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補足と設定



【補足と設定などなど】

・『水野』と『鬼崎』について

 主人公と敵はとにかく『正反対』の性質を持っている、分かりやすい話にしたかったためこんな風になりました。ざっくばらんに説明すると、『水野』はワンマンタイプ。周囲には頼らず自分一人で頑張ろうとするタイプ。そしてだいぶ破天荒。だけど運がものすごくいいので、困ったことがあっても周囲が助けてくれるという強運の持ち主。
 対する『鬼崎』はワンマンに見せかけた周囲を頼るタイプ。これは先祖の力を文献から読み取っていることから伺える。勿論自分でアレンジもするけど、大体手堅くいくタイプ。
 他にも水野は『ポジティブ』『友達は少ないけどその分深く付き合い、相手を心底大切にする』『物持ちがいい』『色んなものに対し感情移入する』『動物が好き』『涙もろい』『ドライなところはどこまでもドライ』『情報は取捨選択する』『知らないことはとことん知らない。でも調べ始めたら止まらない』など、色々あります。
 対する鬼崎はどこまでも逆。『ネガティブ』『知人は多いが深く付き合わないため“友人”はいない』『物は使い捨て』『感情移入? 何それ美味しいの?』『動物は嫌い(煩いし汚いし面倒だから)』『血も涙もない』『優しいように見えて冷酷無情』『情報は幅広く収集する』『知らないことがあると気に食わないので、とにかく色々知っている』といった感じ。
 だから水野は刀に愛されていても鬼崎は警戒されているし、沢山の怪異に巻き込まれて大変な目にあっても水野は立ち上がるけど、鬼崎は一度でも恐ろしい目にあったら多分狂う。意外とメンタル弱いのが鬼崎で、泣いても立ち止まってまた進む強メンタルしてるのが水野。これは単に水野には支えてくれる人が多いから、というのもある。


・喪女の割りに水野が男慣れしているような件について

 これは水野に仲のいい兄がいるのが要因。小さい頃から男の裸なんて見慣れているし、仲のいい兄妹設定なのでスキンシップも多々取っている。連絡はあまりとらないが顔を会わせると非常に会話が盛り上がるので、友人みたいな兄妹。なので喪女とはいえ男に慣れていないわけではない。ただし男性とお付き合いしたことはない。
 一応過去告白されたことは一度か二度はあるけど、大概振っている。これには訳があって、彼女は『誰かと付き合うこと』で今までの関係が壊れることを無意識に恐れているから。
 友達と思っていた人とキスをする。とか、手を繋ぐ。とか、そういう突然の変化に水野がついていけない、あるいは男性“性”に対する恐怖心が拭えないため、彼女は誰かと『付き合う』という行為から避けてきた。喪女なのはその結果。
 付き合いたい気持ちはあるけど、関係性が変わることが怖い。仲がいい友人から『恋人』になって今までと違う関係になるのが怖い。そんな少女じみた気持ちがあるため、水野は極端に鈍く、また異性に対して“男性性”を意識しないよう無意識にそんな空気をシャットアウトしているところがある。


・何故水野が鬼崎の本丸の刀たちに優遇されていたのか。

 これは本丸と同じで、水野が彼らにとって『もう一人の主』だから。元々水野の本丸は、鬼崎の本丸が未だ荒れていない時のを無理矢理顕現させている。だが一度水野の本丸(過去)と鬼崎の本丸(現在)を繋ぎ合わせたため、そこが開いた時に刀たちの残留思念が水野の本丸にも流れる。本丸に流れる霊力に自分たちの主(鬼崎)と水野の霊力、二つの霊力が流れていることと、それを本丸が受け入れていることから水野を『もう一人の主なのかもしれない』と考える。姿形がないため目には見えず、また本丸に施された呪術のせいで
水野の刀たちも誰も彼らを感知することが出来なかった。
 それに思念である彼らも普段は悟られぬようひっそり過ごしているため、太郎太刀が来てもバレなかったという設定。
 なので日頃から水野のことを見ていたし、影ながら見守っていた。そして彼らも自分たちを顕現し、苦しめ続ける鬼崎よりも水野を『真の主』として選んだ。そのため水野にとっては謎でも、魂魄のみであった彼らからしてみればようやく自身の(もう一人の)主との対面だった。更には呪われていた自身たちも浄化されたので、彼らの霊力を糧に残っていた本丸も共に浄化。喜ばしい出来事が二つも重なり、刀剣男士たちはお祭り騒ぎ。
 声が聞こえないのは彼らが魂魄のみの存在だから。
 そして水野も肉体を現世に置いて意識だけが行っていたため、声が出せない。完全に魂がそちらに行けば会話は可能となるが、刀剣男士たちは水野の魂を連れ去る気は毛頭なかったので彼女の刀だけを返して現世へ戻す。

