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我サクで小ネタ
ベッドの中では素直な女は多いと言うが、彼女はいつだって嘘つきのままだ。
女優と言えば聞こえはいいが、ようは誰をも愛せないタイプなのだろう。八方美人というよりも、他者に興味が無いように見える。
「それをあなたが私に言うの?」
ピロートークを楽しむ暇もない。
髪を梳かす君の後姿を見つめながらゆるく口の端を上げる。
「俺は興味のない女は抱かない主義だ」
「あらそう。いつか後ろから刺されないよう気をつけなさいね」
梳かし終えた髪は艶やかに蛍光灯の明かりを反射させ、安っぽい整髪料の匂いを漂わせて立ち上がる。
「じゃあね。また会いましょ」
そう言って薄紅を引いた唇をゆがめて笑う君に、俺はまたなと言って片手を上げる。
彼女を抱いた後はいつだってこうだ。捕まらないぬくもりを離したくなくていつまでもこうしてベッドにしがみついている。
「…嫌な女だ、本当に」
本気で男を愛してくれない、そんな女に恋をする。
end
我サク小ネタ
肉体関係がない男女なんて存在しないっていうけれど、本当はそんなことない。だって彼は私相手じゃたたないもの。
「文句があるなら別れればいいだろ」
面倒くさそうに話すあなたの眉間の皺に手を伸ばし、それが出来れば苦労はしないわよとその懐に潜り込む。
「私って可哀想な女だわ。こんなことなら女の体を持って生まれることなんてなかったもの」
自分を愛してくれない男なんて真っ平ごめんだなんて大見え切って言えたのは、何も知らない幼い頃の自分だけ。
今は何も見えない、見せてくれない男と私はいつまでも関係を続けている。
「嫌な人」
私の嫌味ももろともせず、はいはいと流して私の髪を梳くあなたの首筋からは知らない女の匂いがする。私を抱かないくせに、私の身近な女は抱くのね、あなたは。
「人生楽しまないと損だからな」
そう言ってつけたばかりの煙草を吹かす、女の香水の匂いが染みついた体に体を寄せ付けた。
end
悪女もうまいけど悪い男もうまい。
そんな我サクちゃん。
我サク小ネタ
あなたは一途なタイプに見えるけど、本当は誰よりも遊び人だと私は知っている。
同級生の皆は知らないかもしれないけど、彼の体中に彫られた刺青の柄を私は知っている。
風紀委員を務めてたあの頃とは違い、日に何度も煙草を吸っていることを私は知っている。
そうして何人もの女の子と体を重ねあわせている。私は途中でそれを数えるのを辞めてしまった。
「しねばいいのに」
自分だけを愛してくれない男の寝顔を眺めながら呟く。真面目な顔して嘘をつく。そんな男の喉元に包丁でも突き立ててやろうかと思う時すらある。
そんなことを言えば“怖い女”と周りに囃し立てられるだろうが、それはあんたたちがそうなるほどに誰かを愛したことがないからだと言ってやりたい。
本当に誰かを愛していれば、裏切られたときには殺したくなるものだ。だって、他の誰にだって渡したくないもの。この人を。
「…しねばいいのに」
起きないあなたの心臓に耳を付けて、動いているそこから溢れる血を啜ってやりたいと思う。
でもそんなことをすればもう、この腕の中で眠ることができない。それは少々惜しいので、優しい私は今日も隠し持っていた包丁を元の場所に戻すのだ。
「愛してるわ、我愛羅くん」
もしあなたが私以外の女と実を結ぶなら、その時は髪の毛一本残さず食べてあげるから覚悟しといてねと、乾いた唇に口付けた。
end
ヤンデレなサクラちゃんに愛されて夜もぐっすりな我愛羅くん。
鋼のメンタルか。(笑)
我サク小ネタ
男と女はロジックじゃない。
理論も理屈も吹っ飛ばして、どうしようもない相手に惹かれるときがある。この人じゃなきゃダメだって思ってるわけじゃないのに、この人の子供を産みたいと思う時がある。
でも大抵そういう男っていうのは、いつだって他の誰かを愛してる。
「あんたってさ、どうしていつもそんな報われない恋ばっかすんの?」
幼い頃からの付き合いの彼女にそう言われ、私はさぁ?と首を傾けてから耳たぶを触る。
そこには彼に内緒で空けた私の心みたいな穴がある。誰のものだって受け入れる、節操のない空虚な穴である。
「そんなんじゃ幸せ逃げてくわよ」
まるでどこかの占い師のようにそう嘯く彼女にほんのりと笑みを返して、だったら彼が私を愛してくれればそれでいいのよと嗤ってやった。
一生私を振り向いてくれない、他人の男に恋をする。そんな卑しい女に成り下がる。私はもう、子供の頃には戻れない。
男と女なんてロジックじゃないのよ。
時にはバカなこともする。
火遊びも火傷も大けがも、時にはするし死にたくなるときだってあるのよ。
でもそれでも、あの人だからって目を瞑ってしまう不思議な力がある物なのよ。
「私にとってはこれが恋なのよ」
シンデレラになれない、私の話。
end
我サク小ネタ
別に私はあの人のことを愛しているわけではないけれど、私を抱く時の指は凄く好き。
几帳面に研がれた丸い子供みたいな爪先で、私の肌を傷つけぬよう肌を撫でる指が好き。
私のイイ所を知っていて、あえて焦らしてくる指も好き。私の尖った指先に、這わせる赤い舌も好き。
