の花よ」
「ほあ?! ちょ、突然何言い出すの?!」
「時間がないようなので急な話になるが、俺はお前と会うためにここに来た」
「ふぁ?!」

 な、なん、なに、なに言ってんの? あ、あああアタシに会うためとか……! は! まさか、ここにいるカルナはアタシの知る『カルナ』ではなく、どこかの世界戦で生まれた乙女なゲームの攻略対象になっている『カルナ』なのでは?!

「俺は電子遊戯の登場人物になった覚えはないぞ。俺の出自が気になるならばマハーバーラタを読むといい」
「いや知ってるわ! マジレス乙!」
「そうか。そうか……。ならばこのまま続けさせてもらう。ジナコ=カリギリ。未だ我が身は凡夫なれど、どうか俺の妻になって欲しい」

 ………………………………は?

「はあああああ?!?!」

 ちょ、は?! 待って?! なにこれ?! どういうこと?!

「いいいい意味わかんない! 何言ってんのカルナ! 熱でもあるの?!」
「気遣ってもらって悪いが、至って健康だ。むしろ絶好調ともいえる」

 なにが絶好調じゃい! こっちは頭の中でムシカくんがグルグル回るぐらい大混乱だっつーの!! このままムシカ君が溶けてバターになったらどうしてくれる!!

「無論今すぐ答えを出さずとも構わない。だが、いずれ答えを聞かせてくれ」

 そう言って手を離され、呆然と佇むアタシたちに周囲の視線がガンガンと集まっている。
 ど、どうしろと……この状況をどうしろと言うんだ……ボクは貝になりたい。

「あー……とりあえず、二人共こっちに戻ってもらえるか? 自己紹介してもらいたいから……」
「承知した」
「すまない。彼女と再会できる喜びに段階をすっ飛ばしてしまった。許して欲しい」「い、いえ……」

 (見た目だけ)年下の二人が醸し出す圧倒的オーラに担任もタジタジになっている。もしこのクラスの担任が暴風雨のような破壊神のようなタイガー先生であれば違ったのだろうが、生憎この教師はド一般人だ。世界で語られる英雄と王妃のカリスマ性に圧倒されても仕方がない話である。むしろ哀れ。南ー無ー。(チーン)

 だが『哀れ』なのはアタシもだった。担任から『二人の共通の知り合い』ということで何と左右を包囲されたのである。なんてこったい。

「つーか二人共日本語お上手ッスね……」
「ああ。此度の現界、及び受肉に関してはパールヴァティー様を始め、シヴァ神のお力添えがあったんだ。それに、カルナに至っては太陽神にも背を押されたと」
「その通りだ。我が父スーリヤもお前を妻として迎えることに同意してくれた。あとはガネーシャ神とシヴァ神を説得するのみ」
「いつの間にそんなことになってたの?! っていうか突っ込みどころが多すぎてもはや何から突っ込めばいいのか分からない!」

 HRの時間なんてあっという間だ。それに、周囲は二人に話しかけたくても出来ないのだろう。当然だ。突然編入してきた絶世の美男子がそこらへんに転がっていそうな道端の石ころに向かって求婚したとなれば遠巻きにするというもの。まったく何してくれてんだこの英雄は。

「む? そろそろ授業が始まるようだ。カルデアではケイローンの授業を幾度か受けたことがある。楽しみだ」
「いや、あの賢者様と一緒にしちゃ教師陣が可哀想ッスよ……お手柔らかにお願いするッス……」
「そうか。お前が言うのであればそうしよう」

 どこかソワソワとしている二人に挟まれながらの授業は当然ながら身に入るわけがなく。いつもは欠伸をしながら右から左へと聞き流す時間が常に胃が痛いだけの時間に様変わりしてしまった。本当にどうしてこうなった。

 だが衝撃は更に加速する――。むしろ創世と滅亡は表裏一体だった。あ。これオルタくんの方か。

「はい。そちらは私(オルタ)の詠唱です。本来の私(アルジュナ)のものではないかと」
「ですよねーあははー、ってなんでアルジュナくんたちもいるんすか!!!」
「少し声を抑えなさい。周囲の好奇心を悪戯に刺激してはいけません」