 この際本丸に三日月・鶴丸・鶯丸・江雪・大典太がいなかったのは、彼らが水野の刀を戻す際に自ら犠牲となったため。幾ら神と言えど代償なしにあらゆるものを戻すことなど出来ないし、死者の復活など以ての外。だからこそ自身の命を含めた全てと引き換えに水野の刀を戻す。この際に使われた『資材』が彼ら。前田が何も言わなかったのは水野が知れば悲しむことが分かっていたため。
 因みに文字盤が逆方向に動いたのは『時を遡っている』ため。“復活”というよりは“復元”に近い。
 それが出来たのは、本丸は浄化されてもあらゆる呪術を施されていた影響で普通の本丸と違っている部分が多々残っているため。その一つが鍛刀場であり、唯一火が点いた一つの炉のみがその力を使えた。しかし本丸の霊力を使うとすぐに枯渇してしまうので、夜半、月の力を借りて一振りずつ鍛刀。それでも本丸の霊力も使うので、三日月を鍛刀するだけの力は残っていなかった。
 そのため三日月のみ水野に直接渡す。この時『資材』となった三日月は(最終話の三日月同士の別れのシーン)水野の本丸の鍛刀場へと転送された。


・水野の刀が肉体を手放した理由

 これは水野の霊力を竜神が喰いまくったのが原因。ただ竜神も水野を守る使命があったため、悪気があったわけではない。水野の寿命を削らない程度のギリギリなものだった。
 そして刀剣男士たちも突然肉体を失ったわけではなく、徐々に水野の霊力が供給されなくなっていることに気づいた彼らが自主的に肉体を手放し、意識を深く沈めて水野の寿命を削らないようしただけ。水野は寿命を対価にする方法を教えてもらえなかった、と思っているが、実際は教えるも何もなく、彼らを『顕現し続ける』『審神者を続ける』という選択肢を選んだ時点で寿命が霊力に換算される。刀剣男士たちはそれを知っていたわけではないが、水野の霊力がただでさえ少ないのにそれが更に減っていることに気づいて彼女を守るために行動しただけ。寿命云々は彼らも知らない。強いて言えば直感のようなもの。なので意識を深く沈めていたため呼び声に応えることはなかった。

 そして水野が折れた刀たちを鍛刀する間、魂魄のみで存在していた刀剣男士たちは水野の本丸へと流れ本丸内の浄化と、彼女の刀を武田の本丸から運び出す作業を始める。武田の本丸に行けたのは水野の刀が武田に保護されている時に一度着いて行ったから。魂魄である彼らは霊道を使い武田の本丸へと侵入。少しずつ刀を運び出す。それと同じ原理で折れた刀も拾い集め、桐箱に収めていた。


・『前田藤四郎』について。

 何故頻繁に『前田藤四郎』が出たかと言うと、鬼崎にとって相性のいい刀(顕現させやすい)だったから。(相性が悪い刀は源氏や来派)水野が一番最初に別本丸で出会った『前田』と鬼崎の初鍛刀の『前田』は別人。最初に会った前田は折れたきりで、その他のシーンで出てきた前田は全て初鍛刀で来た前田。陸奥守が殺される前に声を奪われたので喋ることが出来ない。蟲毒たちによって呪われた身とはなったが、神としての意地と霊力の強さで自我を保っていた。
(男が粟田口を喰っても大して力を得ることが出来なかったのは何としても兄弟だけは守るという前田の強い願いがあったから)
 殺された陸奥守同様彼も本丸と半ば同調していたので、水野が『折れた前田藤四郎』とどういう触れ合いをしたかを見ていた。
 因みにこの時の前田が『主君』と呼んだのは、水野の後ろに隠れていた『鬼崎の影』のこと。彼にとっての『主』は水野ではなく鬼崎だったための行動。とはいえ自身が何故こんなことになっているのか理解できていなかったため、どうして。という気持ちが最期まであった。


・水野が怪異の中で襲われた『蜘蛛』について

 これは前田と同じように蟲毒に晒された兄弟刀である『平野藤四郎』。平野は前田より強い呪術に浸されたため、自我を保つことが殆ど出来なかった。水野を『せめて苦しませずに殺そう』としたのは、平野のかろうじて残っていた人間に対する愛情からの行動。
 その後鶴丸に手足を切断され絶命した平野の最期を感じ取った前田は、そこでも水野の霊力を感じ取る。(水野が平野の伸ばした手に触れたから)そこから水野の感謝の気持ちと痛みが伝わり、水野がどんな人物であるかを知ることにした。
 本丸自体が繋がっているので行き来はさほど難しくはない。もう一つの本丸で水野が刀剣男士たちと触れ合う姿を見て信頼できると人物であると確信する。以来水野を守ることを決意し、危険な目に合う度に自身を犠牲にしながらも助けに行った。
 最終的に水野の傷を代わりに引き受けたことにより拮抗していた呪詛とのパワーバランスが崩れ、崩壊が始まる。

