小説
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カーテンの隙間から月の光が差し込む中、サクラはぽつりぽつりと自身がこの後色の任務があることを掻い摘んで話す。
本来ならば他里の者に任務の話をするの禁止なのだが、相手は我愛羅だ。他言しないだろうと妙な信頼感があった。
そしてあわよくば、きっともう体験しているであろう彼に何でもいいから何か教わりたいとも思っていた。

ある程度のところまで話終わると、自分が未だそういう経験がないこと、そして己の身が未だ清いままであることも洗いざらい話す。
普段の自分であれば他里の、しかも風影である我愛羅に何を相談しているのかとツッコミをいれるだろうが、当時そんな余裕がなかった。
今までの任務とは明らかに違う“女”という部分を駆使して遂行しなければいけない任務に思った以上に不安を覚えていたのだ。

そして我愛羅からしてみても、くノ一の色の任務は好ましいものではなかった。
己の身内にくノ一がいるからか、とかくくノ一に色の任務を宛がうことが苦手であった。
苦手というと語弊があるが、いくら忍とはいえ女は身篭る可能性があるのだ。だからこそ安易に色の任務を言い渡すのに気が引けた。
望まれぬままに生まれた子はどういう風になるのか、それは自分が一番理解しているし、自分の二の舞になるような子供を増やしたいとは思わない。
だからこそ我愛羅はくノ一に色の任務を請け負ってもらう際、極力身体に影響のない程度に薬を服用するよう提示していた。

そんな我愛羅であるからこそ、サクラの話を聞くと顔を曇らせた。
ただでさえ色の任務に気を使う我愛羅が、それを聞き何も思わないはずがない。
それにサクラは我愛羅の大切な友人であるナルトの想い人だ。直接ナルトに聞いたことはないが、ナルトの態度を見れば一目瞭然である。
だからこそサクラの色の任務に対し何とも形容しがたい感情を抱いた。

「…ねぇ我愛羅くん」
「何だ?」

暫く互いに無言でいた中、サクラは己の組んだ手先を見つめながら我愛羅に問う。

我愛羅くんは、初めて色の任務に就いた時どんな感じだった?と。
それを聞いてどうする。以前の我愛羅ならそう答えたであろうが、我愛羅にとってサクラは友人の大切な人だ。
無碍にするわけにもいかず、我愛羅は身内にも話したことのない己の色の任務のことを話し始めた。


我愛羅の初めての色の任務は、他里の富豪の女からビンゴブックに載っている忍の情報を聞き出すというものだった。
富豪というのだから思わず恰幅のいい熟女を想像したサクラだが、我愛羅は大層な美女だったと答え、思わずよかったわね。と嫌味を言いそうになり慌てて口を閉ざす。
だが我愛羅はそんなサクラに気づくことなく話を進める。

任務を言い渡された当時、我愛羅もまた女を知らぬ身であった。
どうしたものかと悩んでいると先に色の任務を体験していたカンクロウに遊郭へ行けと助言をもらったらしい。

「そこで初体験してこいって言われたの?」
「それもあるが、色のいろはを聞くなら専門に聞け、というものだろう。俺はそう解釈して遊郭へ行った」

実際に我愛羅は姉であるテマリが任務で不在の時、カンクロウと共に遊郭へと赴いた。
普段であれば断固拒否したい場所であったが、任務となれば仕方がない。
金はかかるがいずれは必要になる知識だと腹を括ったらしい。
男にしては随分欲のない我愛羅に、この人は本当に男性としての欲望があるのだろうかと俄かに心配になったが、黙って続きを促した。

我愛羅は色事に乗じるというよりも、芸者に色のいろはを学ぶことに重きを置いて遊郭に何度か足を運んだ。
勿論知識だけで体験がないのはダメだということで、実際に何人かの芸者と寝たらしいが、我愛羅曰くしんどかったらしい。
サクラは今度こそ我愛羅の男としての性について心配し、我愛羅くんって性欲あるの?と思わず口にしてしまい慌てて口元を覆うが、我愛羅はあまり興味ないな。とあっさり答えた。
だからあまり男臭さを感じないのか。と思ったが、その考えはそのうち彼自身の手によって覆されることになる。


