小説
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正月早々木の葉で大騒動を起こした二人ではあったが、口八丁手八丁で綱手を言いくるめ共に砂隠へと戻ってきた。
サクラの両親に結婚したいんですと再度挨拶をすれば、どうぞどうぞとあっさり認めてもらったので特に問題もない。
控えていた年始の行事も終え、その際に我愛羅はサクラと結婚する旨をさらっと発表し里内を軽く震撼させたが、前もってある程度知られていたせいか特に問題になることも無く、むしろようやく里長に嫁が出来るのかと安堵されたものであった。

そしてようやく遅れた正月休みがやってくる。
普段なら疲れを癒す為昼まで寝こける我愛羅だが、珍しくいつも通り起きてきてサクラは驚いた。

「サクラ」
「うん?」

朝食後、まだどこかぼんやりとしている我愛羅の代わりに食器を洗っていると、ようやく覚醒した声が名を呼んでくる。
洗い終えた食器を籠に入れ、なあにと振り向けば今日は用事があるのかと問われ首を振る。
遅れてやってきた我愛羅の正月休みとサクラの休日は重なっていた。
というよりも我愛羅が勝手に調整したのだが、その点には目を瞑っていた。

「特にないけど、どこかに行くの?」
「ああ。里を出て都の方に行くんだが、お前にも来て欲しいんだ」
「風の都?」

エプロンを畳みながら問いかければ我愛羅は頷く。
会わせたい人がいると言うのだ。
一体誰なのだろうと思い問うてみたが、それは着いてからのお楽しみだと言われ口を噤む。

「別にいいけど…」

先に洗濯物済ませててよかったわと思いつつ頷けば、では早速準備をしようと我愛羅は立ち上がる。
風の都かぁ。
初めて行く国の中心地に思わず心躍らせていれば、我愛羅はそうだと振り返る。

「服装は羽目を外しても構わんぞ」
「何よ、普段が地味とでも言いたいの?」

えいえいと背を叩きつつ文句を言えば、いつも可愛いぞとおだてられ煩いと返す。
あけっぴろになった我愛羅は恥という物が無いのか、さらっと愛の言葉を囁いたり褒めてくるので油断ならない。
案の定今日も何食わぬ顔でおだてられ頬が赤くなるが、言った本人は気にした様子もなく衣装棚を開ける。
何だかなぁ。
照れつつも自身も何を着ようかと衣装棚を漁る。

羽目を外してもいいと言われたが、まだ冬だ。
日中幾らあたたかいとはいえ流石にパレオを着るのは少々寒い。
かと言って自分の私服と言えば新鮮味がないし。どうしたものか。
うんうん唸っていると後ろから声を掛けられ振り返る。

「何それ」

我愛羅が手に持つ衣装に目を向ければ、風の国の一般的な衣装だと返される。

「パンジャビドレスやパンジャビスーツと呼ばれている普段着だ。派手だから忍には向かんがな」

受け取り広げてみれば、それはロングドレスのような衣装で胸元は白く、足元に行くにつれ美しい薄紅へとグラデーションが広がっている。
胸元には細かな刺繍が施され、裾にはレースがあしらわれている。
目に鮮やかなだけでなく乙女心までくすぐられ、可愛いと呟けばインナーは好きなものを着ればいいと教えられる。

「ふーん、パレオとはまた違うんだね」

言われた通り適当にインナーを決め、渡された細身のズボンに施された刺繍の細やかさに感嘆の声を漏らせば、後ろから早く着ろと上着を被せられる。

「わー可愛い!」

ゆったりと広がる裾で遊ぶようにくるくる回れば、我愛羅も満足げに頷く。
これも例の大名の娘から聞いたのかと問えば、これはこれから会う人から買ったらしい。

「衣服に通じた人でな。風の国の衣装の一着ぐらい贈ってやれと買わされた」

肩を竦める我愛羅にふーんと頷きつつ、レースや刺繍に目を落としているとゴソゴソと衣擦れの音がする。
どうやら我愛羅も着る服を決めたらしい。
薄紫のシャツに袖を通すと灰色がかった一枚の長いコートを羽織り、腰の位置で革のベルトを止め、控えめに刺繍があしらわれているショールを肩にかける。

