小説
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「ほあ〜、思ったよりハイカラじゃのぉ〜」
「あはは。都会は特にね。田舎じゃあ昔と同じような田園風景が広がってたりするよ」

 政府の施設はビル街の端にある。そこから暫く歩けば商業施設や繁華街に近くなり、通行人がどっと増える。
 陸奥守は立ち並ぶ建物の規模の大きさやデザイン、道行く人たちのファッションなどを見遣っては目を輝かせた。

「現世っちゅうのはげにまっこと楽しいとこじゃのお!」
「そうだね〜。特に観光やお土産を買うにはいいかも」

 働くのはちょっと大変だけど。なんて余計な一言は胸の内に仕舞い、とりあえずは鳩尾さんに渡す菓子折りを探しにデパートへと入る。

「こがに人がおるんか」
「ねー。建物自体も広いしね。あ。結構歩き回るからね。もし気になったものがあったら遠慮なく言ってね」

 洋菓子、和菓子。さてどちらにするか。鳩尾さんは六十代だから、洋菓子よりは和菓子の方が口に合うかもしれない。そんなことをつらつらと考えつつ、箱詰めされたお菓子のサンプルを眺めていく。その間陸奥守は物珍しそうにショーケースを眺めたり、食品サンプルに感嘆の声を上げていた。

「ほあ〜……まるで夢の国じゃあ……」
「ふふっ、むっちゃんが楽しそうでよかったよ」

 ショーケースを覗く横顔は子供みたいだ。キラキラと瞳を輝かせるのが何だか珍しい。だけど同時に私も楽しくなってくる。
 よし。菓子折りも皆のお土産もさっさと決めて、陸奥守に街を案内しよう。

「すみませーん。これを一つと――」

 店員を呼び、鳩尾さんへと渡す菓子折りを購入する。購入したのは日持ちが良く、且つ彩も綺麗なゼリーにした。果物がたくさん入っているだけでなく、容器自体も珍しい形をしているので歌仙さんなら喜んでくれるだろう。
 皆へのお土産は何がいいかなぁ。カステラとか? それともお饅頭とか、イチゴ大福とかの方がいいかなぁ。なんて考えていると、陸奥守が店員から品物を受け取ってくれた。

「あ、別にいいのに」
「えいえい。気にしな」

 お菓子ぐらい自分でも持てるが、陸奥守が笑顔で制してくる。こういうことをさらっと出来るからモテるんだろうなぁ。実際にモテてるかどうかは知らないんだけど。いや、モテるだろうな。うん。

「それじゃあ次は皆のお土産だね。何がいいかなぁ〜」

 和菓子の方が慣れ親しんでるだろうから、敢えて洋菓子にする。っていうのも悪くはない。流石にケーキは持ち運びに不便だから、焼き菓子とか。クッキーでもいいかも。それならバラエティーに富んだセットがあるはずだし、預かっている刀たちもいるから大量に買うにはもってこいだ。
 と、ここでふと気付く。しまった。いつもの癖で一人で買い物に来ている感じで歩いていた! 折角陸奥守を連れてきたのに! 刀と一緒に来ていることを失念していたとか……主失格だわぁ……。若干の罪悪感を抱きつつ恐る恐る後ろを振り帰れば、陸奥守が「どうしたが?」と首を傾ける。

「い、いや、その、ごめんね。一人で勝手に突っ走って……」
「何じゃあ。そがなこと気にしちょったがか? 気にせんでえい。わしはちゃーんとおんしの後ろにおるきに」

 おおう……。何だろうこの安心感。包容力っていうの? 本当頼りになるわー。
 それでも何も相談せずに勝手に決めるのも失礼かな、と思い、皆のお土産を何にするか、この後どうするか話しつつ歩く。だが数歩歩いたところで、見たことのあるスーツ姿の男性が視界に入って足が止まった。