 生徒たちの安寧、もとい昼休み。当然のように私はカルナさんとラクシュミーさんの腕を掴んで落ち着いて話せる場所――ようは人の視線が集まり辛い場所に行こうとしたのだが、一足遅かった。
 突然目の前で扉が開いたかと思えば、そこに立っていたのは二人の美丈夫――アルジュナくんと異聞帯での王、そしてアルジュナくんのもう一つの側面を持ったアルジュナオルタくん(再臨後の姿)が立ちはだかっており、思わず絶叫した。
 しかもそれだけにとどまらず――

「カァアアルナァアアア!!! こっちにはガネーシャサマいなかったぞ、っているじゃねえか!!!」
「まさか学年自体が違ったとは! だがしかしこれで皆が揃ったな! めでたいことだ!」
「あいええええ?!?! まさかのヤンキーくん?! それにラーマくんまで……!」

 インドサーヴァントが勢ぞろいとはこれ如何に。え? なに? インドサーヴァントで聖杯戦争でもすんの? っていうかアルジュナオルタくんは異聞帯の王様だったから人理が取り戻された現代ではもう存在証明が出来ないサーヴァントじゃなかったっけ?

「そこは、はい。私(アルジュナ)なので」
「授かったとでも言うんですか」
「はい。人の体とは不自由なものであったとしみじみ思い返しています。宙に浮けないことがこれほどまでに不便だったとは……ふふっ。懐かしいです」

 不便と言いつつどこか嬉しそうなオルタくんに苦笑いしている間にもヤンキーくんことアシュヴァッターマンさんと、コサラの王ことラーマくんが近づいてくる。

「久しいな、ガネーシャ神。息災だったか?」
「なんつーか、今生では随分とこじんまりしてんなぁ。ガネーシャサマよぉ」

 教室の入口で、全方位インド人に包囲されたジナコさんの心境を誰か分かってくれ。ネタで「インド人は右に」なんて口が裂けても言えない。主にメンタル的な意味で。

「それより、これから昼食を摂るのでしょう? カルナでは説明不足になること必須ですので、私も共にと思ったのですが」
「む。どういう意味だアルジュナ。俺はもう一言足りないと言われる男ではないぞ」
「つーかお前らいい加減入口から退け。周りの迷惑になってんだろうが」

 見た目と言動はともかく、中身は意外なほどに常識人なアシュヴァッターマンさん(制服着用)に促され、どこか呆然としつつ華麗なUターンを決め、再び席に着くことになった。
 逃げ場が……ないッ!!

「あの……それで、これは一体どういうアレが何がそれでどうなった結果こうなったんすか?」
「質問が一周している気がしなくもありませんが、端的に言えば“カルナの嫁探し”です」
「この場合の“嫁”はガネーシャサマ(依代の方)になるがな」
「俗にいう『シンデレラ』だな!」

 どこがシンデレラ?! なにがシンデレラ?! あれか?! ガラスの靴を頼りにお后様を探す的な意味合いでシンデレラって言ったの?! ラーマくん! でもこの場合のジナコさんは『死んでらぁ』だよ! 何が悲しくて“推し”とけ、けけけけけケコーン、しなきゃいけないわけ?! ジナコさんなんかした?! 舞踏会に行った覚えなんてありませんけど?!

「確かに舞踏会には出ていませんね。あなたは引きこもりでしたから」
「すべては……些事……」
「些事じゃない! 些事じゃないよオルタくん! あとそのスープにはスプーンと言う名の匙を使おう! はい!」
「む……ありがとうございます」

 黙々と食事を進めるカルナさんたちからどうにかこうにか話を聞きだした結果、何でも人理を救う戦いの後もカルナさんは幾度か聖杯戦争に参加し、その度に『以前のマスター』であるジナコさんの話を当時のマスターたちに披露したと。だがマハーバーラタには『ジナコ』なんて名前を持つ人物は出てこない。当たり前だ。如何に記憶に残るであろう大ハズレマスターだったとはいえ、ただの一マスターに過ぎなかったのだから覚えている方が可笑しいのだ。第一マスターとの思い出なんて記録はされても座に刻まれることなどない。それはサーヴァントとしての“決まり”のようなものだ。
 だけどこの施しの英雄はガネーシャさんがかけた認識阻害だけでなく、その“ルール”さえも破り続けたのだという。

