小説
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 石切丸の次に話し出したのは鶴丸だ。そして彼の話に、他の三振り――鶯丸、江雪、大典太が頷く。

「俺達は確かにその“鬼崎”という男に鍛刀された刀だ。折れるまで知らなかったがな」
「知ったのは折れてからだ。てっきり折れたら意識がなくなるものだと思っていたが、実際には少し違った」

 鶴丸に続いて口を開いたのは鶯丸だ。そして江雪と大典太が続ける。

「夢の中にいるようでした。うっすらとですが、私たちは“過去”を見ました。それは先程陸奥守が話していたように、途切れ途切れの映画を見ているようなものでした」
「主の言う“もう一つの本丸”にいた時のこともぼんやりとだが覚えている。桐箱に入れられていたことも、主の手により鍛刀されたことも、ちゃんと覚えている」
「え……じゃあ、あの時意識はあったの?」

 私があの本丸で鍛刀した時。彼らはまだ桐箱の中で粉々に砕けたままだった。それを桐箱ごと、陸奥守が用意してくれた資材と一緒に炉に放ったのだ。

「ああ。正直きみに言うのは酷なことかもしれんが……俺たちの体の半分は、折れた“彼ら”によって出来ている」
「……え……?」

 折れた、彼ら? それは、“私の”刀ではない、あの男の、あの本丸にいた“彼ら”ってこと?

「鶴丸の体であれば折れた“鶴丸”。俺であれば折れた“鶯丸”」
「そして私は“折られた江雪”」
「俺も、折れた“大典太”の体が、それぞれこの身に含まれている」

 皆がそれぞれ胸に手を当てる。その体は確かに私が『神卸』をして授けた肉体ではない。彼らは先程受肉した時に言ったはずだ。
『神卸』なしで肉体を得るのは随分と大変だった、と。

「あの本丸で『前田』は何も言わなかっただろう? きみに負担を掛けたくなかったから黙っていたんだろう」
「だがそれはどうかと俺達自身が思ってな。きみには伝える必要がある気がしたんだ」
「どんな時でも、戦があれば必ずどこかに悲しみはあります」
「だが主ならそれを力に出来る。そう、俺達は信じている」

 呆然とする私に、石切丸が言葉を投げる。

「きみが罪悪感を抱く必要はない。彼らはきみへの好意を、きみの刀を『元に戻す』ことで示しただけなんだ。その気持ちを、大事にして欲しい」
「じゃ、じゃあ……あの時五人が宴にいなかったのって……」

 あの宴会で、鶴丸、鶯丸、江雪、大典太、三日月はいなかった。それでも誰も何も言わなかったから、私も聞かなかった。聞いちゃいけないことなのかと思って、聞けなかったのだ。前田も何も言わなかった。陸奥守も何も言わなかった。でも、本当は――少しだけ、思っていた。あの時陸奥守が持ってきた『資材』は、折れた『彼ら』なんじゃないか、って……。

「……そんな顔をしないでくれ。彼らは俺達を元に戻すことできみの役に立とうとしたんだ。きみに落ち込まれてしまっては、俺達も立つ瀬がない」
「ああ。言い方は悪いが、彼らは元より折れていた身だ。その最後の力を振り絞って俺たちを助けてくれた。“きみの助けになって欲しい”と、そう願われたんだ」
「主。戦は悲しみを生むものです。私も戦は好きではありません。折れた私も同じでした。ですが、私は折れた私に代わって、戦が終わるまであなたの傍にいると決めたのです」
「折れた彼らは主に恵まれなかった。だがあんたは違う。例え他の本丸の刀であろうとも、大事にしてくれた。彼らもそれを分かっている。だからこそ、『前田』も『陸奥守』も、この本丸を、あんたを守ってきたんだ」