「げっ?! あ、あれはまさか……田辺、さん……?」

 思わず声が震える。だってしょうがないじゃないか。苦手な人なんだから。

「ひえ〜……どうしよう……こっそり回避できるかな……」
「ああ、あん人か」

 彼の傍には長谷部もいる。主人に合わせたのだろう。彼もスーツ姿だ。こうして見ると改めて堅気に見えな、じゃなかった。人間離れしている美貌の持ち主だ。
 とはいえ、今は会議の時と違って御簾を外している。幾ら何でも素顔を見せたことはないので私だと気づかないだろう。でも陸奥守が傍にいるからもしかしたら気づくかもしれない。だってこんなにずんぐりむっくりしている女とイケメン男子、って組み合わせは大体審神者と刀剣男士だし。

「と、とりあえず、ばれないよう背中を向けて、一旦退こう」
「ほにほに」

 どうやら田辺さんも買い物中らしい。支払いをしているからかこちらに気付いた様子もない。長谷部にもまだ見つかっていないし、今ならまだ逃げられる!

「どうかばれませんように……!」

 祈りつつそーっと来た道を戻る。そして大きな支柱の陰に隠れるようにして立つと、一先ず息を吐く。

「は〜……タイミングわっる〜」
「まははは。おんし、まっことあの男が苦手やのぉ」
「失礼なのは重々承知なんだけどね……」

 でもやっぱり人間誰しも苦手な人の一人や二人はいるって。

「あー、もう。この際だから一旦カフェにでも入って一息つこう」
「おお、それはええの」

 丁度この場所からカフェはそう離れていない。共有スペースで飲食も出来るが、やっぱり落ち着きたいから店内で飲みたい。
 ここで一昔前のRPGなら敵に捕まってそのまま戦闘に入ったかもしれないが、ありがたいことに道中知り合いに会うこともなく無事カフェへと入店することが出来た。

「あ、ちゃんとコーヒー以外の飲み物もあるからね」
「おお。わしはどうにもあの『こーひー』言う飲み物は苦手じゃ」

 やっぱり陸奥守はお茶の方が好きらしい。お茶も色んな種類があるのでメニューを指さしつつ説明すれば、あっという間に注文する番になる。

「カフェラテとほうじ茶で」
「店内でお召し上がりですか?」
「はい」

 私がカフェラテで陸奥守がほうじ茶だ。それなりに賑わいを見せる店内の中、空いている席を先に陸奥守に確保してもらうことにする。

「どこか適当に席取っててくれる? 出来たら私が持っていくから」
「おう! 任せちょけ」

 支払いを済ませ、受取カウンターの前へと移動する。そこにはまだ二人ほど待っている人がいた。手持ち無沙汰なのでそのまま何の気なしに外へ視線を向ければ、何ということでしょう。見たことのある刀がこちらを見ているではありませんか。

「あれ?! 太郎太刀さん?!」
「ああ、やはり水野さんでしたか。こんにちは」

 のっそりと店内に入り、挨拶をしてくれたのは武田さんの所の太郎太刀だった。ということは、武田さんが近くにいるということだ。

「おーい、太郎〜。どこだ〜、って、お! 水野さんじゃねえか」
「武田さん。こんにちは」

 あの唐突な新人審神者押し付け事件以来の顔合わせだ。相変わらずガタイのいい体にスーツ姿だと妙に迫力があるが、童顔だからか威圧感や自由業的な雰囲気は感じない。本当、ある意味では顔で得している人だ。

「二人共今日はどうしたんです?」
「ああ。今日は会議だっただろ? だから新人の所に戻る前に軽く息抜きしていこうと思ってよ」
「あはは、私と一緒ですね」

 どこか疲れた顔を見せる武田さん。どうやら新人さんに手を焼いているらしい。皆一緒なんだなぁ〜。

「ところで、アンタの方はどうなんだ? 突然任せちまって何だが、上手くやれてるか?」
「うーん……まぁ、正直ぼちぼち、ですかね。やっぱりタイプが違う人間なので、中々距離が掴みづらいといいますか……」