「おかげであらゆる世界線で混乱がおきまして。見かねた太陽神が『もう嫁にして座に連れて帰ってしまえ』と」
「そうすりゃカルナも落ち着くだろう。ってことになったんだが……」

 いやー、二度目の人生を歩んでいるジナコさんであっても何を言っているかサッパリだぜ! いや本当に何言ってんのこの人たち。
 まともに食事が勧められず突っ伏せば、ラクシュミーさんが慰めるように背を撫でてくれる。うう……優しさが胸に沁みるッス……。

「ジナコ。安心しろ。俺と共に座に刻まれようともお前が聖杯戦争に参加することはない。例えお前を望む者がいたとしても、俺が代わりに出撃しよう。クラスはランチャーだ」
「いや、そうじゃねえ。そうじゃねえッス……」

 何故かドヤ顔を決めるカルナさんに額を押さえる。
 確かに戦闘なんて二度と御免だが、それよりも。それよりもまず気になることがある。

「あの、アタシ生身の人間なんスけど。どうやって座に連れて行くつもりなんッスか?」

 百歩どころか一億歩、いや。二兆歩ほど譲ったとして、だ。例えもし仮にアタシとカルナがその……“ソウイウ関係”になったとしたら、だ。一体どうやってアタシの存在を座に刻むというのか。だって、座に刻まれるってことは即ち――

「殺しはしない」
「ッ!」
「如何な火の粉も全て俺が振り払おう。お前には指一本たりとも触れさせはしない」
「カルナ……」
「例えそれがスーリヤの意向であったとしても、俺は命ある限りお前を庇護すると誓う」

 月で会った時と変わらない真っすぐとした瞳。澄んだ大空の中に、燃え盛る炎のような赤が散る。

「ふひっ、もう、カルナさんってば。格好つけてるところ悪いッスけど、ほっぺたにご飯粒ついてますよ〜、っと」
「む。すまない。カルデアで慣れたつもりではいたが、やはりこの“おにぎり”を食すのは難しい」

 むう。と少し照れたように頬を染める彼の口の端についていたご飯粒をとり、捨てるのももったいないからそのまま口にすれば何故かアルジュナくんがチベットスナギツネみたいな顔をする。
 し、仕方ないじゃん! 床に落ちたわけじゃないし! ご飯一粒の中には七人の神様がいるっていうし! それがなくとも食べ物を粗末にするなんてジナコさん的にはNGです!

「そうではな……いえ。もういいです。所詮あなたたちは割れ鍋に綴じ蓋。幾ら言ったところで無駄なことです」
「ひっど! アルジュナくん酷いッス! ねえ、オルタくん!」
「ひゅべへはひゃじ……」
「あ、もぐもぐしてる所に話しかけてごめんね?」

 頬が膨れる程口いっぱいにご飯を詰めてもぐもぐしていたオルタくんから視線を戻せば、呆れたような顔でこちらを見ていたアシュヴァッターマンさんが代わりに答えてくれた。

「俺たちがガネーシャサマ、じゃなかった。今はジナコだったな。お前に手を上げることはない。現界する際にパールヴァティー様から『ジナコは私の娘なので! 手に掛けたら絶対に許しません!』と仰せつかっている」
「例えそのような言がなくとも、私は貴殿を傷つけたりはしない」
「うむ。ラクシュミーの言う通りだ。むしろその逆だな。我らは貴殿を保護するためにいる」
「へ? どういう意味、っスか?」

 保護? アタシを?
 ぐるりと皆を見回せば、一様に頷きが返ってくる。

「言ったでしょう? この度の現界は聖杯戦争のためではなく、カルナの“嫁探し”だと」
「俺とアルジュナはカルナが暴走した時のためのストッパー、聖杯戦争で言う所の“抑止力”みたいなもんだ」
「私は、異聞帯のこととはいえ貴殿とは長く時を共にした。この縁を辿って貴殿を探す手助けになれば、と思い、パールヴァティー様たちに志願したのだ」
「余は異聞帯含めカルデアでの縁がある。そなたとカルナの幸せを、友として、王として、後押ししてやろうと思ってな」
「みんな……」