「…無駄に格好良くて腹が立つんだけど」
「見栄えがよくていいだろう」

すっきりとした細身のラインに広がる裾が妙に色っぽく、少々悔しくなりぼすぼすと背を叩けばもう行くぞ、と告げられ慌てて紅だけ引いて着いて行く。
都までどう行くのかと問えば、里と国との境で馬車に乗り都市部まで行くらしい。
辿り着いた里境では馬車が既に待機しており、それに乗り込み揺られるていると徐々に景色に色味が増えてくる。

「わあ…!綺麗…」

毛織物だけでなく綿や麻、絹等であしらわれた衣装や織物も多く、店先に吊るされ風に揺れるさまが美しい。
街行く女性の格好は皆色鮮やかで、思わずいいなぁと呟く。
服や織物だけでなくガラス細工や陶器、家具店なども洒落たものが多く知らず心が躍っていく。

「ねぇ我愛羅くん、後で見に行こうよ」

興奮さめ止まず隣にいる男の袖を引くが、反応がないのでどうしたのかと振り返り固まる。

「寝やがったわコイツ…」

馬車が揺れる度に動く頭に閉じた瞼。
かくんかくんと揺れる身体に思わずため息を零し額を押さえる。

「…ま、忙しかったし…今日の所は許してあげるわよ」

つん、と頬を突けば僅かに眉間に皺が寄る。
だが起きる気配はなく浅い眠りを貪っている。
まったくしょうがない人ね。
その後も結局降り場に着くまで目覚めることはなく、やれやれと嘆息した。

辿り着いた都で、サクラは空を見上げるようにして顔を上げる。
穏やかに吹く風にたなびく煌びやかな衣装や織物に目を輝かせ、綺麗だとか可愛いだとか、子供のようにはしゃぐサクラを我愛羅は穏やかに眺める。
待ち合わせ時間まで少しばかり余裕があるが、のんびり歩けばちょうどいいぐらいだろう。
我愛羅はそう判断すると高台に掲げられている時計を一度確認してからサクラを呼ぶ。

「サクラ、そろそろ行こう」
「あ、ごめん」

店先に並んだ小物に目を落としていたサクラだが、我愛羅に急かされ慌てて隣に並ぶ。

「そう言えばどこに行くの?」

今更だが聞いていなかったと思い問いかけるが、もうすぐ着くと答えるだけで明確な答えは口にしない。
一体何なのかと思いつつ歩いていると、厳かでありながらも清楚な風情の建物の前で立ち止まる。

「…あの、我愛羅くん?」

戸惑うサクラの手を取ったまま、我愛羅は店の扉を開け堂々と中に入る。
いらっしゃいませー。
朗らかな女性店員の声に歓迎されながらも、サクラは広がる光景に軽く眩暈を覚えた。

(こ、ここって…ブライダルショップ?!)

どんな反応をしていいか分からず固まるサクラを横に、平然と立つ我愛羅が店員と二言三言交わすとこちらです、と案内される。
どういうことなのか分からず手を引かれるままに着いて行けば、カウンターの横を通り抜け店の奥へと連れて行かれる。
そうしてそのまま二階へと続く階段を上り、ある部屋の前で立ち止まる。

「こちらです」
「どうも」

頭を下げる店員に礼を述べ、我愛羅は扉をノックする。
すると中から駆けてくる音が聞こえ、ドアノブが回ると勢いよく扉が開いた。

「待ってたのよー!」

ぎゅう、と我愛羅ごと分厚い肉壁に抱きすくめられぎゃあああと叫ぶ。
一体何なのかと顔を上げれば、出来のいいガイの女装姿のような男が満面の笑みを浮かべていて失神しそうになる。

「お久しぶりです、パニエ先生」
「全くよ!たまには顔出しなさいよね」

まさかのオネエキャラ登場に魂が抜けそうになりながらも何とか我愛羅の袖を掴めば、青ざめるサクラに気づいたのかああ、と声を漏らす。

「嫁です」

違う。
いや、違わないけど現状の選択肢としては違う。
もっと他に言うことがあるだろう!
そう叫びそうになっていると、我愛羅より頭一つ分高い顔がサクラへと向き破顔する。