 “私の”陸奥守は、折れた『陸奥守』の記憶を沢山見て、窮地を救ってくれた。焦らず、騒がず、皆を纏め上げてくれた。
『前田』は何度も助けてくれた。その身に、私の代わりに傷を受けて崩れて消えた。でもあの本丸では笑っていた。皆、楽しそうに――全部救われたのだと言わんばかりに、心からの笑顔で宴を楽しんでいた。

「『彼ら』の記憶も僅かにだがある。だがそれは決して悪いものではない」
「ああ。むしろ逆だ。きみを守りたいと願う、真摯なものだ。主のためにあろうとする、付喪神として、刀として至極当然のものだ」
「主に恵まれなかったからこそ、私たちの主……あなたに、惹かれたのでしょう。あなたの優しさは、彼らにもちゃんと伝わっているんですよ」
「だから泣かないでくれ。折れた彼らの分まで俺達はあんたを守る。そう、約束したんだ」

 私の知らないところでそんなことになっていたなんて。彼らは、私の刀を助けるためにすべてを犠牲にしたというのか。確かに皆が折れた時は悲しかった。胸が痛くて痛くて、張り裂けて、死んでしまいそうだった。でも、だからと言って、私の刀を元に戻すためだけに自分たちを犠牲にして欲しくはなかった。
 石切丸は罪悪感を抱くことはないと言ったけど、そんなの無理だ。
 浮かんだ涙を見られたくなくて両手で顔を覆って俯けば、近づいてきた鶴丸の手がそっと肩に触れる。

「主、泣かないでくれ。きみを泣かせたと知ったら、彼らに怒られてしまう」
「でも……だって……」

 私に沢山のものをくれた皆のことを思い出していれば、鶴丸は私の顔を下から覗き込んでニッと笑う。かと思えば、次の瞬間には握った拳を見せてきた。

「いいか? 主。よぉーく見ててくれよ? ふ! ぐぬぬぬぬ……!」

 鶴丸は私の返事を待つことなく、拳をプルプルと震わせ、反対の手で手首をつかんで顔を顰める。一体何をしているのか。呆然と見つめていれば、その白い手の中からポン、と一輪の花が飛び出してきた。

「ニヒヒ、どうだ。驚いたか?」
「……何それ。意味わかんない」

 悪戯っ子のような顔で笑う鶴丸に呆れるが、悔しいことに浮かんだ涙は引っ込んでしまった。そうして「ん」と差し出された花を手に取れば、そこからスルスルと小さな国旗が連なって出てくる。

「あれ……? これって……」
「ははは! 気づいたか? 一度やってみたかったんだ。驚いただろう?」

 これって、あの有名なカリオストロのワンシーンの再現だ。そう気づいたら何だかおかしくなって、私はつい吹き出してしまった。

「これ、私じゃなかったら気づかんだろ〜」
「ははは! きみと初めて一緒に見た時に感銘を受けてな。一度やってみたかったんだ。まぁ、きみは彼女みたいに泣くことはあまりなかったし、泣いている姿を見たのも折れる寸前だったから、出来ないまま終わると思っていたんだがな」

 鶴丸はそう言うと私に花を握らせ、目を合わせてくる。その表情は真剣ながらもどこか優しかった。

「俺が念願叶えられたのは、彼らの命あってこそだ。この本丸もそうだ。きみも分かっているだろう?」
「……うん」

 折れた鶴丸たちを拾い集め、この本丸を綺麗にしてくれたのは折れた彼らだ。そしてこの本丸自体も、私の帰りをずっと待っていてくれた。頷く私の手を、鶴丸の細いけれど大きな手が包み込んでくる。その手は私の指が冷えていたことを理解させるほど、あたたかかった。