 その前に水野を本丸へと呼び出し保管庫を見せたのは、武田や柊と言った霊力の強い者に『毒』を祓ってもらうため。でなければ本丸が蟲達の毒に侵され暴走するから。それを防ぐためにまず水野に見せ、彼女が彼らを呼び出すことを期待していた。短い間であっても彼女がそうするであろうと容易に想像できたため。だがそれを察知した蟲たちが水野を殺そうと夢の中に潜り込む。水野を誘い込もうとした「歪な声」は蟲たちのもの。
(因みに怪異の森の中での声は『幽鬼(魂魄)』となった刀剣男士のもの。だけど鶴丸や鶯丸たちには『主を狙うモノ』にしか映らなかったため斬られた)
 蟲たちの凶行を察知した前田が水野の夢に潜り込み、その手を引いて朝日が昇るまで逃げた。陽の光は蟲たちにとって毒だから。その去り際に彼女の傷を請け負い本丸へと戻る。
 何故そんなことが出来たのかと言うと、既に前田がただの刀剣男士ではなくなっていたため。長い間呪術に晒された結果、僅かだが呪術が使えた。それでも出来る範囲というのがあるので、彼女の傷を治すことが出来なかった代わりに傷を請け負った。


・水野が生まれつき神様に加護を受けている理由

 それは水野の祖母のおかげ。鬼崎が先祖返りで力を得ていたように、水野の祖母も先祖返りと呼ばれる力を引き継いでいた。それが『千里眼』と呼ばれる未来を見る力。祖母は水野が生まれる少し前に、お腹の中にいる赤子(水野)の未来を見た。そこで彼女が大変な目にあうことを知った祖母は、先祖代々祀っている竜神の祠へ。
 そこで竜神に『孫を守って欲しい』と願う。その夜竜神が祖母の夢に現れ『自分に仕えるのであれば約束しよう(=輪廻転生はなく、竜神が消えるまで彼の小間使いとなること)』と告げる。祖母は既に自身が歳を取っていること、先が短いことを知っていたためこれを快諾。祖父に『孫のことをよろしくね』と託し、水野が生まれた数日後に他界。(竜神に魂を引き抜かれた)
 孫の顔はテレビ通話で見た。その猶予をくれたのは長い間自身を信仰している彼女に対する竜神の慈悲。その祖母との約束を守り、竜神が水野を守っている。

 三日月が初め水野に刀を向けた時に「拒まれている感じがする」と言ったのはこのため。他にも怪異に襲われても即死しなかったり、手足を斬られたのに出血死しなかったのも竜神の加護があったから。そんな竜神を祖父も共に信仰していたため、祖父母が穏やかに生涯を終えることが出来たのも竜神の加護。人間と深く付き合ってきたため、自らを信仰している人間に対しては意外と慈悲深い竜神なのである。

 因みに祖母は夫に自分がもうすぐ死ぬこと、孫娘が大変な目に合うが竜神様が守ってくれること。その対価として自身の命を差し出すこと。は話している。祖父はそれを受け入れ、自身の孫たちを守ることを決意。しかし幾ら妻が命を対価に孫娘を守ることが決まっているとはいえ、何の感謝も示さない子には育てなくなかった祖父は水野をよく祠に連れて行った。
 水野には先祖返りなど特別な力はないが、神と密接に生きてきた遺伝子を持つため、殆ど無意識に『命』や『神様』というものに大して敏感になっている。そのため神が宿ると言われる『物』に対しても異様に感情移入してしまう。捨てられなかったり、棄てる際に感謝の言葉を口にするのはこのため。
 本人はそんなことちっとも知らないし知ろうとも思っていないが、受け継がれてきた力は意外と強い。

 因みに祖父は三男坊で、水野の父も婿入り。その先祖も代々『婿入り』だっため、意外と細々とではあるが血筋は守られている。
 祖母(先祖返り)→母(霊力なし)→水野(竜神の加護あり+微量な霊力)という感じ。