その後遊郭で色事のいろはを学んだ我愛羅は任務へと赴いた。
だが想像以上に富豪の女から情報を聞き出すのは大変だったようで、任務は相当難航したらしい。
何故、と問えば、我愛羅は今までにないほど渋い顔をした後、俺に女心など分かるはずないだろう…と呟き頭を抱えた。
あまりの項垂れっぷりに思わずその背を擦ってしまうほどに。

項垂れる我愛羅が言うには、その富豪の女性は相当気が強かったうえ我儘で自分本意なところが多かったらしい。
そのくせ、やれお前は女心がわかっておらぬだの、やれお前は女性の扱いがなっておらぬだの相当こっぴどく叱られたようで、今でもたまに夢に出る。と心底嫌そうな顔をする。
任務自体は何とか遂行できたらしいが、もうあんなのはこりごりだと肩を竦めた。
相当苦い思い出らしい。サクラは我愛羅に悪いとは思ったが、つい笑ってしまった。

そして我愛羅は、もう一つ別の色の任務の話をし始めた。
それは大名の娘が風影になったばかりの我愛羅に名指しで処女をもらって欲しいという話しだった。
サクラは嘘、と目を見張ったが、我愛羅は本当だ。と当時を振り返りつつ答える。

我愛羅はかの美女以来色の任務には殆ど就いておらず、風影になってからは尚更だ。そして久しぶりにその手の任務が来たと思ったら相手は大名の娘で更に処女。
勿論処女の相手などしたことがない我愛羅はこれは大変だと再び世話になった遊郭へ駆け込み、またも芸者たちにご教授賜ったらしい。
そうして時には書庫へと足を運び、人体関連、性の技法に性のいろはなど、様々な本を読み漁ったという。
そんな我愛羅の勤勉な性格に、真面目だなぁ。と今更な感想を抱く。


我愛羅がその大名の娘と会うまでには期間があり、職務の合間にひたすら勉強を続けたという。
どれほどかと問えば、寝食を侵すほどで、呆れたテマリから医療忍者にでもなるつもりか、とからかわれるほどだったという。
しかし勤勉な我愛羅はそれでも情報収集に余念がなく、何か疑問に思うことがあれば芸者を訪ね、それが出来ぬ時は恥を忍んでくノ一たちに頭を下げて話を聞かせてもらったらしい。
だがさすがに処女の体験を聞くのは憚られたので、どういった対応をされると不安にならないかとかそういうことを主に聞いたらしいが
それでも正直その時は死にたいと思った。と語る我愛羅の横顔は暗く、まるでこの世の終わりを見たような表情であった。
流石にその時は同情したが、処女の女相手にそうやって真剣に向き合う我愛羅は素晴らしい男だとも同時に思った。

だがくノ一たちは存外あっさりと受け答えしてくれたから助かった。と我愛羅はのたまったが、サクラからしてみれば当然な話だ。
何せ風影である我愛羅からの直々の相談を断れる忍はそうそういないだろうし、それを除いたとしても高嶺の花である我愛羅に話しかけられれば嬉しいだろう。
事実話を聞くと相当恥を忍んで尋ねた我愛羅に、年上のくノ一たちは悦び勇んであれこれと教えてくれたらしい。
本当に羨ましい話だと思う。

そんなサクラに構わず我愛羅は話し続ける。
我愛羅が調べたところによると、その大名の娘というのが好きでもない男と結婚せねばならぬ不憫な身の上だったらしい。政略結婚というやつだ。
どうせ好きでもない男に抱かれるなら、この里の長である者に純潔を散らしてもらいたい。そんな理由で彼を指名してきたらしい。
気持ちはわからんでもないが何とも悲しい話だ。
サクラたちくノ一は任務だから相手に身を任せるのは一時のことだ。だが娘は結婚という形で縛られ、一生を好きでもない男と共に過ごす。
様々な男に足を開くのと、一生好きでもない男と過ごすのと、どちらが地獄かと問われれば難しい。
だが己は忍だ。そう考えるとやはり少々我慢して一時見知らぬ男に足を開く方がマシな気がした。
あくまで少しましなだけであるが。