 夢前さんは悪い子ではない。現代っ子特有の軽薄さというか、暖簾に腕押し感はどことなく感じるが、仕事自体はちゃんと行ってくれている。物覚えも悪い方ではないし、刀たちとも積極的にコミュニケーションを図ろうとしているみたいだ。刀たちを避けようとしていた私とは大違いだ。

「あー……まぁ、若い子ってのは総じてそんなもんかもしれねぇなぁ。俺のところは男なんだが、これがまた厄介な野郎でなぁ……」
「ええ……正直今まで相手にしたことのない感じですので、我々も手を焼いております……」
「た、太郎太刀さんまで……」

 いつも涼し気な表情をくずさない太郎太刀でさえ疲れた顔を見せている。これは相当な人物を相手にしているみたいだ。

「あ。そうだ。よかったら一緒にお茶しません? 私たちもちょっと息抜きに寄ったんですよ」
「ああ、そうだな。コーヒー一杯飲んでから帰っても問題ねえか」
「ええ。では私もご相伴に預からせていただきましょう」

 と、ここでカウンターから「カフェラテとほうじ茶のお客様〜」と呼ばれ、カップを受け取る。
 先に席の確保を頼んでいた陸奥守を探せば、二人掛けの椅子と机が並んだゾーンにいたのでそのまま空いていた隣の席もくっつける。

「武田さんと太郎太刀さんとそこで会ってね、一緒にお茶しよう。って誘ったんだ」
「ほうか。おんしがえいならわしもえいぞ」

 まずは私と陸奥守の分のカップを置き、荷物を足元の籠の中に入れる。暫くすると武田さんと太郎太刀も片手にカップを持ってカウンターから出てきたので、手を振って呼び寄せた。

「おお、今日は陸奥守が一緒なんだな」
「久しぶりじゃのぉ」
「はい。お久しぶりです」

 武田さんはブラックコーヒー、太郎太刀は抹茶ラテにしたらしい。二人はそれぞれの飲み物を口にすると、ほっと息を吐く。

「あー……沁みるわぁ……」
「ええ。偶にはこうして休む時間も必要ですね」
「全くだ」
「はは……随分とお忙しいみたいですね」

 武田さんが担当している地域と、柊さんが担当している地域は実の所別々だ。元は一緒の地域だったのだが、柊さんが現在担当している地域の役員が減ったため急遽移動となったらしい。そのため武田さんが担当している審神者の数は多い。勿論柊さんも負けてはいないが。それに加えての新人教育となればもっと大変だろう。

「今日はその新人さんはご一緒ではないんですか?」
「当たり前だ。あんなのが一緒にいたらおちおち街も歩けねえっての」

 そ、そんなにアレな人なのか? 新人さんって……。
 気になって太郎太刀の顔色も窺ってみるが、完全に意識を遮断していた。こ、これは相当なモンスター新人が相手だぞ!!!

「まぁ俺のことはいい。水野さんはどうだ? 最近は妙な出来事も起きてねえか?」
「あ、はい。それはもう。神気もだいぶ体に馴染んできましたし、出陣や遠征にも問題はありません」
「そうか。それはよかった。なぁ、陸奥守」

 そこで何故陸奥守に聞くのか。なんて野暮なツッコミはしない。色々、本当に色々迷惑をかけ、また私を一番に心配し、何か起きれば真っ先に助けてくれるであろう初期刀の陸奥守に意見を求めるのは当然のことだ。陸奥守も朗らかな顔で「全くじゃ」と笑いながら頷く。

「そういや柊から聞いていたが、預かっていた刀たちはどうだ? あんたの本丸にいない刀だって多いだろう」
「むしろいない刀の方が多いですね。正直まだ十日しか経ってないので何とも言えないですが……今のところは何も問題ないかな、と。まだこちらに警戒心を抱いている刀は多いですけどね。概ね問題なく過ごせていますよ」