「大丈夫だ。主。俺達は最後まできみと共にいる。もう折れたりしないさ」
「折れることがあっても、気合で戻ってこよう」
「ふふ、何それ」

 鶴丸だけでなく、珍しく鶯丸が強気なことを口にする。それが意外というか、妙というか。変な感じがして笑えば、江雪も珍しく笑った。

「あなたが笑っていると、私たちはとても安心します。平和はいつだってここにあるのだと……そう、感じることが出来ますから」
「江雪さん……」

『平和』とは、何だろうか。戦争をしている私たちだけど、江雪はここに『平和』があると言う。『平和』それは穏やかな時間であったり、大切な人と過ごせることであったり、そういう『日常』がいつまでも続くことを指しているのだろう。そしてそれは、彼にとってとても大きな意味を持つはずだ。いつだって『和睦』を求める江雪が口にする『平和』の二文字は、とても重たいものに感じた。

「主。俺達は強くなる。傷つくことはあっても、心を折ったりはしない。だから、気負うことなく俺達を振るって欲しい」

 蔵に仕舞われていた身だ。と、顕現した当初暗い顔で口にした大典太にしてはまっすぐとした、強い力を瞳に宿している。皆色んな気持ちを抱えて戻って来てくれたのだ。
私なんかのために――。
 いや、私『なんか』なんて考えちゃダメだ。何のために『彼ら』が皆を助けてくれたのか。鶴丸たちが教えてくれたじゃないか。彼らは私を守ろうとしてくれたのだ。『守る価値がある』と思っていてくれたのだ。そんな彼らの気持ちを、私が踏みにじってどうするんだ。
 落ち込んでいた気持ちをグッと奥歯で噛みしめる。『懺悔』と『後悔』を胸に刻み付ける。

 ここからだ。ここから、また私は立ち上がって進むんだ。そうでないと、私を助けてくれた『皆』に合わせる顔がない。私を守ってくれている『神様』に顔向けできない。そう考えると、自然と顔が上がった。

「……ありがとう。皆」

 そうだ。私は『頑張る』って決めたんだ。兄が背を押してくれた時に、私は『頑張る』とこの口で、声で、ちゃんと言葉にした。
 言葉には力が宿る。私が好きな言葉を思い出せ。自分を奮い立たせた言葉を思い出せ。

「“絶対に大丈夫”。私も、皆と一緒に『頑張る』よ」

 私の傷を代わりに受けた『前田』も、決して歩むことを止めなかった。酷い仕打ちを受けた『陸奥守』も、未来を守り切った。折れた鶴丸たちは私の刀たちの血となり肉となり、今ここにいる。そしてあの本丸と力を分けた本丸は、私を『主』と認識して誰もいない本丸を守ってくれた。だから、私が落ち込んでいては前に進むことは出来ない。
 立ち止まってもいい。時には泣いてもいい。そう言ってくれた兄を思い出す。そして、今まで一緒に戦ってきた皆の顔を改めて見回す。その中で一際強い力で私を見つめていたのが、山姥切だった。

――ああ、そうだ。そうだった。私は彼が顕現した時に言ったんだ。“心で負けるな”って。だから、今私が“折れる”わけにはいかないんだ。

「――もう、大丈夫そうだな」
「うん。ありがとう。鶴丸。皆も、ありがとう」

 よくよく見てみれば、鶴丸から与えられた花はこの本丸に咲き誇っている『マリーゴールド』だった。それに気づいた私が「あ」と声をあげれば、鶴丸が笑う。

「そういえば主よ。この花の『花言葉』を知っているか?」
「え? 花言葉? いや……知らない」

 そういえば、私は確かにマリーゴールドが好きだけど、花言葉について調べたことはなかった。第一調べたとしても覚えられる気がしない。そんな無精者の私に、鶴丸が笑顔で教えてくれた。

「マリーゴールドの花言葉は『信頼』『生命の輝き』そして――『変わらぬ愛』、だ」

 改めてぎゅっと握られた手のぬくもりと、私の指先まで巡る血のあたたかさは、もう殆ど変わらない。
――守られている。大切にされている。私は、今ここにいる『私の』刀たちと、あの本丸にいた、折れてしまった刀たちに。そして、私の魂に住んでいるという、神様に。