ざらりとした肉厚の舌を絡めあわせて、溢れる唾液ごと彼の吐息を飲み込むのが好き。そうして私の卑しく濡れたあの場所に、そっと触れるあなたが好き。
「我慢できない?」
火照った体をくっつけて、耳元で囁く私の声は震えてる。分かってる。本当に我慢できないのは私の方だって。
「もっと我慢してよ、出来るでしょ?」
締まった体に手をついて、腰を沈める私を見上げる彼の熱っぽい眼差しが好き。
「まだ動かないで、こうしてて」
伸ばした手を取り絡めあう、太い指先に抱きしめられる指が羨ましい。私もそうして隙間なく、彼と密着し抱き潰れてしまいたい。
「ぁ…ねぇ、まだ駄目よ、動かないで、そのままでいて」
私の中で震えてる、あなたの汚れた欲望が欲しくって、あなたの残骸が欲しくって、私は貪欲な口を開いてあなたを飲み込むの。
「ねぇ、すきよ」
私の肌を撫でる、いつもは乾いた指先が汗ばむのが凄くすき。
いつもは涼しい顔をした、綺麗な顔が歪むのがすき。そうしていつしか耐えられなくなって、獣みたいに息を荒げながら腰を振る、あなたの必死な顔が好き。
「あなたがすきよ、だいすきよ」
身体の奥で感じる飛沫に肌を泡立てて、逃げられないよう足を絡めた。
毒蜘蛛の糸に絡まった、憐れな命が愛おしかった。
end
とんでもねえ悪女で策士なサクラちゃんとか下衆うめえです。(恍惚)
我サク小ネタ
男は基本的に阿呆だ。阿呆だし物忘れは激しいし目先の欲に貪欲だ。お預けなんてできないしおすわりも待ても苦手である。走り出したら一直線だ。止まることなんてできやしない。
ましてややめてやおねがいなどといわれても、余計に興奮するだけだからそっちこそやめろというのに。
「できたらどうするのよ」
酷くむすったれた、先程の熱など嘘のようにぶーたれる不機嫌な形相を見つめて頭を掻く。
正直どんな反応をするのか、どんな心地なのかを知りたくて嫌がるサクラを縛り付けて中に出したものの、後片付けはめんどうだしサクラの文句も聞き飽きたし、正直もう寝たい。
「まぁ…蓄えはあるし、その時は籍でもいれればいいだろう」
だから今は寝ようと片づけを終えたベッドに横になれば、足癖の悪い彼女の踵が俺の背中を容赦なく蹴り上げる。
「あんたって本当責任感ないんだから!産むのは私なのよ?!女の気持ちももっと考えてよ!」
ヒステリックに泣き叫ぶ女の声程耳障りなものはない。
別にいいじゃないか子供の一人や二人ぐらい。金なら稼ぐ。何の問題があるのかと問えば今度は拳が飛んできたので流石に受け止めた。
「サイッテー!」
顔を真っ赤にして涙目で睨んでくるサクラには悪いが、そんな最低な奴に足を開いているのはどこの誰だと問いたい。
そもそも別に浮気でも不倫でもないし、籍も入れることが出来る歳なんだからそう喚くこともないだろう。それとももっと遊びたかったのかと問えばそうじゃなくて!と彼女が叫ぶ。
「物事には順序ってものがあるでしょ?!プロポーズもされてないのにこんな籍の入れ方なんて嫌!」
喚くサクラの言葉にああそういうことかと思い至り、とりあえず俺の子を産むのは嫌じゃないんだなと問えば途端に黙る。素直なのか素直じゃないのかよく分からない女だ。
「プロポーズは後日ちゃんとしてやるから今は寝るぞ。明日の夢より今の夢だ」
「あんたは羊でも数えてろ!」
容赦ないツッコミを入れてくるサクラの肩を押し、騒ぐ口を自らので塞いで横になる。
水を嫌がる猫のように暴れる体を無理やり閉じ込め拘束し、騒ぎ立てる罵詈雑言をはいはいの二言ですべて聞き流し目を閉じる。
「とりあえず明日役所に行ってくるから話はそれからだ」
「だからプロポーズ!」
いつしか論点がずれていることに気づいていないのか、インコのようにピーチクパーチクプロポーズの五文字を繰り返すサクラのけたたましい声を聴きながら、俺はもう疲れたと小声で呟き目を閉じた。
羊の声より甲高い、小鳥の声が夢にまで出てきた。
end
阿呆な男と苦労する女な我サクちゃん。
我サク小ネタ
切った指先に浮かぶ、ぷっくりとした赤い島に目を落とす。
あーあ。やっちゃった。そう思う間もなくどんどん膨れていくそれは、ついに臨界点を突破しぷつりと割れて流れ出る。
「…せいりみたい」
自分の股から流れ落ちる、女の証を思い出す。好きじゃないのよね、あれ。
そんなことを思いながら、溢れる血潮に舌を伸ばしたところで横取りされる。
「…血液どろぼー」
人の指先を赤子のように吸う彼に文句を零せば、赤子は血飲み子とも言うだろうと返され指先を噛まれる。
「俺が吸血鬼じゃなくてよかったな。お前の血を飲み干して殺すこともない」
バカみたいな言葉を漏らす適当な男に肩を竦め、あんたが吸血鬼なら私の股の間から流れる血も飲んでくれたのだろうかとそんなくだらないことを考えた。
女の証に対する価値観なんて、その程度のものだった。
「あーあ、つまんない」
いつの間にか服の間から滑り込む、熱い掌に目を閉じた。
疼く女の証が酷く熱い。ようやく終わった女の日に、男は飢えた獣のようにがっついた。
end
せいりネタをこういう風にいじって書くのが好きなんですが、大概頭がおかしいと罵られる。でもそれが楽しい。(ゲス顔)
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