そして我愛羅の任務は予定されていた通り行われることになり、それなりに高級な宿でその娘と顔を合わせたらしい。
当初その娘は本当に我愛羅がこの任務を受けてくれるとは思っていなかったらしく大層驚いたらしいが、忍側からしてみれば当然の話だ。
大名からの任務を断るなど相当な理由がなければ無理だ。
特に今回のような事例の場合であっても、大名側から提示されれば断ることは難しい。
我愛羅自身相当渋ったが、任務を受けるにしても受けないにしても大名にとかく何かを言われることは分かっていたので、どうせならその娘の意思を汲もうと請け負ったのだった。

だがそんな内事情を娘に教えるつもりはなかった我愛羅だが、これだけは言っておかねばと娘に告げたことがあるという。
それを聞いたサクラは本当に女心が分かっていないと呆れたが、そんなこと男である我愛羅に分かるはずもない。

我愛羅は大名の娘にキッパリと自分は処女を抱いたことはないと告げたのだ。
それだけでも大分デリカシーのない話だが、そんなことを気にする我愛羅ではない。
そしてたたみかけるように、経験も少なく苦痛しかないかもしれないがいいのかと尋ねたらしい。
これでは美女に叱責されるのも当然だと呆れつつ教えてやれば、やはり我愛羅は心底不思議そうな顔をした。

だがそんな不躾な我愛羅を娘は怒るでもなく、楽しげに笑うとそんなものははなから求めてはいないと言い切ったらしい。
毅然とした娘だと感心する。

歳を聞けば当時まだ十の半ばだったそうで、サクラが同い年のころ果たして同じセリフが言えただろうかと考えてみたが、きっと無理だと思った。
そして我愛羅が胸の内を告げたからか、娘も余計な気遣いをすることなく胸の内を吐露したらしい。

己の初めての相手は結婚相手の男以外ならだれでもよかったと。父親の言う通りに生きることは避けられない。けれど一度でいいからはむかってみたかったと、そんな悲しい理由だった。
それでも娘にとっては大切な処女を捧げるのだ。相当な覚悟を決めての決断だったのだろう。
そんな決断を自分の娘にさせるとは、親である大名は愚かだし汚い大人だと顔を顰めれば、我愛羅も同感だと頷いた。

その後娘とはすぐに閨に入らず、今のサクラと同じようにしばし並んで会話をしたらしい。
大概は娘の親に対する愚痴であったらしいが、誰にも言えぬことだったのだろう。我愛羅は無碍にすることもできずただ耳を傾けた。
そのうち娘は言いたいことを言ってすっきりしたせいか、初めて相対した時とは違う顔で笑い、改めて自身の処女をもらってほしいと頭を下げたそうだ。
それに対し我愛羅は随分と困惑したが、顔を上げた娘の瞳に確固たる意志が見て取れたので、腹を括ったという。
よろしくお願いします、と震える声で告げた娘に我愛羅は優しくする。と答え、その娘の手を引き閨に連れて行ったらしい。

我愛羅より年下の、わずか十余年しか生きてきていない娘だ。褥に入ってからはひたすら彼女をいたわるように肌を撫でたらしい。
他者と肌を触れ合わせたこともない。男の体など見たこともない。そんな娘のために彼も文字通り一肌脱いだのだ。
破瓜の痛みは人それぞれだと聞き学んでいた我愛羅は、娘の膣を十分に濡らし、馴らし時間をかけてその体を開いた。

大丈夫だった?と問えば、出血は少なく痛みもそれほどないと言われたが、実際はどうだろうな。と答える。
確かにそれは本人でなければ分からぬものだが、出血が少なく済んだのは我愛羅が娘の体のことを配慮して事を運んだからだろう。
女心が分かっていないとはいえ、人としての優しさを十分持っている我愛羅の行為はさぞ優しいものだっただろう。
その時サクラは少しだけ、その娘を羨ましく思った。

そこで我愛羅は一旦話を区切ると、男の色は存外楽だろう。と呟く。
男は吐き出すだけだが女は違う。受け入れれば身篭る可能性がある。愛してもいない男の子供を宿すなど恐ろしいことこの上ない。
だかららこそくノ一に色の任務を与えたくないと思うのだが、それでも必要がある時はあるのだ。それが心苦しいと小さく呟く我愛羅の横顔はどこかもの哀しげであった。

