小説
- ナノ -


まだ子供



むにり、と胸にあたる当たる違和感にトロリと意識が覚醒する。朝方の冷えた時間。
胸元の存在に視線を落とせば例の仔狸がすやすやと気持ちよさそうに眠っている。
こうしてみると可愛いもんだわ。とサクラの胸の間に顔を埋め、甘えるようにサクラの寝間着を握る手は小さく丸い。まだ子供なのよね。
甘えたくなるのは当然かと見た目に反してフワフワの柔らかい髪を撫で、穏やかに上下する背を撫でる。

それがくすぐったかったのか、むぅと唸るような鼻にかかった声と共にもぞもぞと胸の間で蠢く頭にサクラはふふ、と笑う。
しょうがない仔だと、サクラは優しく髪に指を通す。

むにむにと胸にあたる髪や指をこそばゆく思いながらも仔狸を甘やかすサクラの表情は穏やかで優しい。
そんなサクラの優しい雰囲気が分かるのか、我愛羅は幸せそうにむにゅむにゅ意味のない寝言を零す。
全くどうしてこんなにも愛おしいのか。
サクラはまだ小さな妖の仔を抱きながら、再び目を閉じる。

うっすらと再び睡魔が忍び寄るなか、ぽつりと呟かれたかあさま、という言葉にサクラは何も言わず腕の中の小さな存在を抱き締めた。
そのぬくもりがただただ愛おしかった。



end


軽くセクハラなんだけど子供だから許される仔狸我愛羅くん。(笑)


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