小説
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夏祭り



一年目の夏の話。



じわじわと鳴いていた蝉の声も静まり、宵に紛れて聴こえるのは鈴虫の声。
リーンリーンと其処此処から聞こえてくる柔らかな音色を聞きながら、サクラは小さな団扇をはたはたと煽いだ。

「あ!サクラー!!こっちこっちー!!」

紺色の浴衣を纏ったいのが大きく手を振る。
それに対しサクラもゆるりと手を振り返し、集まっていた面々に向かって笑みを向けた。

「さ、サクラさんの浴衣姿…!美しいです!!」

子供のように丸い瞳を輝かせるリーに礼を言えば、いのもそういえば見たことない浴衣ねと顎に手を当てる。

「ていうか何かすごい上物?生地とか全然あたしたちのと違うんだけど!」

いのが興奮したように触るサクラの浴衣は、去年我愛羅に贈ってもらったものでそこいらの浴衣より遥かに質がいい。
だがそれを言うのは憚られたので、ただそうかしらと首を傾けるだけに止めておいた。

「ところでナルト達は?」

普段ならリーと競ってサクラを褒めちぎるナルトの姿が見えないと首を巡らせれば、テンテンがまだ来てないのよと答える。

「それに我愛羅くんもまだよね」

いのが続けて出した名前に、そうと頷く。
今回我愛羅は木の葉の祭の様子を視察に来ており、その案内をナルトとサクラに任せられていた。
しかしその当人の姿が見えないと話していると、テンテンが来たみたい!と声を上げる

「ナルトー!我愛羅ー!」

真っ先に二人を見つけたテンテンが手を振れば、ナルトがおー!と片腕を上げ答え、我愛羅は無言で歩みを進める。

「遅くなって悪ぃってばよ。着つけに時間かかっちゃってさ」

苦笑いするナルトは青地の浴衣を纏っており、慣れない浴衣に戸惑ったと頭を掻く。
それに対しいのはしょうがない奴ねと呆れるが、ナルトは軽く苦笑いした後サクラに向き直り目を輝かせる。

「サクラちゃんの着物すっげえ色っぽいってばよ!可愛いぜサクラちゃん!!」

興奮するナルトにありがとうと微笑めば、ナルトは照れたようにでへへと笑い格好を崩す。
対する我愛羅は終始無言ではあったが、ちらりとサクラを見やった後満足そうに目を細め視線を落とす。
それだけで緩みそうになる頬をそっと団扇で隠し、同じように宿屋で購入した黒地の浴衣を纏っていた我愛羅の袖を誰にも見られぬようそっと掴む。

「それじゃあ皆揃ったことだし」
「早速行きましょう!!」

テンテンの声に続けてリーが拳を握れば、ナルトもおう!と声を上げ、いのはやっぱリンゴ飴は外せないわよねー、と笑みを零す。

「サクラも買うでしょ?リンゴ飴」

振り返ったいのにうんと頷きながら袖を離せば、我愛羅の指先がそっと離れた指に触れ、軽く撫でられる。

「我愛羅!祭りと言えば屋台全制覇!覚えとけってばよ!」
「それだと何件か被るだろう。食い物などはどうするつもりだ」

そっと触れ合わせていた手を離し、颯爽と歩き出す我愛羅の背にサクラも続く。
からころとそれぞれの足元から広がる下駄の音も周りの喧騒にかき消されていく。
己の数歩先でナルトとリーの相手をする我愛羅の背を時折確認しながら、サクラもいのやテンテンと屋台を覗き込んではおしゃべりに花を咲かせる。
するとナルトの前方から聞きなれた声が聞こえ、皆足を止める。