「まー!化粧っ気がない分肌が綺麗ねー!羨ましいわぁ」

もうこれにもどう突っ込んでいいかが分からない。
褒められているのかけなされているのか分からぬまま、とにかく引きつる頬を抑え会釈する。

「まぁ立ち話もなんだし中に入りなさいな。今日はあんた達のために予定空けてんだから」

さ、どうぞ。
促された部屋へ手を引かれながら足を踏み入れれば、広がる景色に思わず目を開く。

「うわっ…!すごい…」

白を基調とした部屋の中、まるで王族が住んでいるかのような豪華な内装に思わず感嘆の息が漏れる。
猫足のテーブルには沢山の資料が重ねられてはいるが、それでも周囲に溶け込んでる辺りセンスがいいのだろう。
つい見回してしまいそうになる視線を必死に目の前を歩くオネエに固定すれば、どこかの貴族かと突っ込みたくなるような薄黄色のドレスを身に纏った大きな背が目に入る。

うわぁ…濃いなぁ…
漏らしそうになる本音を必死に噛み殺し、一切突っ込まない我愛羅に視線を向けるが特に気にした様子はない。
となるとあの人は普段からああいう格好をしているということなのだろう。
あまりにも強烈なキャラにどうしていいか分からずたじたじになるが、どうぞと促され我愛羅と共に座り心地のいいソファーに腰かける。

「今日は無理を言ってすみませんでした」
「あら気にしなくていいのよ。あんたが私に頼みごとするなんて滅多にないんだから、すごい楽しみだったのよ」

ぐふふと笑う姿は完全に化物だが、意外と愛嬌のある顔をされるから困る。
そのうち慣れるかなぁ、と木の葉でのガイ班の寸劇に付き合わされた過去を思い出していれば、早速ですがと我愛羅が口を開く。

「嫁の仕事が終わったら式を挙げようと思っているんですが、勝手がわからないので助言をいただこうかと」

そう思うなら何故私に相談しなかった。
喉の奥まで出かかった言葉を必死に飲み込みじとりと隣を眺めれば、それに気づいた我愛羅がどうかしたのかと首を傾げる。

「何で相談してくれなかったのよ」

式の事を考えてくれているなら自分だって色々書籍を漁ったり、誰かに相談したのにと言えば、そんな暇なかっただろうがと額を小突かれ思わず唸る。
そのやり取りを見ていた目の前のオネエは楽しげに笑うと、仲が良くて羨ましいわと茶化してくる。

「ああ、そういえばお名前は?」
「春野サクラです。えっと…が、しゅ、主人がお世話になっております…」

我愛羅が、と言おうとしたが、嫁と言われたのだから相応の言葉で対応しよう。
そう思ったのだが“主人”という慣れない言葉に思わず頬が赤くなる。
婚約中で主人というのは間違いな気もしたが、彼と言うのも何だか他人行儀っぽく、かと言ってうちの我愛羅が、だと身内のようになってしまう。
悩んだ結果の選択に対し、我愛羅は緩む頬を何とか押さえつけようとするが上手くいかず結局顔を背ける。

「んまー、見てるだけで御馳走様って感じね。まぁいいわ。私はパニエよ、よろしくね」

茶化されつつも頭を下げれば、パニエはそれじゃあとテーブルの上に重ねていた資料の一つを手に取る。

「式場はうちの子が紹介してくれるわ。この後来るからその時にいろいろ聞いてちょうだい」
「はい」

揃って頷けば、私が紹介するのはドレスよと資料を開く。
そこに広がる様々なドレスに思わずうわぁ、と呟き目を輝かせる。

「綺麗…可愛い…」

幾ら三十になるとはいえウェディングドレスに対する憧れと言うものはやはりある。
色も形も様々なそれにどれにしようかなと悩んでいると、ふと違和感を感じ首を傾ける。

「何か…このデザインどこかで見たことがあるような…」

どこだったかしらと頭を悩ませていると、横から覗き込んできた我愛羅がああ、と言葉を漏らす。

「これはユカタが結婚した時に着ていたドレスだな」
「あ!そっか!ユカタちゃんのだ!」

予算の関係上レンタルしたと言っていた事を思い出しつつページをめくっていくと、別のドレスにあ!と声を漏らす。
それに何なのかと我愛羅が視線を移せば、私見たことある!と丸い目が我愛羅を映す。

