跪いて、傅いて。
性格悪い没カルナさんと中学生ジナコちゃんが『どっちが主導権握ってるか分からせてやるぜ』みたいな感じで静かに言葉で銃撃戦してる話。(支離滅裂)
※性格悪い二人が苦手な方は注意!
パシャン、と張ったお湯にタオルが沈む。帰宅している途中、急に降られた雨に全身ずぶ濡れになってしまった。家で待っていた従者は濡れネズミとなったアタシを笑うことはせず、ただタオルを差し出し消える。そしてすぐさま桶とタオルを持って戻ってきた。
「ジナコ。今湯を張っている。だが湧くまでにはもう少し掛かるだろう。その間あたためるといい」
どうやら『足湯』をして少しでも温まれ。ということらしい。だけど濡れた制服を着たままでは風邪を引いてしまう。それを伝えれば彼は羽織っていたマントを脱ぎ、アタシに掛けた。
「濡れた服は脱げ。それ一枚でも十分あたたかいだろう」
有無を言わせぬ瞳に押し負け、アタシは彼のマントで前を隠しながら制服のボタンに手を掛ける。何だかイケナイコトをしているみたい。
だけど気分はそんなに良いものでも、盛り上がるわけでもなく、ただ淡々と濡れた衣服を地面に落とす。
「ではそこに座れ」
示されたのは玄関のすぐそばにある階段だ。そこの二段目に腰かければ、彼が足元に桶を置く。
「ふむ……だいぶ冷えているな」
足先まで濡れたせいだろう。アタシの足に触れた彼はそう呟くと、湯にタオルを浸して軽く絞る。
「甲斐甲斐しいわね」
「そうか?」
「まるで奴隷みたい」
その言葉にピタリと動きを止め、彼は暫く黙った後ふと笑みを刻む。その美しい相貌に。
「そうか。奴隷か。成程。言い得て妙だ」
「何よ。文句があるなら離しなさいよ」
その顔と声音が気に入らなくて、彼の手から逃れるように足を持ち上げる。だけど彼はその手を離そうとしない。それにムッとして青白い顔を見下ろせば、珍しく楽し気な従者がアタシを見上げてくる。
「俺はお前の僕だ。それをどう言おうとお前の勝手だ。とやかく言うつもりはない」
「あっそ。じゃあアタシの奴隷さん、早くこの無意味な行為を終わらせて」
バシャッ、とわざと水を散らすようにして桶に足を突っ込めば、彼は飛び散った雫を軽く拭いながら再び嗤った。
「命令とあらば。我がマスター」
腹立たしい程に恭しく頭を下げる従者に苛々する。それでもこの足を振り上げてムカつく男の顎を蹴らないのは、偏にアタシの優しさなのだ。
奴隷に優しい主でよかったわね。と言葉にする代わりに足の先で男の顎を撫でてやった。
end
拗らせ没カルジナはとても書きやすくて良い。
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