 更に補足すると、水野の魂に刀たちが惹かれたのはこの竜神の力によるもの。清らかな気を持つ竜神の力は刀たちにとっても良質の気なので(マイナスイオンみたいなもの)それプラス水野の生まれつきの人たらし(?)的な力により皆始めから好感度が高い。水野はそんなことちっとも知らないが。


・鬼崎の本丸は壊れたけど水野の本丸はどうなるのか。

 水野の本丸は鬼崎の過去の本丸ではあるが、ゲームで言う分岐みたいなものなので独立して残っている。鬼崎の霊力が全く残っていないのか、と聞かれたら否ではあるが、それも僅かなもの。基本的に刀たちが綺麗にしてくれたので悪いものは残っていない。
 なので水野の本丸はこれからも水野を主人として顕現し続ける。
 因みに何故水野の本丸が武田たち政府からのアクセスを拒否出来たかと言うと、鬼崎の呪術の名残と本丸が自身の領地を守ろうとしたため。その二つが偶然かみ合い、政府からのアクセスを弾いてしまった。なので水野の霊力を感じ取った時点で呪術も本丸も術を解除した。
 話したり意思疎通することは出来ないが、意外と皆のことを見ている本丸さんカッケー。


・初期刀『陸奥守吉行』について

 鬼崎の初期刀と水野の初期刀が一致したのは二人からしてみれば本当に偶然。しかしそのおかげで水野の初期刀である陸奥守は不可思議な出来事や怪異について警戒することが出来た。
 鬼崎の初期刀である陸奥守は肉体を喰われ霊力を奪われたが、最後の力を振り絞り本丸と同調し一体化する。とはいえそれも微々たる力なので、常日頃は眠っている。ただ鬼崎の霊力を感じた時(※レア太刀が顕現した時など)は、水野の初期刀『陸奥守』に自身の記憶、自身と一体となったもう一つの本丸の悲惨な過去を見せ、『警戒を怠るな』『このような未来を決して辿るな』という無言の忠告をしていた。それを受け取った陸奥守は『詳しいことは分からないが不味いことが起きる』と考えるようになる。
 しかし審神者に就任したばかりの水野に不安を抱かせるのは得策ではないと考え、自身だけの秘密にすることに。
 結果としてあらゆることに対し肝が据わり、狼狽えることもなくなった。酷い言い方をすると『主(水野)さえ無事であればそれでいい』と思っている節がある。勿論水野の大切にする刀(皆)のことは出来る限り守るし面倒は見るが、もしものことがあったら水野だけを逃がすつもりでいる。ということ。
 なので顕現したての頃や、他の本丸の陸奥守に比べ比較的落ち着いた態度が目立つ。というより悲惨な記憶を何度も目にしているので大抵のことでは動じないし騒がない。
 楽しむ時は楽しむが、基本主が第一なので水野が絡むと本気を出す。陸奥守にとって水野は主でもあり惚れた女でもあり、時には妹であり娘でもある。一言でいえば『愛しい』存在。なので自分と彼女が結ばれなければ嫌だ! などと駄々を捏ねることはないが、もし誰かが水野を傷つければ本丸内の誰よりも恐ろしくなることは間違いない。
 まだ記憶が多量にあり、水野を殺すことを何とも思っていなかった三日月を精神的に押しのけるレベルなのだから相当なもの。ただし水野の前では気前のいいお兄ちゃん、という感じ。
 本丸の中で誰よりも主を守りたいのはきっと陸奥守。次点で小夜。まぁ皆殆ど同じぐらいだけど。
 因みに小夜は主が幸せなら誰とくっついてもいいし、くっつかなくてもいい。水野が幸せでいてくれたらそれで充分。それが自分の幸せだと信じて疑っていない。なので武田からしてみれば『“復讐”だけに捕らわれていない珍しいタイプ』。大体水野のせい。


・三日月が飲まされた「血」は誰のもの?

 これは折られた今までの三日月の血や、他の呪詛によって苦しみながら死んでいった刀たちの血、あるいは鬼崎が食べ残した刀たちの血。それを「美味い」と感じた時点で呪詛が浸透している証。それを吐き出すか飲み込むからで呪術が効いているかどうか鬼崎は確認していた。まさに血も涙もねえ所業である。


 他にも何か疑問点があればお気軽にどうぞ。答えられる範囲であれば、ですが……
 大和言葉やご神木がある神社、などについては深く突っ込まないでくださると助かります。学者じゃないのですべての知識が正しいわけでもありませんから、あまり鵜呑みにされませんよう、お願いいたします。
あくまで『ファンタジー!』で楽しんでください。

 それでは、長々と失礼いたしました。そしてシリーズを通り、ここまでお付き合いくださった皆々様方。どうもありがとうございました!m(_ _)m


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