「木の葉の書店で見たのよ、雑誌に載ってたわ」
「ああ、うちのドレスたまに雑誌に広告載せるのよ」

木の葉にも出回ってたのねぇ。
のほほんと紡ぐパニエだが、サクラは雑誌に紹介されていた考案者の名前を思い出しもしやと上目でその顔を見上げる。

「も、もしかして…このドレス考案してるのって…」
「ん?私に決まってるじゃない」
「因みに此処のブライダルショップのオーナーだ」
「ええ?!」

驚くサクラにパニエはぐふふふと笑う。

「まさか旦那さんが私と知り合いだなんて思ってもみなかったでしょう?」
「は、はい。でも何でまた…」

縮こまるサクラに我愛羅は言っただろう、と言葉を紡ぐ。

「各方面のお偉い方と食事会をして顔見知りになったと」
「うん?あ、ああそういえば言ってたわね」
「そのうちのお一人がパニエ先生だ」

ブライダル以外でも服飾店と宝石店も展開してんのよぉーと続けるパニエに思わず背が固まる。
とんでもない人物と知り合いの男に目を向けるが、相変わらず気にした様子はなくぱらぱらと資料をめくっている。

「…正直よく分からんな」

顔を顰める我愛羅に理想はないのかと思ったが、続けざまに首を傾け呟く。

「どれもサクラに似合うだろうから決められん」

困った。
突然の爆弾発言にサクラは撃沈し、パニエは肩を震わせ笑いを堪える。

「あんたって本当天然よねぇ」
「はい?何がです?」

顔を上げた我愛羅はからかうパニエからサクラへと移し、突っ伏す背にどうかしたのかと問う。
この男のこういうところには未だに慣れない。
顔を上げたサクラは赤い頬を隠すこともせず、そのままおバカと手の甲を抓ってやる。
そんなことをしながらも暫く三人でアレコレ談義していると、扉が数度ノックされパニエがどうぞと促す。

「どうもー!遅れてすみません!」

入ってきたのはこれまたテンションの高い三十代位の男で、サクラはうわぁ…と再び目を細める。対する我愛羅は特に気にした様子もなく久しぶりだな、と言葉を投げる。

「本当ですよ我愛羅さん!たまには店に顔だしてくださいよ〜」
「生憎忙しくてな。お前の相手をする暇が惜しい」
「酷くないですかその言い方?!」

何となくリーを彷彿させるその口調に益々木の葉でのテンションを思い出させる。
というよりも見た目と声が違うだけでほぼガイ班の寸劇の再現にしか見えない。
そんな事を考えているサクラに、男はどうもどうもと朗らかな笑顔を浮かべながら手を差し伸べてくる。

「営業のカフスです」
「春野サクラです。主人がお世話になっております」

頭を下げるサクラにいえいえとカフスは首を横に振る。

「どちらかというと僕の方がお世話になってますから」
「全くだわ」
「全くだ」

重なる我愛羅とパニエの言葉に吹きだせば、カフスはえぇと顔を顰める。

「パニエさんまで酷いですよ!」
「いいから早く座りなさいな。式場の方はあんたに任せるって話になってんのよ」

笑いを収めたパニエにぴしゃりと諌められ、カフスは失礼、と一声かけてから席に着く。
広げられた資料に気付き、ドレスはお決まりになりましたか?と尋ねられ首を振る。

「まぁでも悩みますよね。サクラさんはお綺麗ですから、どれも似合うでしょうし」

軽やかに零される世辞にどうもと苦笑いするが、正直少しばかり気が引けていた。

(だってドレスって体の線が結構出るし…胸とか…傷とか…気になっちゃうし…)