 十日経った現在、私に警戒心を抱いている刀は三日月宗近と小狐丸、大典太光世、ソハヤノツルキ、にっかり青江、骨喰藤四郎、鯰尾藤四郎、厚藤四郎、後藤藤四郎、信濃藤四郎、蜂須賀虎徹、不動行光だ。大体が地下に幽閉されていた刀たちだが、それ以外の蜂須賀、鯰尾、骨喰は酷い怪我を負っていた刀だ。審神者に対する不信感が残っているのだろう。それでも刀を抜いたり仕事に手を抜くことはない。微妙な顔をしたり陰口を叩くことはあるみたいだが。ちゃんと与えられた仕事はこなしていた。

「成程な。そりゃあ地下に半年近く幽閉されてりゃあ審神者に対して悪感情を抱くのも無理はない、か」
「ですね。でも中立というか、意外とこちらに対して友好的に接してくれる刀の方が多くて助かっています。特に日本号と博多藤四郎が随分と協力的で、その縁あってか他の三名槍や、酒盛り仲間の次郎太刀や同田貫、獅子王なんかもよく話しかけてくれるようになりました」

 うちには槍も大太刀もいない。同じ太刀でも獅子王はうちにいないので、正直話しかけられるとちょっと嬉しくなる。

「ただ折れた刀も意外と多くて……今剣もそうですが、左文字の刀は三振りとも折れたらしく……」
「そうか……」

 確かにあの時助けに入った部屋の中に左文字の刀は一振りもいなかった。人数確認のため帳簿と照らし合わせる際、加州にこっそり尋ねれば教えてくれたのだ。

「他にも秋田、前田、平野、は二度も折れているらしく、今うちにいるのは三振りめだそうです」
「無理な進軍でもしたのかね。短刀は育ち切らない内は脆いからな」
「あとは乱が一度折れて、今いるのは二振り目です。他は折れていないみたいですが、そのせいか一期一振はどうにもこちらを信用する気がないといいますか、警戒されているといいますか……とにかく、全然心を開いてくれる気配はないですね」

 最初は『微妙なところかな』と思っていたが、実際は巧妙に気持ちを押し隠していたらしい。
 でも無理もない。大事な弟たちを何振りも失ったのだ。私と同じ『審神者』という存在が、理由が何せよ何度も弟たちを折ったのだ。それを許せないと思う気持ちがあってもしょうがない。

「とはいえ、折ったのはあなたではなく元の持ち主でしょう。八つ当たりもいいところですね」
「あはは……まぁ、彼らなりに思うところがあるのでしょう。もう少し様子をみたいと思います。まぁ言っちゃえば私の刀じゃないですしね! 無理に距離を縮めることもないかな〜、と」

 心に負った傷、というのはそう簡単に塞がるものではない。こちらに友好的な長谷部や薬研、今剣だって本当は元の主に会いたいだろう。加州なんて特にそうだ。あんなに心身ともにボロボロになっても待ち続けていたんだから、きっと百花さんだって本当は悪い人ではないはずだ。

「まぁ、元は十代の審神者だって言うしな。俺らみたいに責任だのなんだの、ってのはまだ難しいか」
「“戦争”ですからね……逃げたくなる気持ちは、正直分からなくはありません。実際に戦っているわけじゃないですけど、やっぱり傷だらけになった彼らを迎え入れるのは、結構勇気がいりますから」

 血が苦手、というのもあるが、それを抜きにしても、だ。今まで何度傷だらけになった彼らを迎えただろうか。手入れしただろうか。思い出せば自然とカップを握る手に力が籠る。だけどその手を解すようにそっと手を重ねてきたのは、他でもない陸奥守だった。

「心配かけてすまん」
「あ、いや。むっちゃんが悪いわけじゃないよ。むしろ戦って、それでもちゃんと無事に帰ってきてくれてるから。本当に感謝してる」

 何度も折れそうな傷を負った。実際にお守りが発動したことだってある。目の前で、刀が砕けた瞬間を目にしたことがある。あの時を思い出すだけで背筋が凍え、臓腑が震える。それでも今は陸奥守が手を握ってくれているから、私の凍りそうな手はあたたかいままだ。