 それぞれの言い分は分かる。特にアシュヴァッさんの『対カルナさん専用ストッパー』発言は大いに頷ける。ただその相棒がアルジュナくん、っていうのがどうかと思う。むしろ火に油なのでは?
 それに、オルタくんは何故現界したのだろう。彼は異聞帯での神様だ。そしてその存在に疵をつけたのはアタシだ。怨まれるならともかく、宿痾であるカルナを手伝うなんてどういう風の吹き回しだろう。
 じっと凪いだ瞳を見つめていると、口の中のものを嚥下したのだろう。オルタくんが話し出す。

「私は、神でした。不完全な、不出来な神。完全な神であった私を不出来にしたのは貴女だ。貴女がいなければ私の存在証明もまた変わる。この星のようでこの星ではない座に刻まれた私の零基が歪むほどの存在。ですが……私は、貴女を好ましく思います。カルナに貴女を差し出すのは惜しいですが、貴女がそれを望むならば、私は貴女の力となりましょう」

 オルタくんはそっと口元を綻ばせて、穏やかな口調で諭すように語る。正直オルタくんにそう言ってもらえるなんて思ってもいなかったから、なんていうか……不謹慎かもしれないけど、嬉しい。でも、嬉しいんだけど、ちょっと待って欲しい。

「皆、何でまだ返事もしていないのにカルナさんに嫁ぐこと前提で話すんスか?」
 耐え切れずに突っ込めば、今度はアルジュナくんだけでなくアシュヴァッさんまで残念なものを見るような目をし、ラーマくんはバナナを食べながらサムズアップし、ラクシュミーさんは頬を染めて俯いた。
 なぜ?!

「はあ〜? シヴァ臭いと思ったら何です? この空間。誰か消臭剤とか持ってないんですかぁ〜?」
「む! このねっちょりぐっぴょりとした話し方は――カーマさん!」
「ちょっと! どういう認識の仕方です?! ソレ! 失礼すぎません?!」

 カツカツと鋭い足音を立てて教室に入って来たのは、何がどうしてそうなったのか。白衣を纏った妖艶な美女――カーマさん(大人の姿)だった。

「私はくっだらない授業を受けるなんて真っ平ごめんですから。折角なら純情なお猿さんたちのような性少年たちを無限に愛してあげようと、保険医を選んだまでです」
「うーわぁ。使い古されたAVの設定みたいっスねえ」
「愛欲の女神としてはその評価に思わないこともありませんが、どーせお得意の煽り芸でしょう? で? 今のは女神として褒めているのか、それとも貶しているのか。どちらです?」
「いひゃいいひゃいいひゃい! ほめへまふ! ほめへまふー!!」

 ギリギリとほっぺたを伸ばされ、解放を願って思ってもいないことを口にすればカーマさんは「フンッ」と不機嫌そうに鼻を鳴らしてから手を離す。うう……痛かった……。

「前に比べたらもちもち感が足りないので少々残念ですが、まあいいでしょう。どうです? 私と一緒に堕落した生活に溺れませんか? 私なら、どこかのスイーツ女と違って夜食のポテチもアイスも許してあげますよ?」

 言葉だけ聞けば「何とも魅力的!」となるんだけど、相手がカーマさんだからなぁ。正直ロクな目に合わないこと確実だ。危ない橋はどんなに叩こうが渡らないジナコさんなのである。というわけで、

「丁重にお断りするッス」
「それがいい。幾ら推奨される体重より聊か多かろうと、今のジナコをマナティーへと進化させるわけにいはいかない」
「だから言い方!」

 人のことを嫁にするだの何だのと言っておきながらこの言い様。まさに暴言の雨あられ。ランサーなら槍降らせろって話ッスよ。……いや。普通に怖いから今のなしで。

「そもそも俺はジナコを手離す気など毛頭ない。諦めろ」
「ぐッ……! そういうとこ……そういうとこッスよ、カルナさん……」

 推しと恋愛関係になるなんてNGなジナコさんだけど、それはそれ。乙女ゲー的発言をイケボでされるとピコッとは揺らぐわけで……いや! それでもアタシがカルナさんとどうこうなんてありえないんスけど!!