そんな我愛羅に何も言えず、代わりにその後どうしたのと問えば、何事もなく娘を家に送り届け任務を終えたと我愛羅は答えた。
だが体よりも心が疲れたと瞼を伏せる。
何故?と問えば、我愛羅は娘を思い出すかのように遠くを見つめながら口を開く。

一人の娘の覚悟を背負った。忍とは違う一般の娘だ。力もない。忍具を扱ったこともない。組手をしたことも相手の服を荒々しく掴んだことも拳を握ったようなこともない。
白魚のような肌に折れそうな手足、指など握ることすら恐ろしく思うほどに細く肉付きが薄い。
力を入れればたやすく折れてしまいそうな、抱きすくめれば崩れていきそうな体に背負った覚悟の重さが、それを背負わねばならぬ今の時世が心底憎くなった。と我愛羅は吐露する。
忍としてそこは目を瞑って行かねばならぬことではあるが、人として少々辛かった。とそう零す我愛羅の背に手を当て、サクラはうん。と頷いた。

そこでサクラは己の手を見つめ思う。自分の手は決して美しくはないと。
サクラの手は娘のように折れそうな指を持ちあわせてはいない。
何度も人を殴り、岩を割り、木々を倒し忍具でマメができ、そしてそのマメが潰れて徐々に固くなっていった忍の手だ。
きっと娘と並べれば同じ女の手には見えないだろう。だがサクラと娘は違う。サクラは忍で娘は大名だ。同じ女でも、こんなにも違う。
けれど女の地位を羨ましいとは思わなかった。金も権力もあれば優位だが、なくてもやっていける。
それにサクラは忍としての誇りがあった。仲間と、師と、里に、誇りを持っていたから羨ましくなどなかった。
ただ、娘の初めての相手が我愛羅であったことだけは少しだけ、羨ましいと思ったが。

その後我愛羅と娘は会うことはなく、風のうわさで子をなしたぐらいしか聞き及んでいないと言う。
それでも、と我愛羅はベッドに後ろ手をつき天井を見上げるように上体を反らすと、己が初めてだと言われたら不思議と相手の顔は忘れぬものだな。と吐息交じりに言葉を零す。
我愛羅は風影になる前でもなってからでも、沢山の人の顔を見てきた。大概はその場限りのものなのであまり覚えることも無かったが、娘の顔は今でも鮮明に覚えていると言う。
自分に対し正面から毅然と笑んだ娘の顔を生涯忘れらないだろうと続ける我愛羅の横顔は穏やかで、慈愛の念すら感じる。
彼は女心がわからぬ男ではあるが、人の心がわからぬ愚か者ではない。
サクラはやはり娘が羨ましくなり、気付けば我愛羅の名を呼びその手に触れていた。


「サクラ?」
「…ねぇ、我愛羅くん」
「何だ」
「もし私が…」

そこで一度言葉を区切り、サクラは我愛羅の顔を見つめる。
我愛羅もまた、サクラの顔を見つめていた。

「もし私が我愛羅くんに、私の初めてを貰い受けてほしい。って言ったら…もらってくれる?」

サクラの言葉に我愛羅は目を見開くと、ぎゅっと眉間に皺をよせサクラを睨むように見つめる。
それはサクラを咎めるような、心の内を観察するような、何とも言えぬものであった。

サクラは、我愛羅がナルトの想い人が自分だと知っている可能性があることを分かっていた。それを考えればサクラの問いかけは卑怯であったし、狡くもあっただろう。
けれどどうしても、自分の初めてを捧げるなら他の誰でもないこの男がいいと思ったのだ。
それは願望というには熱っぽく、渇望といよりは生温いものではあったが。