「安心せえ。わしがおんしも、おんしの刀もみーんな守っちゃるき」
「ふふっ、うん。頼りにしてる」

 この戦争がいつ終わるかは分からない。今後私の刀が増えるかも分からない。それでも、陸奥守が変わらず傍にいてくれたら頑張れる気がする。そんな力を貰える笑顔だった。

「おーおー、お熱いこって」
「ふふっ、いけませんよ、主。邪魔をしては」
「はえ?! ちょ、ち、ちがっ、違いますよ?!?! わ、私たち別にそんなんじゃ……!!」

 確かに、確かにそういう関係ではない。まだ。

……ん?! まだ?! いや、何で『まだ』?! 自分で『まだ』って言ってどうすんだ?! いや、そりゃあまぁ確かに!? 陸奥守のことは好きですけどお?! でもその『好き』と、アレでソレな意味での『好き』とは違うわけで、えーと、だから、その、あー、ま、まだ告白の返事だってしてないし! ってそうだ! まだ返事してないんだったーーーー!!!

「うぉおおおぉおおぉお……」
「わ、悪ぃ……地雷踏んだか?」
「まっはっはっは。気にせんでえい。色々考えて悩んじゅうだけじゃ」
「慣れたものですね」
「ほりゃあの。ずっと一緒におるきに」

 うーんうーん、と唸っている間にも皆のカップの中身は着々と減っている。私も冷めないうちに飲もう……。

「まぁ、何だ。審神者と刀剣男士ってのはよく考えねえと色々と大変なことも多いから、あんまりお気楽に考えすぎても危険だぞ?」
「ええ。私たちはあくまでも『刀』。この肉の器に騙されず、しっかりと見極めてください」
「あ……は、い」

 そうだ。彼らは『刀』だ。私の刀であろうとそうでなかろうと、彼らは鋼の無機物なのだ。本来は。でも、だからこそ……もっと、人間である私たちと上手くやれると思ったりもするんだけど……。

「刀のことはお前さんの言う通り、無理に距離を縮める必要はない。元の主が見つかって審神者に戻ってくれりゃあいいが、もし審神者に戻ることを拒否した場合は原則刀解だ。仲良くなっても別れが辛いだけだしな」
「そう、ですね。でもどうにか『審神者』が悪い人間ばかりじゃない、ってことだけはちゃんと伝えられたらいいな。とは思います」

 今はそうでもないが、岩融も最初は警戒心どころか敵意の塊だった。緩和された今でも時折辛辣な態度を取られるけど。彼らとの溝は思った以上に深いと考えていいだろう。

「おっし。それじゃあ俺達は戻るかね」
「ええ。それでは水野さん、陸奥守。失礼しますね」
「あ、はい。お仕事頑張ってください」
「またの」
「ああ。あんたらもな。じゃあな」

 手を振り去って行く二人に手を振り返し、改めて陸奥守へと視線を向ける。

「問題は山積みだね」
「そうやにゃあ。まぁ、一つ一つ片づけていくしかないろう」

 柔らかい笑みと、こちらを安心させるような声音が優しく耳を打つ。本当、陸奥守は私にとって大事な刀だ。きっと、彼女にとっての“今剣”がそうだったのだろう。だから――

「……私たちも出ようか」

 ぐっと残りのカフェラテを飲み干し、カバンを持って立ち上がる。大事な刀を失う痛みは、分からないわけじゃない。でも私は奇跡的にも彼らが戻ってきてくれた特異なタイプだから。きっと、彼らの本当の主である“百花さん”にとってはいけ好かない人間に映るんだろうなぁ。

「さーて、それじゃあ買い物の続きといきますか!」

 田辺さんももういないだろうし! カフェを出ると、私たちは再び贈答品のコーナーへと歩き出した。


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