うーん、と悩むサクラにパニエは大丈夫よと声をかける。

「スレンダーな子は案外どうにでもなるし、腕や背中が隠れるものもあるから気にすることないわ」

流石オネエ、女の悩みが分かるのだろう。
苦笑いするサクラに我愛羅は首を傾ける。

「何か悩むようなことでもあるのか?」

心底不思議そうな顔をする我愛羅にサクラはまぁ色々とねと言葉を濁す。
あまり納得できてなさそうな我愛羅にパニエはいいのよ、と続ける。

「男には分かんないものなんだから」
「はあ…そうですか」
「そうよ。ねえ?」

同意を求められ頷けば、我愛羅はそうなのか…と呟く。

「男に十の悩みがあるなら女には百の悩みがあんのよ」

ねえ?と続けるパニエの言葉にうんうんと頷けば、百個もか…と呟き唸る我愛羅に思わず吹き出す。

「だって我愛羅くん傷の事とか、体重の事とか気にしたりしないでしょ?」
「傷?怪我は困るが傷なんて気にせんな。体重なんて最後にいつ量ったかも思い出せんが…」

上目で思い出そうとする我愛羅にほらねと言えば成程と頷く。
だが傷も体重も気にすることか?と首を傾けられ分かってないわね、と頬を突く。

「そーいうところが女心が分かってないっていうのよ」
「…難しいな」

うーん、と眉間に皺をよせ悩む我愛羅に、パニエははいはいと手を叩き意識を戻させる。

「いちゃつくなら帰ってからにして頂戴。今はドレス選びが優先よ」
「式については後で説明しますから、ゆっくり選んでいただいて構いませんよ」

呆れるパニエに頭を下げ、二人は資料へと視線を落とす。
別の資料を手に取ると、オーソドックスなドレスとは違う種類のデザインが載っており問いかける。

「あの、これって普通のウェディングドレスとは違いますよね?」

カラードレスとも違う、煌びやかな薄いベールのような、ショールのような物を纏い、刺繍がふんだんに施されたロングドレスが載った頁を見せれば、パニエはそれね、と笑う。

「風の国では普通のドレスと並ぶ人気のドレスなのよ。サルワールカミーズって言ってね、これもれっきとしたウェディングドレスなのよ」
「因みに今サクラさんが着用なさってるパンジャビドレスのウェディングドレス版ですね」

パニエとカフスの説明にへぇと頷けば、覗きこんできた我愛羅がいいな、と呟く。

「色っぽい」

じっと資料を眺める我愛羅に、載ってるモデルさんが綺麗だからそう思うんじゃないのとジト目で見やれば、何を言ってるんだと顔を顰められる。

「俺はお前以外の女に興味はない。そう言っただろう」
「でもやっぱり不安なのよ」

つん、と顔を背ければパニエに笑われる。

「まぁ、ウェディングドレスを着てお色直しでサルワールカミーズ着てもいいじゃない。逆でもいいけど」

華やかだし女らしくていいわよ、と告げられ少々悩む。
まぁ確かにショールを羽織れば肌が露出したとしても隠せるだろうし、木の葉から砂の民になるわけだからその国の様式に倣ってもいいかもしれない。

「…似合いますかね…」

悩むサクラにパニエよりも先に我愛羅が当然だと返す。
それに対し少々気恥ずかしさを覚えるが、パニエもカフスも大丈夫だと笑う。

「それも沢山種類があるし、オーダーメイドも出来るからサクラにぴったりのものを提供できるわ」

自信満々のパニエにそうですかと頬を緩め、じゃあちょっと着てみたいかなと呟けば我愛羅はそうかと頷く。

「では先生、お願いします」

頭を下げる我愛羅に何かと思えば、パニエはお任せあれ、と返しサクラの手を取る。

「じゃ、これから試着するわよ」
「え?!」

試着?!
固まるサクラにパニエは当然じゃないと返す。

「試着しないでドレスなんて決めるもんじゃないわ。オーダーメイドするにしたって体に当ててデザインを見てみなきゃ。さ、行くわよ!」
「え、あのちょっと…!」

意気揚々と歩き出すパニエに引きずられるようにしてソファーから立ち上がれば、立ち止まったパニエは我愛羅を振り返る。

「後で呼びに来るから、そっちはそっちである程度決めときなさい」
「分かりました」
「いや、だからちょっと…!」

カフスと式場のことをある程度まで決めておけという意味なのだろう。
できれば私の希望も聞いてほしいんだけど!
思いながらも結局パニエに連れられ、サクラは部屋を後にした。




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