「……恵まれすぎだね、私って」
「ははは。その分痛い目も沢山見てきたじゃないか。お相子だろう」
「そうかなぁ。断然貰いすぎな気がするけど」

 足首の痣は、実は今でもはっきり残っている。色はだいぶ薄くはなったけど、きっと幾つになっても残るだろう。手足の傷は前田が請け負ってくれたけど、生涯忘れることはないだろう。あの時の痛みも、前田が請け負ってしまったことに対する罪悪感や悲しみも。そして、沢山の怪異に巻き込まれたことで知ることのできたことも。

――忘れない。

「……ねえ、鶴丸」
「ん?」
「今、鍛刀したら……また、会えるかなぁ……」

――私の、三日月に――。

「ああ。必ず来るさ。あいつは、きみのことを心から愛していたからな」

 頷く鶴丸の言葉の後に、廊下をトタトタと走ってくる音がする。それに気づいて顔をあげれば、廊下の先からこんのすけが顔を出した。

「主様! 鍛刀場に謎の荷物が!」
「鍛刀場に、謎の荷物?」

 目の前にいた鶴丸だけでなく、武田さん、太郎太刀、石切丸へと視線を流せば、石切丸がニコリと笑う。

「行ってあげなさい。きみの声を、彼は待っている」
「……はい」

 傍らに置いていた桐箱を持ち上げ、立ち上がる。こんのすけはキョトンとしていたが、私が歩き出すとその横をついて歩く。

「主様、その桐箱は一体……」
「うーん……何だろう。皆の慈悲が形になったもの……かなぁ……」

 鍛刀場へと辿りつけば、こんのすけが「え?!」と声を上げる。四つある炉の一つには、既に火が灯っていた。

「あ、主様!」
「大丈夫。心配ないよ」

 火が点いた炉の前に、四つの包が置かれている。しっかりと結ばれた紐を解けば、中には資材が包まれていた。きっと、これもあの本丸で折れた“三日月”の体から出来たものだろう。私はその資材にそっと触れると、目を閉じた。

「お願いします。私の……“私の三日月宗近”を、呼び戻してください」

 包と一緒に折れた三日月を箱ごと炉に放つ。そして、この手に握っていた、マリーゴールドの花も。
『信頼』『生命の輝き』『変わらぬ愛』
 私の思いを全て載せたその花と共に、炎が全てを包み込む。そして頭上にあった鍛刀時間を示す文字盤が『カシャン』と音を立てて動いた。そこに刻まれたのはあの時同様、解読不明な文字の羅列だ。決して時間を表さないそれこそが、彼らが『三日月宗近』の記憶や体を構築するのに必要な時間遡行を行っているという証明だった。

「待とう。こんのすけ」
「主様……」
「大丈夫。絶対に、大丈夫だから」

 どこか不安げなこんのすけに笑いかけ、それから広間に戻る。石切丸から「時間がかかりそうかい?」と問われたので、頷いた。いつまで掛かるかは分からない。あの本丸にいた時は一晩で鍛刀が出来たけど、現実世界では数日過ぎていた。石切丸はそれを聞くと「そうか」と頷き、私に一枚のメモを差し出した。

「僕の主がいる神社の連絡先だ。落ち着いたら連絡をくれないかい?」
「分かりました。必ず」

 沢山のことを教えてくれた石切丸は「それじゃあ僕の役目は終わったから。帰るよ」と言ってにこやかに去っていった。武田さんもこの場で聞いたことを纏めたりしなければいけないらしく、また何かあれば連絡する。と言って太郎太刀と共に帰っていった。

 荒れていた本丸は綺麗になっていたけれど、畑や向日葵畑は少し荒れていたからそれを皆で直した。
 畑は鍬を持って耕し、折れた向日葵は切り取り、まだ育ちそうなものは改めて植えなおす。ホースで水を巻けば再び鶴丸が悪戯をしようとしたので、気づいた長谷部にまたもや追いかけまわされていた。

