小説
- ナノ -


赤と白



 真っ白で真っ赤なアタシのアナタ。血管すら透けて見えそうな不健康な肌に、飛び散る鮮血のような赤い髪。人形のように整った顔をよく見れば、うっすらとした柔らかな産毛が生えている。
 変ね。アナタ本当は死んでいるのに。どうしてアナタの肌には産毛が生えていて、触れればあたたかくて、胸に耳を押し当てれば心臓の音がするのかしら。もう人間じゃないのに。どうして怪我を負ったら血が出るのかしら。

 スルスルと巻いていく包帯に滲む赤と匂いにクラクラする。ああ、ダメだダメだ。パパとママを思い出したら泣いてしまう。グッと唇を噛みしめ堪えれば、無感動で無感情でお人形みたいなアナタが手を伸ばす。
 機械じみたぎこちない動きで、いつもよりうんと冷えた指先でアタシの頬をそっと撫でた。

「泣くな、ジナコ」
「……たまねぎが目に染みただけだもん……」

 今日の晩ごはんはカレーだから。
 そう言ったにもかかわらず、切った具材を放置して、傷ついたアナタを手当てする。
 もうカレーを食べる気はなくしてしまった。全部全部真っ白で真っ赤なアナタのせいよ。

「……大嫌い」

 アタシを守って死にかける、そんな強くて優しくてバカみたいに真っ直ぐなアナタが嫌いよ。と、滲む涙に想いを込めた。



end



初めて書いた没カルジナでした。

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