「へいらっしゃいらっしゃーい!犬塚印の焼きそばだぜー!」
「犬塚印って…何か不味そうだってばよ」

ナルトが突っ込む斜め前方では、何故かキバがへらを手に取り焼きそばを焼いていた。

「おっ、ナルトじゃねえか!」
「おう。つかお前らこんなとこで何してんの?」

呆れたようなナルトの問いに、キバは屋台の手伝いだよと顔を顰める。

「折角の祭だってのに知り合いのおっちゃんが腰悪くしちまってよ。代わりに俺が出る羽目になったんだよ」
「クゥン…」

赤丸も祭りを楽しみたかったのだろう。
キバの隣でしゅん、と項垂れる赤丸にサクラが苦笑いすれば、リーは大変ですねと眉尻を下げる。

「出来れば僕も手伝ってあげたかったんですが、今日は我愛羅くんの付添があるので…」

肩を落とすリーにキバは別に構わねえよと苦笑いする。
代わりにナルトに視線を向けると、何か買って行け!と手にしていたへらを向ける。

「えー、お前が作ったやきそばとか絶対不味いだろ。しかも犬塚印とかセンスねえし」
「ああ?!誰がセンスねえだって?!つーかお前俺の器用さ舐めんなよ!!」

これでも母ちゃんに叩きこまれてっからな!
胸を張るキバに続き赤丸も吠えれば、ナルトははいはいと肩を竦める。

「じゃあからあげ一つ」
「焼きそば買えよ!」

ナルトのボケにキバが盛大に突っ込めば、リーはじゃあ僕はフランクフルトで!と声を上げる。

「よく見ろ!フランクフルトは売ってねえよ!!」

焼きそば買え焼きそば!
繰り広げられる漫才に笑っていれば、我愛羅がサクラにこそりと耳打ちしてくる。

「疑問なんだが、お前たちはいつもああなのか?」
「うん。まぁ、大体あんな感じね」

我愛羅の正直な問いかけに苦笑いしつつ答えれば、元気なことだなと嘆息と共に返される。
確かにそれには同感だわとナルトとリーのボケ対決にキバが突っ込みを入れている姿を眺めていると、あんたたち!とキバの母親であるツメが姿を現し雷を落とす。