暫くの間、サクラと我愛羅は互いに見つめ合った。
どれくらいの時間かは分からないが、しかと強く。
そして先に口を開いたのは我愛羅だった。

「…お前が本気でそう言っているのなら…俺は貰い受ける」

その言葉にサクラは嬉しいという感情よりも先に、安堵した。断られるのが怖かったのだろうと後に思う。
何せサクラは富豪の美女や大名の娘のように見目麗しいわけでも、女らしい柔らかな身体も傷のない肢体も持っていない。
衣服で見えぬ肌の至る所に幾多の傷が走り、日々の鍛練で引き締った体は女らしい柔らかさから遠ざかってもいる。
それに胸のふくらみだって、同年代に比べると落胆してしまうレベルだった。
だからこそ我愛羅の返答に安堵し、自然と頬が緩んだ。

笑うサクラに何を思ったのか。我愛羅は少し目を細めるとサクラの頬に手の甲を当て、するりと一撫でする。
それが存外くすぐったく、ふふふと声を出して笑えば、我愛羅も穏やかに目を細める。
その眼差しがあたたかく、やはりこの男を選んでよかったと思った。

「我愛羅くん」
「何だ?」

名前を呼べば、何故か彼のことが愛しくなった。
その瞳を見つめれば、吸い込まれそうだと思った。

サクラはするりと我愛羅の背に腕を回し、自ら我愛羅の唇に自分のものを重ねた。
人工呼吸ではない、そういう関係を意図して行う口付はこんなに胸を高鳴らせるものだったのかと、まるで他人事のように思った。
そうしてゆっくりと、支えるようにサクラを抱きしめ返してきた我愛羅の腕の力強さに、男と女の違いを垣間見た気がした。

「…嫌じゃない?」
「いいや」

触れ合わせていた唇を離し、問えば我愛羅は首を横に振る。
よかったと思うのも束の間、今度は我愛羅から口付られる。
不慣れなサクラとは違う、少し手慣れた口付の仕方だった。

それからは、我愛羅に唇だけでなく額や鼻の先、髪の毛にまで口づけられ羞恥に顔を染める。
いくら湯を済ませていたとはいえ、初めて事に臨むのだ。
このまま褥に入る前にもう一度風呂に入りたいと思ったが、それを述べるには少々雰囲気がよくなりすぎた。
それにいくら恋人ではないといえ、可愛らしい下着をつけておけばよかったという後悔もある。
だがそれらを述べる勇気はなく、結局あまり見ないでね。と言うしかなかった。



我愛羅が手慣れた動作で部屋の電気を落とした後、部屋を照らすのはカーテンの隙間から漏れる月明かりだけとなった。
さすが色の任務を数度こなしただけある、とその慣れた所作をからかう余裕はなく、我愛羅はサクラの背を抱きながら重ねるだけの軽い口づけを繰り返す。
それに応じる、というよりかは一方的に与えられているという体のサクラは緊張から無意識に体に力が入っており、我愛羅はあやす様に何度も優しく背や頭を撫でる。
すると徐々に体から緊張が消え肩の力が抜けていく。誰でも初めては緊張するし恐ろしいものだと、我愛羅は学んだことを反芻しながらサクラの額に唇を当てる。

「怖くないか?」
「うん…平気…」

額にかかる我愛羅の吐息がくすぐったいのか、身を捩るサクラをそっと抱きしめ背を撫でる。
初めは抱き込まれ再び緊張に体を固くしたサクラだったが、すぐに穏やかに背を上下する手に安堵感を覚え我愛羅の体にしなだれかかっていく。
そんなサクラに口付けとあやすような愛撫を繰り返しながら、ゆっくりとサクラを寝台の上へと押し倒す。
気づけば寝台に転がされていたサクラは一瞬身を固くしたが、そういう行為をこれからするのだからと自身に言い聞かせ緊張を解くように深く深呼吸する。
そんなサクラに気づいたのか、我愛羅はサクラの頬に指を滑らせると、本当にいいのか?と問う。
散々口付けた挙句、既に寝台に押し倒して聞くことだろうかと思ったが、我愛羅の気遣いに気づき頬を緩める。

「もう、本当女心が分かってないんだから。何度も言わせないでよ…私、あなたがいいのよ」

我愛羅くん。
とサクラが我愛羅の名前を呼ぶと同時に、我愛羅はサクラに覆い被さり深く口付けた。
それでも貪るというにはどこか甘く優しい口づけに、サクラは応えるように我愛羅の背に腕を回し抱き寄せた。




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