 日常が戻ってきた。私の本丸の、いつもの光景だ。そこにいない一振りは今鍛刀場にいる。燃え盛る炎の中で彼は何を見て、何をその体に刻み付けるのか。分からないけど、もう呪術に縛られないことだけは確かだ。結界を張ることで失った記憶が戻ってくるかは分からない。嫌な記憶を所持したままなのか、それも持たずに戻ってこられるのかも分からない。
 それでも。皆が『戻ってくる』と言ってくれたから。私は信じて待つだけだ。きっと『彼ら』も笑って頷いてくれるはず。

「主ー! 皆ー! ご飯出来たよー!!」
「はーい!!」

 厨当番だった燭台切が皆を呼び集める。
 わらわらと汗と泥で汚れた顔や手足を払いながら畑や厩から皆が戻っていく。私も向日葵畑から足を踏み出せば、一緒に作業をしていた小夜が控えめに手を握ってきた。

「ん? どうしたの?」

 小夜はいつになく沈黙したかと思うと、小さく「ごめんなさい」と謝罪する。

「あの時、僕は主を守ることが出来なかった……皆に主を守るって言ったのに、僕は……」
「小夜くん……」

 確かに小夜はあの時、私を守ると言った。手を引いて逃がしてくれた。向日葵畑に私を隠し、戦いに戻った。でもそれは私だけでなく皆を助ける行為でもあった。だから私はそれを怒ってなんかいないし、責める気もなかった。

「謝らなくていいよ。小夜くんは私を守ってくれたじゃない」
「でも、陸奥守さんが間に合っていなかったら、主は、今頃……」

 そこで言葉を切り、立ち止まって俯いてしまう。そんな小夜に合わせ、私は地面に膝を付いた。

「大丈夫。ほら、見て。私はちゃんと帰ってきたでしょ?」
「うん……でも……」

 軍手をしていたとはいえ、汚れた手だ。それが申し訳ないと思うが、それでも私は両手で小夜の頬を包み、視線を合わせて笑顔を見せた。

「過ぎたことを言ってもしょうがないよ。私も皆を沢山傷つけちゃったし、心配もかけた。でも今ちゃんとこうして、ここにいる。これからも一緒にいる。それだけじゃ、ダメ?」

 茜色の空の下。長く伸びた二つの影の上に私たちはいる。ここにはもう血痕はない。使い切った消火器も転がっていない。また新しく歩き出した本丸で、彼だけを過去に置き去りにするわけにはいかない。

「一緒に頑張ろう。これから、また」

 歩ける足がある。彼らを抱きしめることのできる腕がある。その両方を守ってくれた神様たちのためにも、私は皆と一緒に前に進まなくてはならない。
 小夜だけを置いて、先には進めない。

「……僕は、主を守れなかったことを、きっと、ずっと忘れない……」
「うん」

 私の手の中で小夜の顔がくしゃりと歪む。だけど彼は強く唇を噛みしめ、ぐっと強く目を閉じる。そしてとても不器用だけど、微かに笑ってくれた。

「強くなる。強くなるよ。僕は、今度こそ、あなたを守れるように」
「うん。楽しみにしてる」

 一緒に強くなろう。
 そう言って頬から離した手を差し出せば、小夜は思っていたよりずっと強い力で握り返してきた。

「ねぇ主……修行っていつになったら行けるのかな……」
「お?! もう極ちゃう?! 極ちゃうかー。それはちょっと調べなきゃ分かんないな〜」

 強くなろうと歩き出す小夜の気持ちが嬉しい。力強い足取りは逞しい。そしておどける私にクスリと笑ってくれる、彼の優しさがむず痒くて、あたたかかった。

「主、おかえり」

 辿り着いた広間で待ってくれていた燭台切と、その背後で配膳をしている皆に改めて笑顔を向ける。

「ただいま」

 私は、またこの本丸で一から始めるんだ。皆と、一緒に。


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