「喧嘩してたら商売の邪魔でしょうが!買うか買わないかハッキリしな!!」

腰に手を当て眉を吊り上げる姿に男たちが顔を青くすれば、我愛羅がすいと前に出る。

「ってあら、風影じゃないの」
「こんばんは」

我愛羅の姿を目にした途端雰囲気を和らげた母親にキバは肩を下し、ナルトは助かったってばよ…と胸を抑える。

「今日はどうしたのさ」
「木の葉の祭の視察に」

短い答えではあったが、ツメは気にすることなくそうかいと明るく笑い、木の葉の祭は賑やかだろうと胸を張る。

「この祭りは木の葉創生からずっと続いてるものだからね。ゆっくり楽しんでいきな」

風影相手であっても態度を変えない母親にキバはおいおいと呆れたが、我愛羅は気にすることなく礼を述べてから商品に目を落とす。

「ところでおすすめは焼きそばですか?」
「焼きそばはうちの子が焼いたからあんまりおすすめしないねぇ」

意地悪く笑う母親におい!とキバが突っ込むが、我愛羅はでは焼きそばを一つ、と声をかける。

「え…いいのかよ」

まさか我愛羅が購入してくれるとは思わずキバが目を丸くすれば、我愛羅はおすすめなんだろう?と口の端を上げる。

「その代り紅生姜を多めにつけてくれたらありがたいが」

お茶目な交渉をしてくる我愛羅にキバは暫し瞬いた後、しょうがねえなぁと笑みを浮かべる。

「それぐらいサービスしてやるっつの!ほら!」

渡された焼きそばに我愛羅が礼を言えば、いいってことよと胸を張る。

「買ってもらったくせにあんたが威張るんじゃないよ。それよりありがとうね」

微笑むツメにいえ、と我愛羅が首を振れば、後ろからナルトがじゃあ俺も何か買ってやるかと顔を覗かせる。

「つーことで、俺も焼きそば!」
「僕も焼きそばで!」

結局キバが作ったものを買ってやる二人に女性陣が素直じゃないわね、とこそりと笑う。

「お前たちも何か食べるか?」

問いかけてくる我愛羅にテンテンがたこ焼き食べたい!と返せば、じゃあ買ってやると我愛羅が財布を取り出す。

「え、いいの?!」

驚くテンテンに今日の礼だと返せば、テンテンはやったー!と満面の笑みを浮かべる。

「ありがと我愛羅!」
「構わん」

喜ぶテンテンにナルトが俺には?!と叫ぶが、お前は知らんと顔を背けられずるいずるいと我愛羅の背を叩く。

「お前それはあれだ!えーと…えこ贔屓だ!」

プンスカと怒るナルトに何とでも言えと返すと、どこか座るところがないかと首を巡らせる。

「あ、皆あそこ空いたわよ!」

先に首を巡らせていたいのが指差したのは祭り用にと設えられたベンチで、リーがではあそこにしましょう!と駆けだす。
が、すぐさまちょっと待てと我愛羅に首根っこを掴まれる。

「ぐえっ!な、何するんですか我愛羅くん…」

げほげほと咽ながらリーが問いかければ、我愛羅は女性が先だろうと顔を顰める。

「ほら、早く座れ」

言葉はぶっきらぼうではあるが、言葉と同時に軽く背を押されサクラは不器用な人ねと苦笑いしてからいのとテンテンの背を押し歩き出す。

「何か今日の我愛羅凄い紳士ね」
「優しいし気が利くわよね、誰かたちと違って」

からかういのの言葉にナルトとリーがうっ、と詰まるが我愛羅は特に気にした様子もなくサクラの隣に腰かけ割り箸を割る。

「一口頂戴」
「ん」

サクラがリンゴ飴片手に強請れば、我愛羅は掬っていた麺をそのままサクラの口元に持ってくる。

「あーっ!が、我愛羅ずりぃ!!俺もサクラちゃんにあーん、ってされたいししたいってばよ!!」
「本当ですよ我愛羅くん!抜け駆けなんて狡いです!」

叫ぶ男たちの声を華麗に流す我愛羅に促されるままサクラはそれに口を付ける。

「んー…普通!」

サクラの感想にいのが酷いわね!と笑い、テンテンも私も頂戴と身を乗り出す。

「じゃあテンテン僕のどうぞ」
「あ、ありがとー!」
「じゃあ俺はいのかよ…」
「何その不服そうな顔!」

ナルトの態度にいのが拳を握れば、ナルトは冗談だってば!と焼きそばを突きだす。

「つーか何気に我愛羅サクラちゃんの隣陣取ってるしよ」
「たまたまだ」

しれっと答える我愛羅にサクラは笑いそうにるが、ナルトは不服そうな顔を崩さぬまま焼きそばを啜る。
その隣ではテンテンが確かに普通!と感想を述べ、リーも普通に美味しいですねと感想を零す。

「ていうか焼きそば食べちゃうと喉渇くわよね。何か飲み物買ってくるわ」

立ち上がるいのにサクラも手伝うわと立ち上がる。

「お前たちだけで大丈夫か?」

気遣ってくる我愛羅に平気よと笑いかければ、じゃあ私が付添に行くわとテンテンが立ち上がる。

「我愛羅くんはお茶でいいでしょ?」
「ああ、頼む」

ナルトがラムネにするかサイダーにするか悩む横ではリーが緑茶にするかウーロン茶にするか悩んでいる。
平和なことだと焼きそばを啜る我愛羅にサクラは口元を緩める。

「んー…じゃあ俺ラムネ!」
「僕はウーロン茶でお願いします!」

ようやく決めたらしい二人にじゃあ買ってくるわね、といのが答えサクラを呼ぶ。

「少し待っててね」
「ああ、気を付けてな」

小声でやり取りをした後、サクラはいのとテンテンに続き人ごみの中に消えて行く。

「あー…でもサクラちゃん本当キレイだってばよ…」
「同感です…僕なんかつい項を見てしまって…胸がドキドキしっぱなしです」

女性陣が姿を消した途端懸想相手についてアレコレ話し出す二人に素直なことだと己の気持ちを押し隠したまま我愛羅は黙って食事を続ける。
それに先程から絶賛しているサクラの浴衣が実は己が贈ったものだと知らない二人が少々気の毒ではあったが、同時に密かな優越感も感じており何とも言えない気分だと生姜を齧る。