「ま、いいですけど。それじゃあガネーシャ、愛されたくなったら保健室にどうぞ」
「うへぇ……」

 早くあの人どうにかしないと。そのうち保健室がラブホにされてしまう。そういうシチュが萌えないわけじゃないけど、アレは二次元だから許されるのであって実際にされるとだいぶ気まずいっていうか、衛生管理的にどうなの? って思うわけで。だからジナコさんは極力保健室のお世話にならないことを誓うのであった。まる。

「はー……何だかんだと話を聞くだけで昼休みもう終わるし……。全然お休みにならなかった……」
「む。ジナコ。食後すぐに眠るのはよくない。日本語には“牛になる”というコトワザがあるのだろう? 今生ではマナティーではなく牛になるつもりか?」
「ああもううっさい! カルナさんのバーカっ!!」

 再会してすぐに求婚してきたかと思えばいつも通り失礼なことばっかり言って。もう訳が分からないよ。おかげで今日はクラスのみんなから変な目で見られるし。他人の視線が苦手なジナコさんとしては生き地獄です。本当にありがとうございません。
 ……まあ……でももう会えないと思ってたから、ピコっとは嬉しいけど、ね? それに推しの学生服スチルの回収とか本当、あの、眼福です。どうもありがとうございます。

「あー、そろそろ移動しないと不味いッスね。カルナさん、ラクシュミーさん、次移動教室だから準備して行くッスよ〜」
「移動教室? 教室が動くのか?」
「あ。いや、そうじゃなくってー……」

 どうせ変な目で見られるなら、この夢みたいな時間を少しぐらいは楽しんでしまおうか。これでも中身は色々経験したジナコさんだ。突然神様にされるよりマシな気もするし。うん。求婚については一時保留と言うことで! カルナさんも「すぐに答えを出さなくてもいい」って言ってたし! 今後の自分に丸投げということで! 未来のアタシによろしくぅ!

「ほら、カルナさんも行くッスよー」
「承知した」

 トコトコと後をついてくるカルナさんと、現代日本について質問をしてくるラクシュミーさんと共に夕暮れに染まっていない校内を突き進む。
 月の裏側でもない。ノウム・カルデアでもない。本当に極々普通の生活に皆がいるのは変な感じではあるけど……。うん。たまにはこういう世界線も、悪くはないよね?


 因みに放課後ガネーシャさん家に報告しに行ったら、かなり疲れた様子で「突破された……我、障害除去の神なのに……」って落ち込んでたから、まぁ……うん。そういうことなんだと思う。ガネーシャさん乙。


終わり


 ただ単に学生ジナコに求婚するカルナさんが見たかっただけの話。
 ジナコさんは月のこともカルデアのことも大体は覚えてるけど全部じゃない。(負荷がかかるから)でもカルナさんや皆と過ごしたかけがえのない日々のことは覚えてる。

 カルナさんは安定のカルナさんです。いつでもどこでも「以前のマスター」について口にする。マスターとの関係が良好であればあるほどジナコさんの名前が頻繁に出るので、マスターたちは「え? ジナコって誰?」ってなった結果文献を漁る。でも当然ながら出ない。なのにカルナさんはジナコさんのことを何度も語っては零基に上書き保存するので、座から「ええ加減にせえよ」って通告来たけどそれすら根性で突破。見かねたパパ上が「息子よ。もうその娘を娶って座に連れて帰れ。そうすればお前も多少は落ち着こう」とか言い出して「それだ!」と天啓を受けたような顔をしたカルナさんに、アシュヴァッさんとアルジュナくんが「悪手! 誰かストッパー、って俺らしか無理か!!」ってなってこうなった感じです。

 因みにパールヴァティーさんは普通にジナコが心配&可愛がりたくて受肉。ガネーシャさんはジナコさんが母上に振り回される未来が見えたことと、ムシカくんから促されて「仕方ないか」って感じで受肉した感じです。ジナコさんに「神様パゥワー」を与えたのはあの一度きり。それでもあらゆるものを突破してくるカルナを一応(と書いて本気と読む)でジナコに近づけさせまいとしたけど無理でした。

 色々と頭の悪い話になりましたが、自分としては楽しく書けたので満足です。
 細かい設定などガン無視、ジナコのジナコたる所以も否定するような話ではありますが、大目に見て頂けると助かります。
 ここまでお付き合いくださりありがとうございました。m(_ _)m

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