「つか我愛羅、お前今日やたらと女子に優しいよな」

どういう風の吹き回しだとナルトにからかわれ、我愛羅は心外だと顔を顰める。

「元々はお前と春野に課せられていた任務なのだろう?それにわざわざテンテンや山中が付き合ってくれたんだ。礼を返すのは当然の事だろう」

食べ終えた割り箸を輪ゴムで挟み、ごちそうさまでしたと手を合わせる我愛羅にリーは成程と頷く。

「僕たちが勝手についてきたにも関わらず礼を返すとは…流石です我愛羅くん!やはり君は風影の器ですね!」
「そうか」

興奮したように拳を握るリーに、いいから食えよとナルトが促す。

「つかサクラちゃん達遅くね?」
「心配だな。探しに行くか」
「ふぉっふぉまっふぇくふぁふぁい!!」
「うわ汚ねえってばよ!」

口に焼きそばを含んだまま喋るリーにナルトが体を離し、我愛羅もぱっと身を翻す。
それに対しふみまふぇんと返しながら、リーは焼きそばを飲み込むと僕も行きます!と立ち上がる。

「二人ばかりいい格好はさせませんよ!!」

拳を握るリーにナルトがはいはいと返し、我愛羅も軽く吐息を零す。

「意気込むのは構わんがその汚い口元を拭うのを忘れるなよ」
「ぶふっ!ゲジマユの口ソースと青のりだらけだってばよ!」
「ええ?!本当ですか?!」

あわあわと手の甲で拭うリーを一瞥することなく、我愛羅とナルトはゴミを捨ててから歩き出す。

「つーかどこに買いに行ったんだろうな」
「買うとしたらどの辺りだ?」
「屋台があるのはあっちですよね」

追いついてきたリーと共に三人で屋台の並ぶ大通りを進んでいくと、少し先で人だかりが出来ていることに気付く。
もしやそこにいるのではと視線を合わせたところで、しゃーんなろー!という掛け声と共に三人の前に一人の男が転がり込んでくる。

「だから!いい加減しつこいって言ってんでしょ!!」
「これ以上ついてくるなら本気でぶっ飛ばすわよ!」
「言っとくけど私たち、結構強いからね?」

目下、白目を向いて倒れる男から視線を上げた三人は心配する必要なかったかな…と粟立った肌を擦る。
だがここまで来たのだから無視もできないだろうと歩き出せば、ちょうど誰かの手がサクラの腕を掴む。

「あ!誰か分かんねえけど触んじゃねえってばよ!」

すぐさま駆けだしたナルトにリーも続くが、我愛羅は特に急ぐことなく歩を進める。
ナンパだったのだろう、サクラたちに声をかけたらしい数人の男と言い合いを始める二人の声を聞きながら、我愛羅もするりと人の間から腕を伸ばしサクラの手を掴む。

「怪我は?」
「ううん。平気よ」
「そうか。お前たちも平気か?」

サクラの返答に頷き、周りにいたいのとテンテンにも問いかければ二人とも余裕!と笑みを零す。
それに対し勇ましいことだと思いつつ頷いた瞬間、ナルトがよし!と声を上げる。

「アイツら全員追っ払ったからよ!」
「大丈夫ですか?サクラさん」

にししと笑うナルトと駆けつけてきたリーにサクラが礼を述べれば、その後ろから本当あんたたちサクラしか見えてないわよねーといのが茶化し始める。

「我愛羅くんは心配してくれたのに」
「まぁ今更だけどね」

笑うテンテンに二人が詰まり、我愛羅は肩を竦める。

「ていうかアイツらのせいでまだ飲み物買えてないのよね。もうこの際だからみんなで行こうよ」

先程のことをさらりと流したいのの提案にそうだな、とナルトが続く。
それに対し我愛羅もそっちの方が安全だなと返せば、じゃあ行きましょうとサクラがその背を軽く押す。

「あ!だから我愛羅サクラちゃんの隣歩くなっての!!」
「何だ、木の葉にはそういう法律でもあるのか?」
「ち、違ぇけど!違ぇけどさ!!」
「抜け駆けは狡いですよ我愛羅くん!」

駆け寄ってくる二人に嘆息し、我愛羅はそれではと一歩引く。

「全く…あいつらは本当に元気だな」
「サクラが絡むと特にね。ごめんね我愛羅くん」

我愛羅の右隣に立ついのの謝罪に気にするなと首を振る。
それに対し左隣に立っていたテンテンがこれじゃあ我愛羅が二人の付添みたいよねと苦笑いする。

「ていうかナルトが一番サクラのこと依怙贔屓してるわよね」
「今更だけど、あれが惚れた弱みっていう奴かしらね」

両端の女子から零された言葉に我愛羅はそろりと視線を逸らす。
ナルトとリーに挟まれ、鬱陶しいと声を上げながら二人を諌めるサクラの背を眺めつつ、惚れた弱みか、と内心で復唱する。
数歩先で歩くすらりとした背中からは強かでありつつも清楚な空気が漂い、時折煽ぐ団扇の風が後れ毛をふわりと揺らす。
そうしてそこから見える白い項は、等間隔で吊るされた提灯の朱い光りを受け橙に染まる。

確かに、惚れた弱みはあるかもしれんな。
サクラの色香を思い出し、くらくらしそうになる額を抑えつつふうと嘆息すれば自然と口が開く。

「本当に、苦労するな」

あまりにも端的な言葉の本当の意味は誰にも気づかれないだろう。
案の定テンテンは本当にねと目の前に背を眺めつつ苦笑いし、いのもそうよねと腕を組む。

「本当は頼りになるんだけど、サクラが絡むとちょっと鬱陶しいのよね」

いのの正直な気持ちに我愛羅もそうだなと返したところで、結局サクラに殴り飛ばされたナルトが遥か後方で地面に沈む。
あーあ。
呟くいのが額に手を当て、テンテンはやっぱりああなるかと頬を掻く。

「我愛羅くん!早く行きましょ!」

サクラの隣では顔を青くしたリーがナルトくううううん!!と叫んでおり、呼ばれたナルトはぐったりと地面に頭を突っ込んだまま動かない。
軽く背筋が凍る思いでそれを眺めていれば、再度サクラに名を呼ばれその隣に並ぶ。

「おい、あれは少しやりすぎだろう」
「いいのよあれぐらいで」

ふんとそっぽを向くサクラに吐息を吐きだし、リーに助けられるナルトを振り返れば袖を掴まれる。

「………」

顔は背けたまま、けれど少し不安げな空気が読み取れ我愛羅はしょうがない奴だと瞼を一度伏せる。

「サクラ」

周りには聞こえぬよう、隣にいるサクラにだけ聞こえる声量で名を呼べば、サクラはちらりと不安そうな瞳を向けてくる。
それに対し我愛羅は軽く目を細めた後、人の隙間を縫うようにするりとサクラに身を寄せ、そっと囁く。

「その浴衣、似合ってるぞ」

もたらされた賛辞に目を開けば、体を離した我愛羅が機嫌よさげに口の端を上げる。
それだけで不安を覚えた心は舞い上がり、天にも昇るような気になってくる。

「うふふ、知ってる」

満面の笑みと共にそう答えれば、我愛羅もそうかと頷き返す。
それだけで二人の空気は和やかになり、聞こえる喧騒も遠い世界のように感じてくる。

去年とは違い、皆で騒がしく過ごす夏の夜に視線を合わせ、二人はそっと笑みを交わした。


end






この後我愛羅くんはいのちゃんにジュースを驕ります。
サクラちゃんはまたかき氷を買って貰いニコニコしたり、我愛羅くんはナルトにしつこく強請られて仕方なくいか焼きなんかを驕ったり、リーくんと射的対決するんだと思います。



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